表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くろやみ国の女王  作者: やまく
序章 はじまりのはじまり
2/120

転がり込んで来た銀色と炎 1

  

 

 

 それは二日前のこと。

 その時はとんでもない事でも、後になって考えてみれば、ただの始まりに過ぎなかったというのは良くある話。

 なにがどう転ぶかなんて、誰にだってわからない。私にだってわからない。




「国をひとつ治めませんか?」

「はぁ?」

 いきなりそんな事を言われたら、誰だって冗談だと思うわ。

 新手を越えてひねりすぎた勧誘方法なんて、誰もひっかからない。怪しすぎるので無視して通り過ぎた。


 バイトを終えて帰り道、まだいた。路地の角によりそって、じっとりとこちらを見ている。

「あのう……国を……どうかと……そのぅ」

「いまどきもっとマシな話し方があるでしょうに。アンタ野良精霊? 私になにか用?」

 最初の勢いもなく、もじもじしている相手は精霊だった。成人男性ほどの身長に、すすけた外套とこれまたボロいショールで頭を隠している。

 言葉を喋るほどに高度なタイプがこんな街のど真ん中にいて、よく捕獲されなかったものだわ。

「ワタシが精霊とわかるのですね、流石は国主さま」

 そんな変な格好で平気で街中にいるのって、大抵精霊なんだけどね。

「国主ってどういうことよ? とりあえずアンタうち来なさい。ここだとどこかの精霊マニア貴族に捕まるわよ」

 人目もあるので、さっさと後をついてきなさいと先に歩き出す。


「つ、捕まるとどうなるのですか?」

「詐欺みたいな契約に縛られて使役されるか、分解されて人工精霊に改造されるんじゃない?」

「ひぃ!」

 ……ホントよく無事だったわね。




「ここが国主さまのおうちですか」

「そうよ、平民階級の区画の二階建ての家。愛すべき我が家よ」

 そして両親が幼い頃に死んでしまった私の唯一の居場所。


「さっさと入んなさい」

 ほいほい他人を入れはしないけれど、「精霊にはやさしく」というのが我が家の家訓なので、野良精霊を一階の食堂に案内した。野良は緊張しているのか、座ると縮こまって大人しくなってしまった。


 私は自分用にハーブティーを淹れて野良精霊の向かいに座った。

「なにか食べる? あとそのショール汚いから外してくれない?」

「し、失礼しました。食べ物は……結構です」

 慌てて取り外されたボロショールの中から出て来たのは銀色だった。銀髪に、銀色の目しかついていない仮面がついている。仮面の鼻と口に穴がない以上、人間であるはずがない。

「銀色なんて初めて見たわ。それにアンタ、顔が無いなんてかなり古い精霊なのね」

「ありがとうございます……」

 この意味不明な返答はまさしく精霊ね。


「で、私になんの用なの?」

「あの…あなたにワタシの国を統治して頂きたいのです。もう、土地の気脈が流れなくなって随分と経ち、崩壊の一歩手前なんです」

「……まったく話がみえないわ。それってどこの国よ」

「かつては暗病国あんびょうこくと呼ばれていました」

「めちゃくちゃ陰気くさい名前ね……」

 とっくに滅びた国の、頭が飛んじゃった生き残り精霊かもしれないわ。私がどう説得して追い返そうかと考え始めたときに、玄関の呼び鈴が鳴った。



「ああ! もうヴィルがくる時間だった! アンタここにいていいから、続きは後でね!」

 慌てて私は部屋に行き、鏡で顔を確かめ(決めメイクではないのはこの際仕方ない)、お気に入りのワンピースに着替えて玄関に走る。食堂の銀色はもう視界に入らない。



「ヴィル!」

「こんばんはファム、ちょっと早くきてしまいましたか?」

「ううん、待ってたわ! さ、行きましょう」

 ヴィルの腕に抱きついて外へ向かう。

「おや、今日はあなたのお家に入れてくれないのですか? 楽しみにしていたのに」

「外でご飯を食べたい気分なの! 五番街に気になるお店があるのよ」

「またお酒が充実した居酒屋ですか?」

「そうよ。あなたの得意な高級酒は無いけどね。嫌かしら?」

 笑顔で言うと、彼はくすぐったそうに笑いかえしてくれた。私は彼のこのやさしい笑顔が大好きだった。

「いいですよ。また貴女のとっておきの飲み方を教えてください」

 この時はヴィルと笑いあえるだけで私は幸せだった。ただそれだけでよくて、それ以上のものなんて欲しいと思っていなかった。


 それから美味しいお酒と美味しいご飯を食べて、笑いあって、夜の街を手をつないで歩いて……

「あなたにもっと触れてもいいですか……?」

 かすれた声で耳元にささやかれて、私はどぎまぎしながらうなずいた。

 今考えるとそこへ向かって誘導されていたとしか思えないタイミングで遭遇した高級ホテルで、私たちは夢のようなひとときを過ごした。



「次は五日後に迎えに行きますから、絶対に家にいてくださいね」

 そう言ってヴィルは私の手にやさしく唇を落とし、仕事があるからと先に帰った。

 一人残った私は幸せな気持ちに浸りながら身支度をして、高級ホテルを出た所で軍警察に捕まった。

話のペース早いかな?

ひとつの話をどれくらいの文字数にするか、さぐりさぐりです。


分かりにくい部分などあれば改善&文章の追加をしますので、ご意見お待ちしています。



2018/02/21:単語などを修正。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
番外編・登場人物紹介





ランキングに参加しています。
小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=847013892&s


未經許可請勿轉載
Do not use my text without my permission.
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ