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くろやみ国の女王  作者: やまく
第一章 国づくり
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精霊と国土 2

いまだ建国初日

 

 

 

 窓の外が暗くなって来て、私は王の居室に案内された。

 ずっと曇り空だからいまいち夜になった気がしないわね。

 ベッドの上で持って来た荷物の中にあった花柄ワンピースを見て、私はある事を思いついたので早速ベウォルクトに相談してみた。どうしてベウォルクトなのかというと、なんとなくこっちの方がまともな返答してくれそうだったから


「花ですか」

「そう。家の焼け跡から花を持って来たら、植える場所ってあるかしら?」

 怪我をしていてあまり覚えてないけれど、裏庭の花達は無事だったはず。青空も夕日もないんだから、花があればちょっとは楽しい気持ちになるかもしれないわ

「外の土で育てるのはまだ無理ですが、城内に植物栽培施設がありますから、そちらで育てる事ができますね」

 と、ベウォルクトが言ってくれた。よかった!


「それならばワタシが行ってきましょう」

 あら、いたのレーヘン。

「そうだね、こういう事はレーヘンだけで行った方が早いし、確実ですよ」

「じゃあレーヘン、お願い、一株だけでもいいの。無事に生き残っていて、まだ花の咲いてない苗だけでいいから、根のまわりの土ごと掘り返して持って来て欲しいの」

「わかりました。ファムさまにもらったこの姿がさっそく役にたちますね」

 そ、そうね! 本当はただ私の目の保養のための姿なんだけどね。


「でも髪は隠していったほうがいいわ。銀髪は目立つもの」

「そうですか」

 レーヘンは頭をひと振りすると、あっというまに黒髪になった。

「短時間でしたら色を変えられます。ファムさまと同じ色にしてみました」

 レーヘンの綺麗な顔はさっきまでほとんど無表情だったのに、もう表情をつくるのに慣れて来たらしく、目元が微笑んでいる。

 良い顔には何色も似合うのね。


「これなら親戚の者が花を引き取りに来たって言えるわね。いいこと? まず知らない人について行かない。誰かに何をきかれても答えちゃだめよ。とにかく苗をとって来てくれるだけでいいの」

「わかりました。優先すべきは花の苗を確保すること。知らない人にはついて行かない。寄り道しない。それからえーと……」

 私が言った内容を指を折りながら数える姿をみていると、なんだか初めてのお使いに子供をだす親の気分になってきたわ……

 ヴィルへの手紙も頼みたかったけれど、また今度にしておきましょう。







 焼け跡となり、廃墟と化した家の裏庭に黒い髪の男がいた。


「何をしている」


「あ、こんにちは」

 男は振り向いた。十人が見たら十人が振り返るような、稀に見る端正な顔立ちをしていた。

「黒い髪という事は、彼女の親類か何かですか?」

「ええっと、そうなのです」

 どこか遠くを見ながら男が答えた。

「実は花の苗を貰いに来ました。このまま枯れてしまうのはもったいないので」

「そうですか、花のことはかまわないですが、実はこの家がもう二度と誰にも踏み荒らされる事がないよう、場に強い結界を張っていたんですが、どうやって入りました?」

「それはどうも、すみません。普通に足で入りましたよ」

「それではいくつか質問があります。おまえは何者だ」







 数時間後、レーヘンがぼろぼろの姿で花の苗をカゴ一杯に抱えて帰ってきたので驚いた。

「どうしたのその格好! そんなに苗を持って来るの大変だったの?」

「いえ、苗は簡単だったんですけど、恐い人に襲われまして」

 よく見るとぼろぼろなのは服だけで、レーヘン自体には怪我はないようだった。


「やだなにそれ、私が無駄に綺麗な顔にしちゃったのがよくなかったのかも。ごめんなさい」

「いえ、いいんです。ちゃんと苗も秘密も守り抜けましたし」

 レーヘンは誇らしげに言う。

「そう、それならよかったわ」

 わりと平和な街だと思っていたのに、危ない人がいるのね。

レーヘンはおつかい中に二回答えちゃいました。



2018/02/21:少し加筆。

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