第4話 ブルーヴェイルの町
朝焼けの赤い光が、村の外れにある木製の柵を照らし始める頃、レオンは部屋の扉をそっと開けた。前日の疲れは完全には抜けなかったが、それでも硬いベッドで数時間眠れただけましだった。
階段を下りると、昨夜と同じようにカウンターの奥から大柄な宿屋の主人――ベルガーが顔を出す。彼はすでに火を起こしたのか、暖炉の前で鍋をかき混ぜていた。
店内には香ばしい香りが漂い、薄暗い空間にささやかな温もりが満ちている。
「おい、レオン。昨夜はよく眠れたか? あのベッドじゃさぞ痛かったろうが、文句は言わないでくれよ」
煙にむせたのか、ベルガーがごほりと咳をひとつしてこちらを見る。
「いえ、大丈夫でした。慣れない旅の途中でしたが、助かりました。ありがとうございます」
レオンは深く頭を下げる。
昨夜の夕食に続き、今朝も温かい食事を用意してくれるらしい。その気遣いが、思いのほかありがたかった。
「礼なんぞいい。旅人が迷い込んでくるのも珍しくはない。だが、こんな早朝に動き出す奴はそうそういねえな」
そう言いながら、ベルガーはテーブルの上に木皿を置く。そこにはパンと豆の煮込みらしきスープが湯気を立てていた。
「町まで距離があると聞きましたので、早めに出発しようと思いまして」
レオンはそう言いつつ椅子に腰掛け、スプーンを手に取る。旅に慣れない身体には、この何でもない食事が染み渡る。パンはやや堅いが、豆スープの優しい味が口の中に広がり、思わず息をついた。
ベルガーは「ふん、まあ賢明だな」とうなずきながら腕を組み、店の戸口をちらりと見やる。外はまだ朝の冷気が漂っているに違いない。
「川沿いの道をそのまま下れば、大きな橋が見える。その橋を越えた先が町だ。歩き続けりゃ、翌朝の早朝には着けるだろう。途中で寄り道せずに進めば……の話だがな」
「翌朝には……ですか。想像よりも遠いようですね」
レオンは少し目を見開く。町までは半日か、遅くとも日暮れまでには着けるかと思っていたが、聞けば一日以上かかるらしい。
疲れが溜まった脚がずしりと重く感じられた。
「ま、焦るな。寄り道して野犬にでも襲われちゃ元も子もねえ。川沿いは確かに道なりだが、そこらには野生の動物や魔物が出る可能性もあるからな。昨夜も言ったが、油断するなよ」
ベルガーの言葉に、レオンは真剣な面持ちでうなずいた。
王宮で教わった剣技があっても、実戦で命をかけるのはまた別の話だ。無謀な戦いを避けるためにも、注意深く進む必要がある。
「ありがとうございます。その助言、胸に刻んでおきます。……さて、朝食もいただいたし、そろそろ出発します。お世話になりました」
「おう、気をつけてな。……それと、金の話になるが、昨夜からの食事代込みで大銅貨三枚ってことでいいな」
ベルガーの言葉に、レオンは一瞬きょとんとした。
「え……? 昨夜のうちにお支払いしましたが、追加で何か必要なら……」
そう言いながら腰の革袋に手をやると、ベルガーは無骨な笑みを浮かべ、手をひらひらと振った。
「ははっ、冗談だよ、冗談。あんた、真面目すぎるな」
レオンは軽く眉をひそめ、呆れたように息をついた。
「……驚かせないでくださいよ」
「悪かった悪かった。だが、そうやってすぐ財布に手をやるのはよしとけ。旅の途中で調子のいい奴に吹っかけられるぞ?」
「気をつけます……」
そう言いつつも、ベルガーの声には嫌味はなく、どこか素朴な優しさがにじんでいた。
「では失礼します。本当にありがとうございました」
レオンは何度か頭を下げ、部屋に戻って簡単に荷物をまとめる。外套の襟をきゅっと立て、腰の剣を確認。
宿屋の扉を開けて外に出ると、村の家々はまだ淡い朝もやに包まれていた。鶏の鳴き声がかすかに響き、畑へ向かう村人の足音がポツリポツリと続く。
村を見渡すと、昨日の夕暮れとはまた違う表情をしていた。この地での営みは確かに小規模だが、その分、人々の暮らしがはっきりと見える気がする。
朝露の残る地面を踏みしめながら、レオンは川沿いへ伸びる道へと足を進めた。振り返ると、ベルガーの宿屋の煙突から煙が上がり始めている。
誰かが調理をしているのだろうか。思わず口元に微かな笑みが浮かんだ。
(初めて泊まった外の世界の宿……変な感じだな)
王宮を捨てて、まだ二日。
それでも、この旅の中で出会った人々は、それぞれの厳しい現実を生き抜く力を持っていた。王宮のように金や権力が渦巻く場所ではない。むしろ、不便で質素な世界かもしれない。
それでも――そこには、生きた息吹があった。
朝露に濡れる草をかき分け、川沿いの道へ入る。レオンはゆっくりと深呼吸をした。澄んだ空気が肺を満たし、気持ちが少しだけ軽くなる。
ここからが、本当の旅の始まりだ。
一日以上の道のり。休める場所があるとは限らない。少なくとも、夜通し歩く覚悟が必要だった。
午前中は順調に進んだ。川は穏やかに流れ、道はそれほど起伏が激しくない。時折、森へ続く小道や畑へ向かう獣道が見えるが、レオンは迷わず川沿いをたどった。
昼前には木陰で休憩を取り、ベルガーの店で買った固いパンをかじる。味気ないが、空腹の胃にはそれでもありがたい栄養源だった。
やがて日が傾き始め、空がオレンジ色を帯びる頃には、周囲の景色が変わり始める。木々が次第に密集し、森が広がる地形へと移り変わっていった。しかし、大きな橋はまだ見えてこない。
本当に、夜を越えても歩き続けなければならないのだろうか。
川のせせらぎを聞きながら、レオンはじわじわと痛み始めた足をかばう。王宮での剣術や馬術の訓練には慣れていたが、こんなにも長時間歩き続ける経験はほとんどなかった。
少しでも疲労を和らげようと、木陰を見つけるたびに短い休息をとる。樹の根元に腰を下ろし、川で濡らした布で顔や首筋を拭うと、幾分かさっぱりした。
(まさか、こんな旅をする日が来るなんてな……)
川面に映る自分の姿をちらりと確認する。外套は埃を被り、靴には泥がこびりついている。髪も乱れ放題だが、今は整える余裕もない。
それでも、悪くはない。
王子としての誇りをかなぐり捨てても、こうして「生きている」感覚を得られるのは不思議と心地よかった。身体は疲れているはずなのに、どこか軽やかさを感じる。
王宮で押し潰されそうになっていた心が、むしろ解放されていくようだった。
日がどんどん傾くにつれ、森の奥から夜行性の鳥の声が聞こえ始める。風がひんやりと変わり、暗闇の気配が近づいてくるのを肌で感じた。
レオンは迷った末、焚き火の準備をするため落ち葉や小枝を探し始める。夜を越すには火が必要だし、森の中を進みながら野宿するよりは、川沿いの開けた場所で休んだほうがまだ安全に思えた。
だが、完全に夜になるまではできるだけ前へ進むつもりだった。運よく人里や休める場所が見つかるなら、それに越したことはない。
夕闇が世界を包み始め、頭上には白く輝く月が浮かんでいた。
道と呼べるほど整備されてはいないが、川沿いを辿れば方角を見失うことはない。だが、夜の静寂は心細い。
月明かりと星の輝きだけが頼りで、獣の気配にいつ襲われるかわからない。
やがて、レオンの耳に水の流れとは違う音が混ざり始める。どうやら、滝か急流の音らしい。
辺りを見回すと、川幅が広がり、対岸には大きな岩場が見えた。慎重に足元を確かめながら進むと、暗がりの向こうに人為的な建造物らしき影が浮かび上がる。
石の柱が立ち並ぶ、大きな橋のような構造物。
これがベルガーの言っていた橋なのかもしれない。胸が弾むが、橋を渡った先の町までは、まだ数時間かかるだろう。
「……夜通し歩くしかないか」
小さくつぶやいた声は、夜風に掻き消された。
疲労はすでに限界に近いが、ここで野宿すれば、翌朝に橋を渡っても町に着くのは昼過ぎになる。できるだけ早く門の開く時間に間に合わせたい。
橋のたもとへ進むと、そこには頑丈な石造りの橋があった。
欄干には苔が生え、長い年月を感じさせる。下を覗けば、水量の多い川が月光を反射しながら激しく流れていた。落ちたら一巻の終わりだ。
レオンは暗闇の中、慎重に足を進める。
橋の中央で、一度立ち止まった。吹き抜ける川風が心地よく、深く息を吸い込む。夜はまだ長い。せめて、この静謐な景色を目に焼き付けておきたかった。
――だが、先を急がねばならない。
そう自分に言い聞かせ、再び歩き出す。橋を渡り切ると、緩やかに続く街道が森の中へ伸びていた。月の光がわずかに道を照らし、夜露で湿った土が靴裏にべったりと張り付く。
どれほど歩いただろう。
森を抜け、開けた地形に出た頃には、夜の寒さが肌を刺すようだった。疲労が身体を重くするが、前方にかすかな光が浮かんでいるのが見えた。
ゆらゆらと揺れる光。煙のような白い霧。
眠気のせいで幻覚かとも思ったが、やがてそれが人の持つランプや松明の灯りだと気づく。
レオンは剣の鍔にそっと手をかけたまま、警戒を怠らずに進む。もし盗賊の見張りなら厄介だ。しかし、近づいてみると、それは夜間の見回りのようだった。
鎧を着た門番らしき男が、ランプを掲げている。
さらに視線を先へ向けると、高い城壁と大きな門が見えてきた。門の周囲には数本の松明が灯され、薄暗いながらも町の気配を感じる。
(ここが……ベルガーの言っていた町か)
胸が高鳴る。
王宮のような巨大な城壁ではないが、村とは比べ物にならない規模だ。門の上には見張り台があり、兵士たちが巡回しているのが見える。
門は閉ざされているようだが、商人や旅人のためだろうか、わずかに隙間がある。
レオンが門の前まで来ると、門番の一人が声をかけてきた。
「おや、旅人か?」
中年の男だった。胴鎧の上に薄手のマントを羽織り、ランプを掲げてレオンを照らす。
「ええ、夜通し歩いてきました。こんな時間ですが、中に入れていただけませんか……?」
「夜通し……か。ずいぶん無茶をしたもんだな。ここはブルーヴェイルの町だ。こんな時間に来る奴は珍しいぞ。どこか怪我はないか?」
「いえ、大丈夫です。ただ……少し疲れているだけで」
門番はランプの明かりをレオンに向ける。
埃まみれの外套、泥だらけの靴。乱れた髪、そして深い疲れの色が滲んだ目。
門番はふむと頷き、背後の兵士に合図を送る。
「まあいい。来る者を拒むほど冷たくはねえさ。中に宿はたくさんあるから、適当に探しな」
「ありがとうございます。本当に助かります」
レオンは深く礼をし、町の中へ足を踏み入れた。
王城の荘厳さや華やかさはないが、広い通りはしっかりと石畳で舗装され、両側には家々が立ち並んでいる。夜の町は静かだが、いくつかの建物の窓には灯りがともっている。
建物は二階建てや三階建てもあり、木造と石造りが混在する。店の扉の奥では、今も活動している商人たちの話し声がかすかに聞こえてくる。
(思っていたより大きな町だな)
街道沿いの関所を兼ねた都市。
冒険者ギルドもあるらしい。一刻も早く情報を集めたいが、まずは眠れる場所を探さねばならない。
通りの先には、「宿」と書かれた看板がいくつか見える。だが、この時間に部屋が空いているかどうかはわからない。
開いている宿を確かめながら進むしかないだろう。
さらに進むと明かりが増え始める。大きな宿や酒場の前には、夜勤の馬車引きや冒険者らしき姿がちらほらと見える。賑わっているというほどではないが、完全に静まり返っているわけでもない。
ここには夜通し働く者や、旅人、冒険者たちの営みが息づいていた。
レオンはそんな光景を眺めながら、まるで別の世界に足を踏み入れたような感覚を覚える。王宮での華やかな貴族の宴とはまるで違う、庶民の生活の延長にある夜の街。
そこには、余計な飾り気のない、生々しい人々の暮らしが広がっていた。
(王宮を離れてからずっと不安だったけど……こうして見ると、人の営みってのは本当にいろんな形があるんだな)
心の中でそうつぶやく。
貴族たちの価値観だけが世界の全てではないと、頭では理解していた。だが、こうして実際に目の当たりにすると、より強く実感できる。
人々はそれぞれのやり方で、日々を生き抜いているのだ。
石畳の通りを進み、大きな宿の扉を試しに押してみた。鍵はかかっておらず、軋む音を立てて開くと、酒の匂いと笑い声が漏れ出してくる。
カウンターの奥では、疲れた表情の宿の主人らしき男が杯を拭いていた。
レオンを見て、少し驚いたような顔をしたが、すぐにむくれた表情のまま「あいよ、いらっしゃい」と声をかける。
(ここでも泊まれるかな……)
そう思い、声をかけようとしたその時。ふと、隅のテーブルに座る男と目が合った。
沈んだ様子のその男は、暗がりの中から鋭い視線を投げかけてくる。何を考えているのかわからない、無言の圧。
レオンは一瞬たじろいだが、すぐに視線を逸らした。
この町には色んな人間がいる。冒険者、傭兵、流れ者――。 ここで余計なトラブルを起こすわけにはいかない。
レオンは慎重に神経を張り詰め、ゆっくりとカウンターへと向かった。
「すみません、部屋を借りたいのですが……今からでも大丈夫でしょうか?」
「いいよ。銀貨……一枚は高いかな? いや、半日分の料金でいいや。大銅貨五枚で泊めてやるよ。ただし、湯はさすがに朝まで沸かないけどな」
主人はあまり愛想を振りまくでもなく、淡々と料金を告げる。ベルガーの宿ほど安くはないが、ここで贅沢を言っている余裕はない。
「わかりました。お願いします」
「あいよ。部屋は二階だ。鍵は渡すが、荷物の管理は自己責任だぜ。朝は勝手に出て行ってくれて構わないが、また泊まるなら追加料金がかかる。そこんとこ、よろしくな」
レオンはこくりと頷き、料金を支払う。
宿の中では酔客らしき男が唸り声を上げていたが、関わらないほうがいいと判断し、足早に二階へ向かった。
細い廊下の突き当たり。鍵穴に鍵を差し込み、扉を開けると、そこには狭い部屋があった。ベッドがひとつ。窓はなく、換気口が申し訳程度に開いているだけ。壁にはほとんど装飾がなく、床は木が軋む音を立てていた。
だが、とにかく横になれる場所があるだけでありがたい。
レオンは靴を脱ぎ、外套を乱暴に脱ぎ捨て、背負い袋を床に置く。汗ばむ身体を拭こうと見回すが、水桶すら見当たらない。
仕方がない。朝になれば何とかなるだろう。
「……やっと着いた、か」
ベッドに身体を投げ出すと、ギシリと軋む音が響いた。決して寝心地はよくない。しかし、そんなことを気にしている余裕はなかった。
一晩中歩き詰めだった疲労がどっと押し寄せる。まぶたが重くなり、思考がぼんやりと遠のいていく。
そのまどろみの中で、レオンは微かに微笑んでいた。
王族としての華やかな寝所は、もう遠い過去。だが、自分の意思でここまで来たこと、そして初めて見る普通の町の風景――。
それが、自分に新たな刺激を与えてくれる気がした。
孤独も、不安も、まだ消えてはいない。しかし、この町には活気がある。多くの人がいて、様々な生き方がある。
自分もまた、ここで新しい一歩を踏み出せるかもしれない。
そんな期待が、静かに心の奥に芽生えていた。
窓のない部屋は、朝になってもなお暗かった。だが、やがて周囲が慌ただしくなる気配に、レオンは目を覚ます。
階下からは食器の音や人の話し声が微かに聞こえ、どうやら宿の朝の支度が始まっているらしい。
「……助かったな」
昨夜、門番と交わしたやり取りを思い返しながら、レオンはゆっくりと起き上がる。
夜通し歩き、ようやく確保した数時間の眠り。まだ身体の重さは残っているが、それでも幾分か回復した実感がある。
何より、日中のうちに動き出せるのがありがたかった。
(まずは宿を出て、冒険者ギルドを探そう。登録さえできれば、仕事や情報も手に入るはずだ)
ベッド脇に脱ぎ捨てていた外套を手に取り、軽く払って羽織る。
剣の鞘を腰に下げ、背負い袋を肩へ掛けると、すっかり馴染んできたその重みが、少しずつ自分を冒険者らしくしているような気がした。
部屋の扉を開けると、すでに宿泊客たちが行き来していた。がっしりとした体格の男、商人風の若者、旅人らしき一団――。
王宮では見かけない、しかしこの町では「普通」の人々が、思い思いに朝を迎えている。
(本当に、いろんな人がいるな……)
貴族の屋敷で見てきたような豪奢な装いではなく、もっと実用的で、日々の暮らしに根ざした衣服。その姿に、彼らがどんな日常を生きているのかが滲み出ている気がした。
階段を降り、一階のカウンターへ向かうと、昨夜の宿の主人がいた。
レオンの姿に気づくと、むくれた表情のまま「あんた、早いな」と声をかける。
「ええ、あまりゆっくりする時間もなくて……。お世話になりました」
簡単に礼を述べると、主人は軽く肩をすくめた。
「部屋はそのままでいい。掃除はあとでやる。もし今夜も泊まるなら、早めに言っといてくれよ。他の客が入るかもしれねえし」
「……考えておきます。もしかすると、別の宿を探すかもしれないので」
「そうかい。まあ、自由にしてくれ。それじゃ、気をつけな」
素っ気ない口調ながら、客商売らしい最低限の気遣いはある。
レオンは軽く頭を下げ、宿を出た。
朝日が通りに射し込み、町はすっかり目を覚ましていた。夜の静けさとは一変し、活気があふれている。
行商人が荷を運び、露店の店主たちは野菜や果物を並べ、威勢のいい声を張り上げる。人々がせわしなく行き交い、荷馬車が通りをゆっくりと進んでいく。
(……これが、この町の朝か)
王宮では見たことのない、生の営み。貴族たちの整然とした暮らしとは違い、混沌としながらも力強い日常がそこにはあった。
自然と胸が高鳴る。この町で、何かが始まるかもしれない。この町で、冒険者としての第一歩を踏み出せるかもしれない。
握りしめた拳に、わずかに力がこもる。
(王宮を出て、剣を手にして……ようやく、ここまで来た)
まだ何も掴めてはいない。だが、ここには確かに、自分が生きていくための道があるはずだ。
レオンは改めて息を吸い込み、前を向いた。
――冒険者ギルドへ向かおう。
きらびやかな装飾とは無縁の石畳、庶民のざわめき、漂うパンの焼ける匂い。
それら全てが、彼にとっての新しい人生の始まりだった。
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