表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くろやみ国の女王  作者: やまく
第一章 国づくり
10/120

精霊と国土 3

 

 

 

 昨日はくろやみ国、というかお城の中を案内してもらった。

 なんとこのお城、中に列車が走っているのよ! 縦にも横にも走ってるらしいの。どんだけ広いのよここは。

「建物の中に列車が走ってるなんて!」

「エレベーターとも言うんですけど、ファムさまには列車の方がわかりやすいようですね。歩いていると何日もかかりますから、こういった移動方法があちこちにあるんです」

 列車を操作しながらレーヘンが言った。

「私本物の列車なんて乗った事なかったわ! これってどうやって動いているの?」

「旧時代と同じ電力です。この城にはいくつか発電施設があり、王の即位とともに現在ほぼ全てが稼働中です。発電方法はまずタービンを……」

 ベウォルクトの説明は私には難しかったので、

「今日は見るだけにして、後日勉強して頂きましょう」

 という事になったわ。


 ほかにもお城の動力や構造やらについて見学しながら説明を受けたけれど、私の知らない単語が多すぎてよくわからなかったわ。

 それから移動中に薄いガラスのまな板のようなものを渡された。

「この画面に服飾品の画像が出ますので、欲しいと思ったものが出て来たら絵に触れてください」

「寸法は治療時に測っていますから、どれもファムさまのサイズですよ」

 レーヘンやベウォルクトに説明を受けながら言われた通りにガラス板に出てくる絵を触って、欲しい服を選ぶと、駅に着いた時に本物が手渡された。なんでも、選んだ画像を即座に知って、その通りに服や靴を作ってくれる部屋があるらしい。

 手持ちの服もほとんど無かったから、これは嬉しかったわ。憧れのレースたっぷりのドレスなんか、挑戦しちゃおうかしら


 夜は大浴場に案内してもらった。王の居室にも浴室があるのだけど、同じ階に大浴場があって、熱いお風呂や水風呂、泡が出たり、良い匂いがするものだったり、とっても楽しいの。ベウォルクトがお肌が綺麗になる入浴法を色々教えてくれたわ。

 それにしても、発電機を動かすのも、服を作るのも、風呂や部屋の掃除も、誰がしているのかしら

「すべて全自動です」

 ……ぜんじどうってなにかしら?

 この日はとても楽しかったのだけど、後になって思い返すと自分の能天気ぶりに腹が立つ日になった。



 そして今日。

 昨日ベウォルクトとレーヘンが用意してくれたご飯があまりにも酷かったから、今日から自分で作る事にしたわ

 毎食とも塩味のビスケット三枚と具無しコンソメスープって、どういう事なの!

 台所はどこ、食材はどこよ。

 王さまになったのにご飯も自由にならないなんて!


 案内されたのは全て金属で出来た調理場で、まったく使われた様子が無かった。

 ベウォルクトとレーヘンがどこからか小瓶や箱に入った調味料や食材らしきものを沢山持って来てくれたので、ひとまず私がわかるものだけ残して、あとは棚にしまう。

「この箱にこの粉とこの粉と、この液体を入れるとパンができます」

 パンは自分で焼かなくていいみたいね。


「パンが焼けるまでにスープを作りたいわ」

 具になりそうな物を味見してみたけど、薬っぽかったり変わった味の物が多かった。

「あんまりおいしくないのね。こっちのはぱさぱさしてるし」

「合成食品は風味よりも栄養ですから。そちらはフリーズドライ食品ですから、水で戻して食べるんですよ」

 レーヘンがそう言って、袋に書いてある表記を読み上げてくれた。

「ごうせい? ふりーずどらい?? なんだかわからないけど、スープに使えそうなものを鍋に入れてくわよ」


「お茶の葉と食器ですね? 探してきます」

 レーヘンが品物を探しに行き、私はぐつぐつと煮込まれている鍋の中を睨みながら自分の状況を整理してみた。


 レーヘンと街で遭遇した日の夜にヴィルと会う。帰り道に中年オヤジ貴族に連行される。……これが一日目ね。


 朝に帰宅してヴィルに手紙を書く。その日の深夜に家が火事になり、レーヘンに助け出される。……これが二日目。


 くろやみ国に移動する前に日が昇っていたから、この時点でレーヘンに会って三日目で、くろやみ国での初日。怪我の治療を受けて、夜にレーヘンに花の苗を取って来てもらった。


 昨日は一日城の中にいた。これが四日目。


「つまり、今日はレーヘンに会って五日目で、私がこの国に来てから三日目というこね」

 最後に会った時、ヴィルは「五日後に」と言った。つまりは、六日目。

 明日は、ヴィルと約束した日。

 家には帰れないけれど、なんとかしてヴィルに会いに行きたい。せめて私が無事だと伝えたい。



「違いますよ。この国に来て四日目です」

 振り返ると、荷物を抱えたレーヘンがきょとんとした表情で私を見て言った。

「……四日目って?」

 私は背後にずっと立っていたベウォルクトを見た。布に包まれていてもだいたいの目線はわかる。その顔は私を見ようとしていない。

 レーヘンに目線を戻すと、何か思い出したらしくて、これまた目が泳いで、震えていた。

 とおっても挙動不審だわ。

「……どういうことか説明しなさい」

 ……ちょっとお尋ねしたいんですけど

 私がこの国に来て、何日経っているの?

設定作り込みすぎて、自分の首を絞めないよう気をつけたい今日この頃です。


2018/02/21:少し加筆。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
番外編・登場人物紹介





ランキングに参加しています。
小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=847013892&s


未經許可請勿轉載
Do not use my text without my permission.
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ