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可惜夜(あたらよ)に君を想う  作者: ウエハース
第五章 夜明け
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プレゼント交換

「クリパ始めよー!」

「その前に着替えてこい。いつまでそのシャツ着てんだ」

「今日一日中。……だめ?」

「ダメでーす」

「ちぇっ」


彼シャツを着ている渚をまず着替えさせる。理性がまだ回復しきってないんだよ。渚の彼シャツの破壊力は凄まじく、なけなしの理性を根こそぎ持っていきやがった。今日がクリパじゃなかったら……。考えたくもないな。

この4人も同じ気持ちになったことがあるんだろうか。海瀬と鈴名はあろうことか公共の場でおっぱじめたのでとても記憶に残っている。

陽菜さんと喜野は……まぁこの2人だし毎日イチャコラしてんでしょ。多分。


「はあー、昨日くっついたんだ」

「そうですね」

「俺からしたらやっとかって感じなんだが」

「お前にも……いやお前なんもしてくれてないわ。うんやっぱ何もない」

「言ってくれたら助けましたけど!?」


事情を知らない2人にいつ付き合ったのかを説明するが、念の為に渚については秘密にしておこう。本人に無断で伝えるのはどうかと思うし。


「なんて言って告白したんだい?」


ド定番の質問を海瀬がしてきた。まあ確かに気になるし、実際俺も夏に聞いたし。

…………恥ずかしい。渚に伝えることしか考えてなかったから第三者に教えるの恥ずかしすぎる。


「まあどうせ遥っちのことだし『この先もずっと〜』とか言ったんじゃない?」


一発で言い当てられて思わず肩が少し跳ねた。そしてそれを見逃さない彼女たちではなかった。


「マジ……?」

「愛だねぇ……」

「やるな……」

「黙秘権を行使します」

「黙秘は肯定とみなす」

「詰んでるなあこれ!」


あそこで反応したのが悪かったなこれ。言ったのが確定みたいになってしまった。いやまあ実際そうなんだけど。


「おまたー」


そこにタイミング悪く渚が戻ってきてしまった。


「あのさ渚」

「おい待」

「はーい遥っちはこっち行ってようね〜」


海瀬が渚に聞くのを止めようと動く前に他の3人に羽交い締めにされてリビングのソファまで引き摺られた。なぜ家主の息子がこんなことをされている?渚はそんな俺を見て頭に?を浮かべている。


「ぐぬおぉ……」


何とか抜け出そうともがくも、3人分の力に勝てるわけもなく、ただ見ていることしか出来ない。


「一ノ瀬にどんな風に告白されたんだ?」

「あー、なるほど……」


なぜ俺が暴れていたのか分かったらしい渚が苦笑しながらこっちを見てきた。

渚は自分が感じた幸せを他人に共有するタイプの人間だ。全部素直に言うかもしれない。もしそうなったら俺は耐えれる気がしない。


「………秘密で」


渚の回答に思わずホッとする。どうやら恥ずかしい思いはしないで済みそうだ。


「そこをなんとか!」


が、しかしここで退かない海瀬。ここで食い下がるほど気になってんの!?


「秘密ったら秘密!それに……」

「それに?」

「あれは私だけの言葉(もの)だから」


瞼を伏せ、胸に手を当ててそう答えた。


「……そうか」


さすがにそこまで言われては打つ手がないのか、海瀬は微笑みながら追及をやめた。


「ご祝儀、いる?」

「プレゼントあるのにまだたかるのかよ」

「現金持ってきててよかった〜」


おもむろに財布を取り出す3人を慌てて止める。


「今はいらないから!」

「『今は』……ねぇ?」

「あ」


とんでもない失言をしてしまった。これではまるでさっきのを肯定しているようなものじゃないか。いやまあ事実なんだけど。


「ならその分だけ分けて貯金しておこ」

「もしもの時足りないなんてなったらやばいからな」

「ポケットマネーの残高確認しとこ」


なんてことを言った3人を見て挽回は不可能だと悟り、諦めてクリスマスパーティを進行させた。

みんなでお昼にチキンを食べ、ボードゲームなんかで遊んだりしていたらプレゼント交換の時間になっていた。


「プレゼント交換のお時間です」


司会進行は陽菜さん。やり方は極めてシンプル。円になって、音楽が流れている間は隣の人にプレゼントを渡していき、そして音楽が止まった時に持っていたプレゼントが自分のものになるというもの。


「はいスタート!」


陽菜さんがスマホの再生ボタンを押すと、流れたのは定番の『ジングル・ベル』。

色とりどりのラッピングを隣に回していく。重さは全部変わらない。変に重いものとかは入っていないみたいだ。


『ジングルベール─────』


事前に設定していたタイマーによって曲が止まった。つまり、今持っているものがクリスマスプレゼントというわけだ。


「オープン!」


みんな一斉にラッピングを剥がしていき、中身を確認する。

喜野には貝殻がついたブレスレット。贈り主の海瀬曰く「誰にでも似合う感じだったから」。

陽菜さんには茶色の革のポーチ。贈り主の渚曰く「私も使ってるイチオシ品」。

海瀬には小さい宝石がついたネックレス。贈り主の俺曰く「デザインが好み」。

鈴名には遊園地のペアチケット。贈り主の陽菜さん曰く「誰に渡っても喜びそうだから」

渚にはシンプルな銀色のイヤリング。贈り主の喜野曰く「シンプル・イズ・ベスト」。

俺にはいい感じの大きさのメイクポーチ。贈り主の鈴名曰く「みんなメイクしてると思ったから」。


「おお〜」

「いいなこれ」


各々自分の貰ったプレゼントをつけてみたりして楽しんでいる。奇跡的に自分の買ったプレゼントを自分で貰うとかは無く、全員バラバラになってくれた。


「どーよこれ」


渚がイヤリングを付けて感想を求めてきた。ふむ、控えめに言って最高。


「うん、似合ってる」

「知ってる」

「お前が思ってる以上に似合ってるぞ」

「えへへ」

「あーあ、イチャイチャしちゃって」


鈴名から茶化されたが、無視無視。

隙があればイチャイチャしているのは自覚している。しかし止められないんだ。この心の赴くままにイチャイチャさせてもらうからな。

プレゼント交換を終えると、もう18時を過ぎていた。


「このあたりで解散かな〜」

「ですねー」


元々クリスマスパーティは18時までを予定していた。ちょっと過ぎてしまったけど、まあ許容範囲内かな。

これから何をするのかというと、クリスマスだからな。みんな恋人と2人きりでイチャイチャするんだよ。


「んじゃまたねー」

「おつかれー」

「ばいばーい」

「じゃーなー」


あっという間にみんな帰ってしまった。それ程までにイチャイチャしたかったのか。分からなくもないがちょっと寂しい。


「それじゃ、こっちもそろそろ行きますか。忘れ物ないようにな」

「荷物は全部持ったよー」

「よし行くか」


これから何をするのかと言うと、別にイチャイチャするわけではなく、ただ渚を家まで送るだけだ。独り占めしたい欲は十分にあるが向こうも会いたいだろうしここは我慢しよう。

家を出て、自然と手を繋いで歩き出す。

これからもずっと、こんな風に隣を歩くんだろうと、この頃は、まだ純粋に思っていた。

最近忙しくて書けてない!書きたいのに!

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