第3話 女優として
今日から映画の撮影が始まった。今は出演者同士の顔合わせ中。ちなみに映画は田舎の高校生の恋愛を描いている。
「主演を務めさせていただきます。上米良陽です。よろしくお願いします。」
「ヒロインの原田真子です。良い映画を作れるようにみんなで頑張りましょう。よろしくお願いします。」
上米良くんとは以前にバラエティー番組で共演している。優しい人なのだ。顔合わせが終わり、上米良くんと話をしていた。
「真子ちゃん、何だか雰囲気変わったね。」
「そう?」
「大人になったよね。」
「何それ?ナンパ?」
「違うけどさー。今日の夜、ご飯に行かない?」
「ナンパになっているし。でも良いよ。やましいことが無ければねー。」
パパならキレるだろう。
仕事が終わり、2人でご飯を食べに行った。
「真子ちゃん何飲む?」
「コーラください。」
「あれ?お酒飲めないんだ。」
「うん。仕事に支障が出ると嫌だからね。」
ブーーーーー。ブーーーーー。メールだ。
“お疲れ様。明花だよー。今から飲まない?”
“上米良くんとご飯中。明花も来る?”
“行く。”
“いつもの所で食べているから。”
携帯電話を閉じて上米良くんに伝えた。
「今から明花が来るから。」
「あー、そうか。」
残念そうだが気にしない。20分後に明花が合流し再び乾杯した。勿論私はコーラで。
「かんぱーい。」
「んで?何の話をしてたの?」
彼女の名前は、加守田明花。映画の共演者。私と上米良くんと3人して同期なのだ。しかも年も同じだ。
「お酒飲めないとか。」
「へ~。お酒飲めないんだ~。」
「そこまでする女優はいないよな?」
「確かにねー。」
「そこまで言ってないでしょ。私はお酒で迷惑かけたくないの。」
「若いね真子ちゃんは。」
「年齢一緒だろ。」
こんなメンツで映画をやるのです。
私は自分の部屋で悩んでいた。セリフの部分のイメージが出てこない。
「どうしよう…。」
ママが私の部屋に入ってきた。
「どうしたの?」
「ママ、タイミング良すぎ。セリフの感情が読めなくて…。」
「台本見せて。フムフム。恋愛のシーンね。」
「閃いた様子だね。」
「真子?あんた恋愛したら?」
この期に及んで…。
「そんな余裕ないから。」
「...今の真子には、そういうのが足りないんだね。ちゃんと考えないとね。」
ママはリビングに戻って行った。 続く