かぼちゃプリンが導く出会い
今日は十月三十一日。ハロウィンの日です。
町の人は仮装をして、皆はしゃいでいます。
店の人は、ハロウィン限定の商品を作ったりと大忙し。
そんな中、急いで走っている少女がいました。
少女の名前はベリー。小学五年生です。
「早くしないと、売り切れてしまうわ!」
「あら、ベリーちゃん。急いでどうしたんだい?」
開店準備をしていた、雑貨屋のおばさんが話しかけてきます。
「あぁ、おばさんこんにちは。私、あるキッチンカーを探しているの」
「キッチンカー?」
「ハロウィンの日限定で現れるんだけど、どこにあるかわからないの」
話を聞いたおばさんは、首をひねり考えます。
すると、何かを思いだしたのか、別の方向を指さしました。
「なら、広場の方に行ってみな」
「広場?」
「そうだよ。若い子たちが皆、そっちに行っていたねぇ」
「ありがとう、おばさん。行ってみるよ!」
ベリーはお礼を言って、広場の方に走っていきました。
★★★
広場に着くと、たくさんのキッチンカーがありました。
「うそっ、こんなにあるの?」
戸惑うベリーでしたが、あるキッチンカーに目が留まります。
それは、他に比べて行列ができていたからです。
「きっと、あれだわ!」
喜んだベリーは、最後尾に並びます。
「ハロウィン限定のかぼちゃプリン、まだあるかしら……」
ベリーは顔を覗かせますが、遠くてケースの中を確認できません。
しかも、前の男性が大きくて、小柄なベリーは今どれくらいの人がいるかもわかりません。
「どうしよう……」
焦るベリーには、もう一つ不安がありました。
それは、いつもベリーの前で、欲しい物が売り切れてしまうことでした。
「今回も、それにならないといいけど……」
しばらくして、やっとベリーの番がきました。
「はい、次の方どうぞ」
「あっ、はい。かぼちゃプリンをください! ハロウィン限定のです」
「あー、ごめんなさい。さっきの人で売り切れてしまったの」
その時、ベリーに雷が落ちたような衝撃が走りました。
それほど、ベリーは大ショックだったのです。
「食べたかったなぁ……かぼちゃプリン……」
とぼとぼ歩いているベリーのところに、先ほどの男性がやってきました。
「よかったら、一緒に食べない?」
「えっ、いいの?」
「だって、これが食べたかったんでしょ?」
男性は微笑み、ケーキの箱を指さします。
強く頷いたベリーに、笑顔が戻りました。
★★★
二人は広場に戻り、近くにあったベンチに座ります。
「お兄さん、ありがとう。私はベリー」
「僕はロイドだよ。ベリーちゃん、どっちが食べたい?」
「えっ、どっちも一緒でしょ?」
「よく見て。生クリームの量が、少し違うんだよ」
「あっ、本当だ!」
「もしかしたら、中のプリンの量にも、関係するんじゃないのかな」
「えーっ! なら、私多い方がいい!」
「そう言うと思ったよ」
そして、ロイドは生クリームの多い方を、ベリーに渡しました。
「はい、どうぞ」
「わぁ、ありがとう。いただきます!」
念願のかぼちゃプリンを食べて、ベリーは大満足!
ロイドも、残りのかぼちゃプリンを食べ始めます。
「そういえばお兄さん、どうしてこれを買っていたの?」
「あぁ、実は妹に頼まれていてね」
「えっ、じゃぁもらっちゃダメだったよね……」
「いいんだよ。他にも買ってあるから、気にしないで」
「むぅ……」
「それよりも、僕はこの町に来るの、初めてなんだよね」
「そうなの?」
首を傾げるベリーを見て、ロイドは頷きます。
「この町は、いつもこんなに賑やかなのかい?」
「違うよ。今日はハロウィンだから、皆仮装して楽しんでいるの」
「そうなんだね」
ロイドは納得したのか、またかぼちゃプリンを食べます。
ベリーも、お目当てのかぼちゃプリンを食べて、うっとりしています。
「あぁ……このかぼちゃ風味のプリンのなめらかさ、そして生クリームがマッチしてて、とても幸せ!」
「本当に、それが食べたかったんだね」
「えぇ、そうよ。でも、今思ったんだけど……」
「なんだい?」
「私も仮装して、『トリック・オア・トリート!』って言って、お兄さんからもらえばよかったなぁって」
ベリーの感想に、ロイドは笑いをこらえます。
「ふふっ、確かにそうだね」
「なによーっ、笑わなくてもいいじゃない!」
「ははっ、ごめんごめん」
すると、ロイドはまたかぼちゃプリンを指さします。
「ベリーちゃん、知っているかい?」
「知っているって、何を?」
「あのお店はね、魔法のお店なんだよ」
「えっ、うそ!」
「それでね、そこのお菓子を食べたら、願いが一つ叶うんだよ」
「本当!?」
「ベリーちゃんは、なにをお願いする?」
「うーん、いっぱいありすぎて、決められないよ!」
「じゃぁ僕は、『またベリーちゃんに会えますように』にするかな」
「えっ、そんなことでいいの?」
「君は、面白いからね。また話したくなったよ」
「それなら、私も同じ願いにする!」
そして、二人は微笑みあいました。
「あぁ、そろそろ帰らないと……」
「じゃぁお兄さん、またね!」
「うん、またねベリーちゃん」
★★★
次の日、学校にやってきたベリーは、まだふわふわしています。
「昨日のハロウィン、楽しかったなぁ」
「ではここで、新しい先生の紹介です」
そこに現れた先生に、ベリーは驚きます。
「はじめまして、ロイドと言います。これからよろしくお願いします」
「本当に、また会えちゃった……」
そして、目が合った二人は、また微笑みあいました。
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