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くろやみ国の女王  作者: やまく
第一章 国づくり
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地の果てと曇り空 2

 

 

 

「お加減はいかがですか」

「ええ、けっこうよ。腕も足も動くようになったわ。ところでこのジュース、味が変なんだけど」


 治療室に案内されて、私は怪我の治療中。

 とはいっても痛みも苦痛もなくて、

 変な光を浴びせられたり、

 変な音のする箱の中に入れられたり、

 変な水槽に入れられてプチプチ音がする細かな泡に包まれたりと、

 不思議なものばかり。

 そして泡からでてみると、何故か着ていたぼろぼろの服がなくなり、火傷してただれている箇所は一面に泡が固まってくっついていた。洗い流したかったけれど、この泡が火傷した皮膚を作り替えてくれているらしい。



 泡がとれるまでのあいだ、寝椅子の上で毛布にくるまって大人しくしていると、私を連れて来た方の精霊がグラスに入ったオレンジ色のジュースを持って来てくれた。

「これはいま再生されている肉体のために必要な成分が入っていますので、普通のものとはちょっと違う味なのです。あのピッチャー分すべて飲み干して下さいね」

 見ると、寝椅子の横のテーブルの上にガラスのピッチャーがあり、バケツ一杯分はありそうな量のジュースが入っていた。

「うえー、舌がおかしくなりそうだわ」


「ファムさまの怪我についてですが、呼吸器官の炎症と広範囲の火傷と打撲、右腕は裂傷と数カ所の骨折、内蔵にも損傷、さらに足の指も三本ほど骨折していました」

「よく死ななかったものねぇ」

 足の指、折れてたのね。歩けたから気付かなかったわ


「あと半日もすれば全て元の通りになりますよ、ファムさま」

 元の通りになんてならないわよ。心の傷はまだどくどくいって血が流れてる。

 ヴィル、どうしているかしら。

 でも、もう帰れない。帰ればまた中年オヤジに呼ばれ、今度こそ殺される。

 我が家は消し炭になっちゃった。

 ほろりと、また涙がこぼれ落ちた。


 そして、怒りがこみあげてきた。



 ふざけるんじゃないわよ!

 私が一体何したって言うのよ! 好きな男といただけじゃない!

 なのになんであんな蔑まれた目で見られて、家に火までつけられて!

 大人しく引き下がってろっての? バカじゃないの?

 私だっていっぱしの女よ? 学も才能もない、平民だけど!

 なめんじゃないわよ!

 国のひとつやふたつ、繁栄させてやろうじゃないの!

 腹が立ったら、ふつふつと気力が蘇って来たわ!


「やってやるわよ! 女王さまだか女帝だかしらないけど、なってやるわよ!」

 私は叫びながら立ち上がった。

 目の前の銀色の精霊たちは嬉しそうに手を叩く。

「「その意気ですファムさま」」


「それで、ここは一体どこなのよ!」


 ……結論からいうと、私はこの国を知っていた。

 暗病国という不気味な名まえは知らなかったけど。


 それは子供の頃にきかされた昔話にでてきた、闇の国。

 子供が悪さをすると、連れていかれ、

 病気になった大人が最後、連れて行かれ、

 悪い精霊が沢山いて、光が大地を照らすことがない、この世の最果て。

 物語に出てくるほとんどの悪役や怪物が生まれたといわれる国。

 そう言い伝えられてきた、幻の国。

 実在したのね。


「大昔は栄えていたんです。でも瘴気が渦巻いて生き物はどんどん減っていったんです。精霊も随分減って、いま稼働しているのはワタシたちだけになってしまいました」

「悪い印象だけが世界に伝わって残っているのね……」


 こんなになんにも無いのに国だなんて……

「しかも、国民ゼロ……」

「えーと、二つほどあちこち放浪しながら生活している集団が確認されています」

 それは国民というより原住民と呼ぶんじゃないの?


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