八神家
「着いたーー!」
「風が気持ちいい〜!」
揺られ揺られ、ついに目的地へと到着した。
「ここが俺たちが働く海の家か。結構大きいな」
「だろ?お陰様で繁盛すると大変なんだなこれが」
どうやら結構人気らしい。いつもは八神さんと喜野だけで何とかなるレベルらしいが、今回は……考えたくもない。
「頑張ろうな……」
「そうだな……」
「はいはーい、まずは荷物整理。自分たちの泊まる部屋まで持ってって。あそこに青い屋根の建物あるでしょ?あれがみんなが泊まるところだからね。」
八神さんはそう言って海沿いの道路を渡った先にある建物を指さす。結構大きめな2階建ての1軒家だ。黒を基調としたデザインをしている。
「そういやあの車の人も海来るのかな?」
鈴名が言ってる車の人というのは、俺たちが出発してからここまで来るのに、ずっと後ろを走ってた車の運転手のことだ。ここまで一緒とかすごいね、なんて言ったりしてた。
「あ、お父さんだ」
その家の前でこちらに手を振っている人影が見える。
「うーん、ま、いっか。ほとんど車通らないし、先こっち終わらせちゃおう。仕入れはまた後で」
と、呟きながら歩き始めた八神さんの後ろに全員ついて行く。
家に近づくにつれ、人影が鮮明になっていった。涼しげな半袖短パンの男。髪は金髪でサングラスかけている。そう、簡単に言うとチャラい。
「みんな、よく来たね。私が陽菜の父親の八神恭也だ。これから4日間、よろしく頼むよ」
「「「「よろしくお願いしまーす」」」」
………チャラくない。見た目だけだこの人。根っこはめちゃくちゃ真面目だ。
「ならまずは部屋に案内しよう。付いておいで」
恭也さんの案内に従って、2階に上がると、部屋が3つあった。右側の部屋には布団が3つ。左側には2つ。そして奥の部屋にはベッドや机など最低限のものが揃っている。どうやら奥が八神さん……いや陽菜さんの部屋らしい。
「右が女の子で左が男の子だ。ちょっと狭いけど我慢してほしい」
「いえいえ、泊めてもらえるだけありがたいですよ。別に狭いって訳でもないですし」
「本当かい?そう言って貰えると助かるよ」
海瀬が言った通り、寝るだけならさほど不便でもない。3人で寝ても余裕があるくらいだ。
「トイレは1階と2階にあるから好きな方を使ってくれ。僕は基本、1階にいるから何かあったら呼んでくれ」
「分かりました」
「それじゃあ、僕は陽菜と向こうに食材とかを運んでくるからその間に荷解きしといて。あと晩御飯は18時半くらいを予定してるよ」
「はいはーい。じゃ、行こ、お父さん」
陽菜さんと恭也さんはそのまま下に降りていった。
「ならお言葉に甘えて、荷解きするか」
「だね〜」
「その後どうする?」
時計を見ると、17時ちょうどだ。荷解きの時間を加味しても、夕食の時間まで余裕がある。
「ならトランプは?確かここに置いてあったはずだ」
「それアリ」
「ならそうしよう。さっさと荷解き終わらせてトランプするか」
そして、俺たちは荷解きを爆速で終わらせ、トランプをして楽しんだ。
▢
トランプで遊んでいるうちに夕食の時間になったため、俺たちは下に降りて、ご飯を作るのを手伝うことにした。
「ババ抜き1回も勝てなかった……」
「鈴名は流石に顔に出すぎ。ポーカーフェイスの練習した方がいいぞ」
「私と最下位争いした人に言われてもねぇ?遥っち」
「でも最下位じゃないんで。負け犬の遠吠えってやつか」
「よし、夜覚悟しなよ」
「上等だよやってやるよ」
あそこまで言われちゃ黙っていられない。白黒つけてやる。
「ババ抜きしてたんだ。夜の部は私も混ぜてよ」
「陽菜姉はダメ」
「ええー!」
「喜野、なんでダメなんだ?」
せっかくなんだしみんなでやればいいのに、と、喜野に言うと
「陽菜姉、トランプ馬鹿みたいに強いからやめといた方がいい。おじさんと3人でやった時、ボロ勝ちだったから」
「あれは酷かったなぁ……。ババ抜きで初手で残り2枚まで減らしてくるとは思わなかったよ」
最早それは強いとかいう次元の話では無いのでは?
「それはシャッフルが甘いのでは……」
「なので、陽菜姉にはトランプ禁止令が出てる」
トランプ禁止令。どれだけボコボコにすればそんなものを課されるのか。
「よし、出来た。今晩はビーフシチューです!」
「「「おぉ……」」」
シチューの理由は、恭也さん曰く、スーパーに買い物に行った時にルーが安くなっていたから、らしい。
みんなで手分けしてお皿に盛り付けたりをして、準備完了。
「「「「いただきまーす」」」」
うん、美味しい。まろやかで具材にも味がよく染み込んでいる。
「隆人くんの友達のみんなに聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと?」
「うん。ぶっちゃけ、学校ではどうなのかなと」
「学校での喜野ですか……。そうですね……」
「おい待て一ノ瀬。変なことを口走るなよ?」
恭也さんの質問に答えようとしたら、喜野が釘を指してきた。何を言うのかと思えば、友達になんてことを言うんだ。友達なんだからそんな恥ずかしいこととか言うわけが。
「大丈夫大丈夫。変なこと言わないって」
「それなら良かっt」
「学校ではみんなから『王子様』って呼ばれてますね」
言うわけがあるんだよな。
「お、王子様?」
流石に恭也さんも予想外だったらしい。まぁ甥っ子のような子が学校で『王子様』なんて呼ばれてればそうなるか。
「ちょっ一ノ瀬!?」
喜野が文句を言いたそうにこちらを見ている。
「誰に対しても笑顔で優しく真摯に対応してるからそう呼ばれて…ます …」
おっとまずい、笑みがこぼれてしまった。
「笑うなよ」
「いや、だって素のお前と学校でのお前、全然違いすぎるんだもん仕方ないじゃん!」
「それは否定しないけども……」
「遥君。その話詳しく」
「おじさん?!」
その後は、『王子様』について色々話したり、明日の仕事のことなどを話したりした。
そして、トランプ夜の部は禁止令を無視した陽菜さんが1位を総なめした。特に酷かったのが、ババ抜きだ。初手で揃って1手目で上がった。そして俺たち全員からも禁止令を課された。




