リンドバーグ
翌朝、天気は東海岸の割には晴れている。
まずはにシャワーで目を覚ますことにする。
バスルームは明るい光に満ちていた。
今日は、ハナから先に向かうことにした。
ハナハイウェイを南に降りていく、熱帯雨林の中、左手に海が見え隠れし、右手には、時々滝が見える。
ここから先は、人家も道沿いに点々とする程度になってくる。
まず目指すのはキパフル、そこに眠るリンドバーグ氏を訪れることにした。
リンドバーグ、ここでいうリンドバーグはもちろん日本のロックグループではない。
そのグループの名前のもとになった人、もっと言えば、「翼よあれがパリの灯だ」(本当に言ったのかは?)というセリフを思い出してほしい。
そう、冒険飛行家、という言葉が世界で普通に話されていたころの人のこと。
チャールズ・オーガスタ・リンドバーグが正式な名前である。
世界で初めて大西洋単独無着陸飛行を成し遂げた男、飛行機乗りであれば一度は聞いた名前であろう人、その人は、ワシントンやパリの郊外のにぎやかな墓地ではなく、ここマウイ島の東の果てハナからもう少し南に離れた教会に眠っている。
彼の生きざまは、色々と紆余曲折はあるが、最後にはマウイ島キパフルの別荘でその生涯を終えた。
色々あった人生で、最後に選んだ場所がどんなところだったのかを確かめるために、ホテルから車を走らせる。
ホテルから南に車を走らせると、熱帯雨林の合間に忽然と住宅が出現したりする。住宅は、周りの景色に溶け込んだ外観とたたずまいであり、とてもホノルルと同じ、いや同じマウイ島のカフルイやラハイナと同じ島であるとは感じさせない風景を作っている。
やがて、車を走らせていると左手に入る小道がある、その時に進むと小さな教会が見えてきた。
ここが、あのリンドバーグが眠っている教会なんだと、私は若干の身震いとともに車を降りて、案内に従い彼の墓を訪れる。
その墓は、彼の業績や名声からは想像できない、ごくごく普通の墓石だった。
少し違っていたのは、魔よけのテイが周りを囲んでいたことくらいである。
私は、その墓石の前にしばらく敬意を表しつつ、佇んでいた。
(続く)