もしもフェアリーが統計学を学んだら

魔法の国フェアランドでは、千年もの間「直感」と「経験」だけで魔法が行使されてきた。しかし、若き見習いフェアリーのリリアは、魔法の成功率があまりにも低く、資源が無駄になっていることに疑問を抱く。ある日、人間界から迷い込んだ統計学者の青年・柊真司と出会ったリリアは、彼が持つ「統計学」という未知の学問に魅惑される。
「魔法は感覚じゃなく、データで最適化できる」
真司の言葉に衝撃を受けたリリアは、保守的な魔法議会の反対を押し切り、統計学を魔法界に導入しようと奮闘する。平均値で魔力の適正量を見極め、仮説検定で呪文の効果を証明し、回帰分析で魔法陣の最適配置を導き出す――。
しかし、データ至上主義への傾倒は、魔法界に深刻な分断を生む。「魔法の神秘性を奪うのか」と反発する伝統派、「数字で測れないものに価値はない」と断じる革新派。そして、統計の誤用が引き起こした大災厄。
リリアは、芸術と科学、感覚と論理、伝統と革新――相反するものの統合という、誰も成し遂げたことのない挑戦に立ち向かう。統計学は魔法界に何をもたらすのか。そして、「測れないもの」の価値とは何なのか。
データと魔法が交差する、知的冒険ファンタジー。