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くろやみ国の女王  作者: やまく
第一章 国づくり
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地の果てと曇り空 3

 

 

 

「国民どころかまともに生物も住めない土地で……それでどう統治しろってのよ!」

「大丈夫です。この役目はファムさまにしか出来ません」

 自信満々に言うわね。


 銀色の精霊達に案内されたのはかなり広い部屋だった。

「こちらが王の間になります」

「大きな市場が開けそうね」

 天井を見上げると、すごく高くて、なにか細かな装飾がされているけど、よく見えない。

 内装はすべて同じ暗い色の大理石で作られているけど、良く磨かれて光っているのであんまり陰気くさくない。

 感じるのは、荘厳さと静けさと、生気の無さ。


「大きな窓が沢山あるのはいいことね。晴れたら気持ち良さそう」

「ここ七百年ほど毎日曇りです」

「……」


「ファムさま、こちらにどうぞ」

 見ると、部屋の奥の壁際が三段ほど高くなっていて、その中心に椅子があった。

 部屋と同じ素材で出来ていて、まるで床から生えているようだった。


 ゆっくりと座ってみると、全身がほわっと暖かくなるような感じがした。

「これでこの国の国主、王として認められました」

 顔を布で巻いた銀色の精霊が言った。

「え、いまので終わり? あっけないのね」

「認定されなければ王座に座った瞬間の衝撃で意識を失います」

 顔が仮面で覆われた銀色の精霊がしれっと言った。

「アンタ達、よくも説明無しで座らせてくれたわね……」

「「即位おめでとうございます」」

 これからこんな風にイラッとさせられ続けるのかしら、私。

 しかも、いまだに裸に毛布一枚のままなんですけど。




「これでこの国は瘴気が払われ、荒れた大地も復活するのです」

 私は窓から空を見上げた。どんよりとした曇り空のままだった。

「払われてないみたいよ?」

「時間をかけて行われます。そのためにも、ファムさまには一日の大半をこの王座、最低でも王の間で過ごしていただきます」

「ここで?」

「はい。この王の間はこの土地の瘴気を害のないものに変換し、王座に座る者がそれを昇華する仕組みを持っています。ファムさまの体はこの天地万物の気脈にとても柔軟に出来てるのでこれに対応出来るのです」

「はあ、ソウナノデスカ」

 うん……よくわからないわ。

「これについてはそのうち実践をとおして理解していただきましょう」

「そうですね」

 あ、コイツら説明投げたわね。




 私が空腹を訴えたので、話しの続きは食事をしながらということになった。

 といっても私一人が食べてるだけなんだけど。

 王の間ほどではないけれど、これまた市場が開けそうな広さの食堂に案内されて、精霊が用意した具無しコンソメスープと、私の荷物に入っていたパンとチーズを食べる。たぶん昼ご飯ね、これは。

 ちなみにまだ身体に毛布を巻きつけたまま。服は治療が終わるまであきらめたわ。


「己の体の命脈だけでなく、気脈までも自由に扱える人間というのは本来ありえないのですが、時々生まれるのです」

「そんな事ができるなんて初めて知ったわ。聞くけど、時々生まれるなら他にも声かけた人いるんじゃない?」

 私がスープを一口すすって言うと、

「声をかけてもまともに相手してもらえず、ちゃんと話を聞いてくれた方はこの五百年でファムさまだけでした。ファムさまはおやさしい方です」

 仮面をつけた銀色その一(私を連れて来た方ね)が嬉しそうに言った。

 あれでも五百年頑張った結果なのね……。


「しかもこの国と適合する属性の方はなかなかいないのです。その点、ファムさまはばっちりです」

 顔に布を巻いた銀色その二(城で待っていた方)が私を指差した。行儀悪いわよそれ。

「見事な闇色の髪で」

「黒髪って、やっぱり闇とかなのね」

 たいして気にしてこなかったけど、珍しいのよね。黒髪。私自身は目立てるから気に入っているけど。

「はい。ちなみに我々は闇の精霊です。人は属性色がそのまま体に出ますが、精霊は性質と反対の色が現れるのです」

「ややこしいわねぇ」



「じゃあ、説明をまとめちゃうと、この国は土地とお城があるだけで、ほとんど国として成立していない状態。そこに私が国主となって王の間でこの国の瘴気を払うってわけね」

 ご飯を食べて元気が出たので、今まで聞いた内容をまとめることができた。


「おおまかにまとめるとそうなります。あの王座に座られた瞬間から、すでにこの国はファムさまのものとなっています」

「私の好きにしていいってこと?」

「そうです。過去の兵器を使えば世界に覇をとなえることもできますし、世界一の財を築くこともできますよ」

「なにそれ、世界を支配したって管理が大変じゃない。兵器なんて無骨だし、街も店もないんだからお金も必要ないわ」

 私の望みは、ここが私の我が家になることよ。


「でもそうね、せっかく生まれ変わるのだから、新しく名前をつけるわ」

 闇の国と、それに似合う黒髪の女王! あたらしい門出よ!


「この国はこれから『くろやみ国』よ! ちなみに、“くろやみ”は国字表記の“黒闇”を使わないでちょうだいね」

「どうしてですか?」

「そのほうが可愛いじゃない」

「「…………」」


 国旗は黒いうさぎなんてどうかしら?

ファムさん、悪ノリ開始。

国の名は漢字(=国字)表記が一般的なのです。


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