表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

第一章:湯けむりの町(11)


深夜、宿の奥深く、一般客の立ち入りが禁じられた「源泉管理室」。


そこは、もうもうと立ち込める蒸気と、機械の低い唸り声に支配された空間だった。


館主の湯本は、モニターに映し出される数値を、陶酔したような目で見つめていた。


「素晴らしい……。これだ、この数値だ」


彼の視線の先、湯気が渦巻く中央に、小さな椅子に座らされた翔太がいた。


少年の手は、源泉が噴き出す太いパイプに直接触れさせられている。


少年の体からは、目に見えるほどの輝き――光が溢れ出し、それが水流へと吸い込まれていく。


「……叔父さん、もう、しんどいよ……」


翔太の声は、消え入りそうなほどに掠れていた。


「我慢しなさい、翔太。お前が頑張ることで、この宿は守られているんだ。みんなが幸せになっているんだよ」


湯本は少年の肩を叩く。その手には、慈しみよりも、高価な道具を愛でるような歪んだ所有欲が混じっていた。


「……『幸せ』、ですか。それは誰にとっての?」


背後から、冷ややかな声が響いた。


湯本が弾かれたように振り返ると、そこにはいつの間にか、黒色の手袋をはめた男が立っていた。


京介だ。


彼は立ち上る蒸気の向こうから、静かにこちらを射抜いていた。


「……京介様。このような場所で何を。ここは関係者以外……」


京介の視線が、湯本の背後に隠れるように震えている翔太へと向く。


「翔太君がやっているのは『おもてなし』じゃない。自分の命を削り取って、他人に分け与える……強制的な『献身』だ」


湯本は顔を歪め、一歩前に出た。


「無礼な。私はこの町を、この宿を再生させたんだ! この湯のおかげで、どれだけの人間が救われたと思っている!」


「救われているんじゃない。『前借り』しているだけだ」


京介が一歩、また一歩と距離を詰める。


「翔太君の異能はエネルギーの移し替え。彼が温泉にエネルギーを注ぎ込むとき、その帳尻を合わせるために、どこかで別のエネルギーが欠落している」


「足湯で立ち上がれなくなった老人。異常な眠気を訴える地元の人たち。過剰な不純物物で経営難に陥った宿……」


すべては、エネルギーのバランスが崩壊し始めた兆候だった。


「あなたは、この少年の未来を燃料にして、偽りの繁栄を燃やし続けているんだ」


「黙れ! 異能を持たない人間に何がわかる!」


湯本の叫びが、狭い管理室に響き渡る。


「……あいにくだけど」


「僕も、同じ『異能者』だよ。それも、君らが最も嫌う……『壊す』専門のね」


京介の瞳が、静かに、そして鋭く光った。


日常×異能×ヒューマンドラマ、みたいなのが好みです。


評価のほど宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ