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序幕
火の跡がまだ熱をもっているようだった。
包帯を巻いていない方の手で触れると、肌の感覚はなかった。
「どうぞ、こちらです」
「ちゃんと跡は残らないのよね?」
暗がりの中、先を歩く相手に向かって声を投げかけた。
「もちろんです。ついでにお気に召さない箇所を整形する事も出来ますが」
「結構よ。これでも自分を気に入っているの。さあ、治療室へ案内して」
見た目も変わらない。何も変わらない。けれど私はここで新たに生まれかわるのね。
明けられた扉の先の、人工的な明かりが目に痛かった。そして、暖かく優しい姿が脳裏によぎった。
そんなに時間は経ってないはずなのに、ひどく懐かしく感じた。
「さようなら」
一筋の涙をふりはらい、彼女は一歩を踏み出した。
自分にハッパかけるつもりで書いて載せましたです。
ハッピーエンドなファンタジーを予定しています。