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可惜夜(あたらよ)に君を想う  作者: ウエハース
第三章 恋の裏方と気付き
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夏祭り

「みんな準備出来たー?」

「あとちょっと待ってくださーい!」

「はいはーい」

3日目のバイトも無事に……いや、鈴名と陽菜さんはソワソワして使い物にならなかった。まぁ無事にとは言えないが海の家でのバイトも終わり、ついに夏祭りへと行く時が来た。

「優芽、ちょっとそこにあるゴム取ってくれないか?」

「う、うんわかった!」

「陽菜姉、変じゃない?」

「うんうんいいよいいよカッコいい」

………………心配だなぁ。

「それじゃ、行こうか。みんな忘れ物ないね?」

「大丈夫でーす」

恭弥さんが道を案内してくれるらしく、俺たちはそれについて行くことになった。

「……2人とも、大丈夫?」

移動中にコソッと聞いてみた。

「「大丈夫じゃないです」」

本当に心配だ……。





「おおー!」

「人多いね〜!」

ついに祭りをしているところに着いた。とてつもない人の数だ。見てるだけで人混み酔いしそうだ……。

「よし、じゃあ僕はここで。帰りは陽菜に連れて帰って貰ってね」

「はーい」

そう言って、恭弥さんは人混みの中に消えていった。常連さんと楽しむらしい。こっちもこっちで楽しませてもらおう。

「どれから行こっか?」

「分かってないねぇ遥君」

「え?」

やれやれと言わんばかりに陽菜さんは首を横に振る。周りを見ると、全員陽菜さんと同じ反応をしている。

「どれから回るとかないのよ」

嫌な予感。

「まさか」

「目に付いたもの片っ端から回るに決まってんじゃん?」

「マジすか……」

「よし、じゃあ行こー!」

陽菜さんはそのまま黄野の手を取って歩き始めた。

「ちょっと陽菜さん!……も〜、行こっ湊!」

鈴名はそう言って海瀬の手を引っ張って行った。

「はぁ……心配要らないかもなこれ」

もうそれ出来るなら大丈夫だろ。あとはどうやっていい感じに分裂するだけか考えないとなぁ。回りながら考えておくか。

「それじゃ、俺達も行くか?」

冗談半分で、手を差し出しながら渚に聞いてみた。

「……!ふふっ、迷子になったら困るしそうしよっか」

渚は最初は少し驚いた顔をしたが、笑って俺の手を取った。そしてこっちを見て、からかうように、それでいて嬉しそうにで微笑みながら、こう言った。

「……離さないでね?」

「あ、ああ」

反射的に顔を逸らしながら答えた。赤くなっている顔を見られたくなかった。今のは…めちゃくちゃずるいと思う。

そこからみんなと合流するまで、熱い顔をどうやって冷ますかだけを考えていた。


「射的やりたーい!」

「射的かぁ」

みんなで回ってて、鈴名が提案した遊びを見て、少し憂鬱な気分になる。

「どしたの遥」

そんな俺を見かねた渚が声をかけてくる。

「射的苦手なんだよ。自分で引くレベルの下手さしてるから俺はパスで」

「そんなに下手なら逆に見てみたいんだが」

からかってくる黄野。こいつムカつくな。おうおうお前の気持ち全部バラしてやろうか。

「そんなに言うならやってみろよ」

「おうやってやるよ」

そう言って黄野は店主にお金を渡し、銃を構える。そして引き金を引く。…………外れた。綺麗に全弾外したぞこいつ。

「やーい下手くそ〜」

「お前相手なら当たると思うんだけどなぁ」

「物騒なことを言うな」

「やれやれ2人とも。お姉さんに任せなさい!」

陽菜さんが店主にお金を渡して、銃を構え、撃った。…………全弾命中。凄い。

「どんなもんよ!」

「「おお〜」」

思わず俺たちは拍手をしていた。そして、陽菜さんは店主から落とした景品を貰って、さらに先に進み出した。

「ほらほら行くよー!花火までそんなに時間ないんだから!」

「早いなぁ」

緊張を誤魔化すためにあんなに元気に振舞っているんだろうか。もしくはシンプルに楽しんでるか。多分後者だなあれは。

それからも、みんなでやりたい屋台や食べたい屋台を言い合って楽しんだ。

「遥それ何?」

「ん?チュロス。いる?」

「ちょーだい!」

「ほら」

「いただきまーす。…うん美味しい!」

「…………お前らさぁ」

「「?」」

「自覚ないならいいわ……」

なんてこともあったり。

そして、ついにその時がやってきた。花火が始まる約6分前。このあたりで別れておかないと間に合わないんだけど……どうやって別れるか決めてなかった!祭り楽しみすぎたわ!ヤバいわよ!

「どうしよ………あっ」

色々考えていると、花火が始まるため、沢山の人が我先に花火をいい場所で見ようとして、人の流れが出来ている。使えるかもしれない。

「陽菜さん、鈴名。ちょっと耳貸して」

かくかくしかじか……と、あえてこの人の流れに混ざって逸れようという計画を話した。

「よしならさっさとやろう」

そう言って陽菜さんは喜野の手を引っ張って進み始めた。

「花火始まっちゃうよ!みんな急ご!」

全員が陽菜さんについていき、人混みの中に入った。そして陽菜さんと鈴名と俺は、あえて人混みに身を任せ、逸れることに成功した。そしてそれぞれ、もう合流できないと決めつけて、事前に決めていた穴場(3つあるならもはや穴場じゃない気がするが)に向かった。ここからは、彼女たちが頑張るしかない。俺に出来るのは、ただ成功を祈るだけだ。


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