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くろやみ国の女王  作者: やまく
第三章 海からの客、くろの騎士、準備
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海の波と国民たち 1

 

 

 




 女王の目覚めを感知して城の一日は始まる。

 毎日彼女が過ごす場所に照明がつき、空調が活動用に変わり、彼女が眠っている間に働いていた清掃や改修などの管理部門が休眠状態に入る。

 基本的に睡眠を必要としないベウォルクトやレーヘンは、いつもその動きで朝を知る。

 遠くから漁から戻って来た竜の鳴き声が聞こえてくる。


「お目覚めになられたようですね」

「では朝の挨拶へ向かいましょう」

 くろやみ国の一日はこうやって開始される。







 朝、外が明るくなった頃に私は目覚める。

 カーテンを開けても朝日はなくて、いつも代わり映えのしない曇り空。

 私の目覚めを感知し城は動きだし、空調が整う音がする。自動的に天井や廊下の照明が音も無く点灯していく。

 曇りだから朝から照明が必要なのよね……


 寝間着のままかるく体操をして、顔を洗って身支度を整えて調理室へ向かう。

「おはようございます。ファムさま。ご機嫌いかがですか」

「おはようレーヘン。私の機嫌はいつも通りよ」

「体調はいかがですかファムさま」

「おはよう、まあまあ良い調子よ、ベウォルクト」

 大抵は自室を出て廊下に出るとすぐに精霊達が現れる。涼やかな笑顔は朝に似合うわね、レーヘン。


「おはよう、ライナ」

「おはようございます、ファムさま」

「さまなんて付けなくても良いのよ」

「私がつけたいんです。ファムさまはこの国の女王さまなんですから」

 調理室に着くとライナがいて昨夜作っておいた朝食をバスケットに詰めていた。彼女はだいぶ翼の扱いに慣れて来たらしくて、体の幅まで折り畳んで、調理台のまわりを元気よく動き回っている。

「サヴァとシメオンは朝ご飯に来れそう?」

「シメオンはちょっと寝坊するけど来るって言ってました。身体の方は昨日ベウォルクトさんとレーヘンさんが治療してくれたんですが、まだ疲労が残っているみたいなんです」

「そう。無茶するわねあの子」

 ライナはシメオンの好物の具入りパンをバスケットに入れている。

「兄さんはゲオルギと漁に出かけて、もう帰ってきて貯蔵室へ魚をしまいに行ってます」

「え、もう? 回復早いわね」

「兄は丈夫さだけがとりえですから」

 足に柔らかい感触があたるので見ると、子うさぎの姿をしたハーシェがすりよって朝の挨拶をしてくれていたので、抱き上げる。

『おはようございます、ファムさま』

「おはようハーシェ。今日もふわふわね」


 最近は植物園にみんなで集まってご飯を食べるのが習慣になってきている。

 そのあとは人工の日光を浴びながら花たちや畑の手入れをして、野菜と果実の収穫をして過ごす。お昼前になったら調理室に移動して一日分と明日の朝食を作って、食堂か王の間で昼食。

 その後はそれぞれの時間を過ごす。

 私は王の間でベウォルクトによる女王学習の時間になっていて、内容によってはライナやシメオンも参加するのだけれど、今日はベウォルクトが二人とサヴァとゲオルギを連れて海岸の調査へ向かっている。港も補修しようっていう話になっているし、下調べをしておくみたい。

 私はいまだ城内安静の身なので、レーヘンとハーシェと一緒に大人しく王の間で過ごしているわ。

 おやつのブルーベリー入りクッキーをつまみながら、私はペンで勉強用ノートにみんなの名前を書き出してみた。


・人間…ファム、サヴァ、ライナ、シメオン (計四名)

・精霊…ベウォルクト、レーヘン、ハーシェ (計三名)

・竜…ゲオルギ (計一匹)

・現在国外で活動中(精霊扱い?)…マルハレータ、ローデヴェイク (計二名)


「こうしてまとめてみると、ちょっとは賑やかになったわねぇ」

 私はペンをノートの上に転がした。中のインクがきらきらと光る。

「それで、マルハレータとローデヴェイクがいなくなって、精霊と人間の数の比率が逆転したのね」

「そうです。一応人間の数が過半数を占めると人間の国として地図に表示されるようになります。ゲオルギは竜なので人口には加えていません。サヴァやライナ……いわゆる竜人の他国での扱いは分かりませんが、この国では同じ人として計算しています」

 私は王の間に転がしている二つの球体の地図を眺めた。どちらも同じ位置、同じ形の島にくろやみ国の名前が書いてある。

「これから何かが起こるかもしれないわね……」

「この地図を持っている国はそう多くはないのですが、念のため国土と周囲の海に注意しておきます」

「お願いするわ。サヴァにも声をかけておいてちょうだい。彼も漁で沖に出かける事があるし、何かあったときのためにね」

「かしこまりました」

 そう言ってレーヘンがお辞儀をした時、王の間にベウォルクトの声が響いた。

『ファムさま、しばらく王の間に皆で待機されていてください。修復中の壁とは反対側の奥の方に。レーヘン、警戒態勢を』

「どうかしたの? ベウォルクト」

 レーヘンが微笑みを消し、ハーシェが人の姿になって私の傍に立つ。

『海賊が来ました』


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