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くろやみ国の女王  作者: やまく
第三章 海からの客、くろの騎士、準備
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くろやみ国と準備 2

 

 

 

「わが国は最下位や、情報無しで順位外の項目もかなり多いのですが……技術力の項目は、総合だけでなく細かく分類した項目でも八割以上の項目で上位三位以内になっています。ちなみに誕生したばかりの国が頂点に位置するというのはかなり珍しいことです」

 ベウォルクトが技術力の項目の画面を表示してくれた。

 確かに画面中央の大きな三角形の一番上にうちの国の名前が大陸共通語で書かれているわ……

「う、うちの技術力ってそんなに凄いものなの?」

 咳き込んで涙目になりながら尋ねると、レーヘンが水の入ったコップを差し出しながら答えてくれた。

「ワタシは五百年間あちこちの国をうろつきましたが、この国、特に城にあるほとんどものはもうよそでは存在していないようでした」

 レーヘンの言葉に驚く。

「え、そうなの? てっきり青嶺国みたいな大国では普通にあるものかと思っていたわ」

 周囲を見渡すと、シメオンが口を開いた。

「僕、青嶺国の王立学院の入試用に大陸の技術について勉強をしたことがあるけど、くろやみ国のシステムは全く知らないものばかりです」

「確かに、鎧もあの槍もいまだに素材も造りもよくわからないな」

「私は入院が多かったからあんまり世の中のこと知らないです……あ、でもあの植物園は凄いと思います!」

 この国で生まれてまだ数ヶ月しか経ってないハーシェは何が何だかわからないって顔をしているわ。

「確かに、建物の中や地下を走る鉄道なんて聞いた事無かったわ」



「説明してちょうだい、ベウォルクト。この国にはどうしてこんなに珍しいものが多いの?」

「……以前にも簡単にご説明しましたが、改めてお話いたしましょう」

 私の言葉にベウォルクトは椅子に座り、みんなに説明してくれた。

「我が国にあるものは大昔にはどの国でもありふれたものでした。ですが過去に発生した大規模戦争での破壊行為で暗病国以外の大国は崩壊したため、新たな国が育っていくにつれて別の技術体系や新たな文化が生まれていったようです」

「確かに、私よりもマルハレータ達の方がこの国の道具を上手に使っていたわね」

「ここ数百年は法術や精霊術が発達して日常生活に使われるようになっています。そのせいで黒堤組のように、かつての物は残っていても製造方法や改良については知らないといったことが多々あるようです」


「技術力はわかったけれど、開発力って、うちは新しい物なんて作ってないわよ?」

「物というよりは技術のことですね。ライナさんを助けた際の、王の間のシステムと人体を経由して治療をするという発想が画期的でして、新しい治療法開発として高く評価されました」

「私の時の?」

 ライナが驚いた表情で自分を指差す。

「ええ、あれは我々でも全く思いもよらなかった王の間の使い方なのです。ちなみにこの件では精霊の研究団体から問い合わせがきています。なんでも、賞を贈りたいとかで」

 レーヘンの言葉にあの時の事を思い返してみるけれど、無我夢中だったからあまりよく覚えていないわ。

「そ、そう、なんだかよく分からないけど、凄いことだったのね、あれ。……その、ちなみに、白箔国はどうなの?」

「あの国は貿易、文化事業、法術学、新規開拓などでトップですね。精霊研究も上位にきています」

 レーヘンがまた別の画像の内容を読み上げてくれる。

「ふぅん」

 頑張っているのね、ヴィル

「ねえ、そのランキング情報って一般に公開されるの?」

「いいえ、これは精霊が自分たちの楽しみとして作っている物ですから基本的に公開はされていません。ですが請われたら開示しますし、精霊の個別の判断でこうして仕えている国には知らせることもあります。……おそらく精霊が国家に関わっている国の上層部には公開されているでしょう。比較した数値しかないので、それぞれの具体的な情報はわからないようになっていますが」

 楽しみで一万項目も調べるって、何が面白いのかしら……?

「完全にただの趣味ですね」

 それでもこれって国同士ではかなり重要な情報よね。


「それって、なんだか嫌な予感がするわね……」

「お察しの通り、今回いきなり無名のわが国が技術力総合一位に現れたためか、急遽上位になった国で会合を開きたいとの通知が青嶺国の特級精霊経由で届いています」

 ベウォルクトが頷いて言った。


「くろやみ国は欠席するわよ」

 私はきっぱりと宣言した。

「おや、どうしてですか?」

 驚いた顔をしてレーヘンが言う。

「だって、私まだ海賊としか渡り合ったことのない元一般市民よ? なのにいきなり大国の王様達と渡りあえっていうのは無理があるわ」

 それに、ヴィルのこともある。また攻撃されたらもう今度こそ本当に立ち直れなくなっちゃう。もうちょっと状況を調べて、私の気持ちも落ち着いてからにしたいところだわ。


「白箔国の王が来るとは限りませんよ。誰かしらが来た場合は故郷の話などできるのでは?」

 白箔国から私を連れだした張本人のレーヘンが言う。

「それならもっと行きたくないわ。私あの国の貴族に殺されるところだったのよ」

「酒造と飲食店数、一人当たりの食費一位の赤麗国が来るので、お酒や料理もきっと豪華ですよ」

 今度はベウォルクトが言う。

「ぐっ……なんでアナタたち、そう勧めてくるのよ!」

「実はこの集まりに各国の特級精霊達の会合も便乗しようかという話しになっていまして、くろやみ国が会場設営の担当になっているのです」

 コイツらは……

「ちょっと、そこ並びなさい」

 きょとんとした様子で王座の前に並んだレーヘンとベウォルクトの額に、私は思いっきり手刀を叩き込んだ。

「何勝手に決めてんの! 誰が王様やってると思ってんのよ!」

 ああもう、すっごく手が痛いわ!


「あのう……」

 精霊たちに説教していると、サヴァが申し訳なさそうな顔で近づいて来た。

まさか……

「すみません……できれば俺からも出て欲しいんです。青嶺国の王に一言だけでも挨拶を」

「おねがい、ファムさま。私たちここに来る前に青嶺国の王様に命を助けられたんです」

「確かシメオンの処刑やゲオルギの捜索がされていないのも……」

「青嶺国の措置ですね。ゲオルギの件は推測ですが」

 ベウォルクトが答え、シメオンが頷く。


 みんなが私を見る。

「大丈夫です。ファムさまは我々が全力で守ります」

 レーヘンが言い、ベウォルクトやライナ達が頷く。個人の気持ちがどうこうと言ってられないのね……


「……もう! わかったわよ! 行くわよ!」

 仁義と、すっとこどっこい精霊達のためにね!

 みんな、手伝ってよね!


例によってあとがき的なものは活動報告にて


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