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くろやみ国の女王  作者: やまく
第三章 海からの客、くろの騎士、準備
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くろやみ国と準備 3

会議してます。

 

 

 

「会合場所はくろやみ国と青嶺国の首都から地図上で正三角形図を描いた位置にあたる海上になります。このあたりは海流が安定しているので、会場施設と、宿泊施設を浮かべる計画になっています」

「家の乗った筏みたいなものね。わかったわ。内装の雰囲気は旅行先のちょっと豪華な宿って感じでいきましょう。快適で、居心地の良いものにしてちょうだい。途中途中で確認したいから報告してね」

「かしこまりました」

「これって誰か取りまとめ役に報告しなくちゃいけないんじゃない?」

「ええ。今回発案元の青嶺国が調整役も引き受けてくれていますので、そちらに事前資料を提供せねばなりません」

「それっていつ頃までにするのか聞いている? 連絡手段とかは?」

「青嶺国の特級精霊から使者が送られて来る予定なので、その際に渡すことになっています。正確な時期は分かりませんが、おそらく一ヶ月ほどになるでしょう」

「わかったわ」

 私は自分のノートに作った予定表に書き込んだ。



「まったく、やることが山積みね」

 王の間は現在対策会議室になっているわ。

 王座の前に創られた寝台ほどの広さの真っ黒な机の上には、広げられるだけ広げたメモの山と大量の資料が積み上げられている。それらを前にすると思わずため息が出てしまった。


 国として他国との会合に出るのに何が必要なのか、考えられるだけ考えついたものを整理して、とにかく一つ一つ決定したり、作ったりしている。みんなで作業を分担しているけれど、とにかく私が判断して、どうするか決めないと始まらない。毎日毎日絞りきるまで脳みそを使っている気がするわ。

「すべて必要なことですよ。そもそもが今まで国として対外的なことを何も決めていなかった状態だったのです」

 王の間の空中に無数に浮かんでいる、先程まで話し合っていた内容に関係した情報画面を整理しながらベウォルクトが言う。

「もう、アナタだって今まで何も言ってこなかったじゃない。それに政治とか経済の仕組みなんて白箔国の市民学校ではたいして勉強しなかったから、思いつきもしなかったし。仕方ないわよねぇ、ブルムちゃん」

 そう言いながら私は傍らのクッションの上に置かれた銀色のかたまりを撫でる。表面は鏡のようにつやっとしていて、触るとほんのり温かくてとても心地良い。

「卵に尋ねても何も答えられませんよファムさま」

 床に落ちていたメモを拾い上げながらレーヘンが穏やかに微笑む。笑顔の種類が増えてきたわね。

「でも中では聴こえているかもしれないじゃない。いいのよ、ほとんど独り言なんだから」

 イライラの解消にさらに卵の表面をすべすべと撫でる。

 ブルムちゃんは先日創った影霊で、核をライナとシメオンが資料庫から見つけてきてくれた竜の卵の化石にしたためか、未だに孵る様子がない。

 王の間が調べてくれたところによると女の子らしいので、レース飾りのついたピンク色のクッションの上に乗せていつも側において撫でている。鳥の卵のように暖める必要はないらしいわ。

「古代の竜って、どういった子なのかしら? ゲオルギやライナ達と仲良くして欲しいわね」



「お待たせしました、女王」

 冷たいお茶とオレンジとレモンの蒸しケーキで休憩をしていると、サヴァが王の間にやってきた。

「お疲れさま、サヴァ。慌ただしい時に呼び出してごめんなさいね。新しい鎧は順調?」

 サヴァの鎧は修理できないくらい壊れちゃったらしくて、新しい物を一から作っている。色々時間がかかっているみたい。

「ひととおり完成しました。これから耐久試験です」

「今回は法術への耐久性も付加していますので、調整にはもう少しかかりそうです」

 サヴァの言葉に、ベウォルクトが補足してくれた。


「あなたを呼んだのは意見を聞かせて欲しいからなの」

 ハーシェがサヴァの分のお茶を用意してくれる横で、私は机の上に並べた色とりどりの記憶ブロックの中からキラキラと細かい粒子が光るものと真っ黒いものを手に取る。


「俺もあまり国交関係について詳しくないのですが、分かる範囲でお答えします」

「ありがとう。助かるわ」

 手に取った記憶ブロックのうち黒い方を机の真ん中に空いた穴にはめ込むと、このあいだ黒堤組から得た諸外国の情報が空間に表示される。

 海賊がくれた黒い箱をあけるとこの記憶ブロックが詰まっていて、レンガくらいの大きさからサイコロのような小さいものまで様々で、初めて見た時は子供用の玩具かと思っちゃったわ。ちなみに精霊はこの記憶ブロックに直接触らなくても中身を知る事が出来るらしい。


 キラキラしている方を同じように穴にはめ込むと、今度は精霊達が趣味で作ったランキングが同じように表示された。王の間経由で操作して、くろやみ国の名前が載っている部分だけを抜粋して、机の上に引っ張ってくる。

 サヴァは表情を変えなかったけれど瞬きをして、書類やメモの上に浮かぶ画面を見て、それから私の方を見た。

「何度も見ていますが、不思議な仕組みですね」

「私はもう慣れちゃったわ。原理は、さっぱり分からないけど」

「お望みならば何度でもご説明いたしますよ」

 それは今度お願いするわ、ベウォルクト。


「他の国はこのランキングを見て私たちの国をどう思ったかしら?」

「いきなり現れた謎の国といったところでしょうか。しかも高い技術力がある」

 サヴァが腕を組んで言った。

「警戒すると思う?」

「ええ。そして利用しようと考えるでしょう」


「やっぱり、今度の会合で注意すべきは人間よね。各国の頭脳が集まるもの。頭も切れるし立ち回りもうまいわ。ねぇサヴァ、あなた交渉ごとって得意?」

「いえ、まったく……」

 私とサヴァ、この国の年長者が二人して暗い表情になる。

「私も花屋の時のような街の人達との駆け引きくらいならできるけど、国の代表となると難しい所だわ」


 平民だった私に、騎士で口数の少ないサヴァ、まだ子供のシメオンに同じく子供でずっと病気だったライナ。精霊と影霊はおいといて、私たちは彼らに対して話術も交渉力も及ばない。

 ましてや腹の探り合いなんてできるわけがない。

 弱い立場だと思われてしまうと、うまく丸め込まれてしまって、気がつかないうちに属国にされたり、一方的に搾取されてしまうことも有りうる。


「私たちはまだ国同士の交易なんてできないわ。交易するにしてもこちら側がちゃんと有利に交渉できる要素が思いあたらないもの」

 精霊のランキングで他国より評価されたといっても、うちの技術は外に出すにはまだ不安があるし、私だって人に仕組みを聞かれても答えられないものが多いし。

「ライナを治療した方法だって、画期的なのかも知れないけれど、この部屋のシステムを使わないと出来ないわ」

 黒堤組との交渉は彼らの持っていた技術の延長のものだったから、相手にとって価値があった。けれど法術や精霊術が主流の今の時代だと、どの技術がどう価値があるのかまだわからない。このあたりは保留ね。


「問題は世界の中でこれからのこの国の立ち位置をどう作って行くかよね。正直いって小さい小さい国だし、そっとしておいて欲しいところだけれど」

 頭が疲れて来たのでお茶にスライスしたレモンを入れて飲む。きりっとした酸っぱさに気分がすっきりするわ。

「ですがいずれこういった状況になる事は避けられなかったでしょう。ワタクシとしてはこの国の外交活動の初回が人間のみの会合になるよりは、我々精霊が干渉出来る今回の方が安心出来ます」

 ベウォルクトが言う。

「俺も、今は他国に内部を知られていない分、様子見よりも少々前に出てみた方がいい時期だと思います」

 サヴァが言った。


 私は腕を組んで、肘をついて、それから高い高い王の間の天井を眺めて、窓の外の曇り空に目を移して、そしてお茶を飲み干した。

「いいことを思いついたわ」


「今の所、この国は外に知られている情報が少ないから怪しまれているに違いないと思うの。だから、いっそ初めから怪しい謎の国ってことを利用するわ。やってくるのは、精霊と、人間の大使と、その護衛」

 指を折りながら数えあげるとレーヘンが首を傾げる。

「この国には大使がいませんが」

「私がやるのよ。ただの使者だったらそこまで身分が高くないから、おそれおおくて各国の偉い人と会えませんって言えるでしょう?」

「はあ」

 レーヘンがさらに首を傾げる。身分の話は理解しにくそうね、アナタ。


「最低限会う必要があるのは……今のところ青嶺国の代表だけよね。長く喋るとボロが出しちゃいそうだから、もし国の紹介みたいな物が必要になるのなら書類みたいなものにして配りましょう」

 その方が権力や汚い狸オヤジ達と触れなくて済むわ。はっきり言って彼らとやりあって話術で勝てる見込みは無い。

 黒堤組との時だって、私、腹をたててひっぱたいちゃったし

「白箔国はどうします?」

「……国の代表に誰が来るのか、行ってみないと分からないのよね。今のところ国同士では関わりがないし、面会の予定はなくていいわ」

 今、女王としてヴィルと会っても、私は彼とどう会話すれば良いのかまったく分からない。この間の鳥の精霊の事もあるから、敵視されているかもしれないと思うと恐くて、当分会いたくないのが正直な気持ちだわ。

 もし違う人が来たら私を狙った貴族について知りたいけれど、他所の国の者がいきなり国の貴族(しかも裏で犯罪めいた事をしている狸オヤジ)について尋ねるなんて変よね……。


「あとの面談はそうね、もし必要があるなら各国の精霊たちとします」

「どうして精霊と?」

「精霊が出てくるなら貴方達が同席できるでしょう? それに私、精霊相手なら口喧嘩になっても勝てる自信があるの」

 腰に手を当てて宣言する私を見て、

「ええと、そうなんですか?」

 サヴァが精霊達に確認する。

「「……」」

 納得したくないけど反論もできないみたいね。


2018/02/24:少し加筆。

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