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可惜夜(あたらよ)に君を想う  作者: ウエハース
第三章 恋の裏方と気付き
30/78

やはり感覚は麻痺するものらしい

「母さーん、ちょっと出かけてくるー」

「りょーかい。ちなみにどこ?」

「ショッピングモール行ってくるわ。なんか欲しい服とかある?」

「うーん、ならなんか私に似合う服を!」

「あんたなんでも似合うだろ……」

そう、なんと母さんもモデルなのである。ちなみに結構有名。俺がこの仕事に就いたのもこの人が理由だったりする。

「任せた」

「はいはい、まぁ適当に見繕って服買ってくるわ」

嘘である。絶望的に似合わない服買ってやろう。古着屋とかに行ったらなんか面白そうなのあるだろ。

「買ってくるもの次第で今日の晩御飯が消えるけど?」

ナチュラルに心読むのやめてくれます?

「はーい……」




「やっぱり休日だと人多いな……」

意気揚々とショッピングモールまで来て、色々服買ったはいいものの、張り切りすぎて疲れてきた。

どっかでお茶でもしてぇな……

「あれ?一ノ瀬?」

「喜野?なんでここに」

って駅近なんだからそりゃ知り合いに合うこともあるだろ。でもなんか違和感があるというか……レディースの服持ってないかこいつ。

「あー、俺は荷物持ちというか……」

「荷物持ち?誰の?」

「おまたせータカ!」

「……………………」

「……………………」

「「どちら様?」」

「あーこいつは一ノ瀬遥。俺の友達。で、こっちが八神陽菜。俺の知り合い」

「幼馴染みですー!」

「幼馴染みらしいです」

「は、はぁ……。一ノ瀬遥です。よろしくお願いします」

「はじめまして!八神陽菜です。大学1回生です!よろしくね」

わぁ元気。大学1回生ってことは……3つ上?

「荷物持ちってそういうことか」

「せっかくの休みが消えたんだよ……。家でゴロゴロしたかったのに」

「こんな可愛い幼馴染みと買い物デート出来るんだから幸せでしょー?!」

「自分で可愛い言うな」

八神さんは自分で可愛いって言うだけあってすんごい美人。アイツらと一緒にいたから感覚麻痺ってるなこれ。人当たりも良さそうだし大学でも人気あるんだろうな。

「仲良いんですね2人とも」

「でしょー?」

「おい一ノ瀬あんまり調子乗らせんな。陽菜姉そういうところあるから」

「陽菜姉?へぇーーー?」

「な、なんだよ」

「あー分かるよ遥くん。タカの陽菜姉呼び可愛いよね〜」

「は?」

「はい。なんというか、最早あざとさまでありますよね」

「分かるー!この顔でそれは罪だよね」

多分学校の女子が聞いたらもうそれはすごいことになる。学校での王子様スタイルで「陽菜姉」なんて言ってみろ。死ぬぞ大半の女子。

「……2人とも?」

「「すみません」」

そんな怒んなくても……

「はぁ……。で、陽菜姉。このあとどこ行くの」

「あぁ、ちょっと疲れちゃったからお茶しない?遥くんも」

「俺もご一緒していいんですか?」

「いいよ〜。タカが素で話せる友達とか初めてだし、タカの学校での話聞きたいし。対価はタカの小さい頃の話で」

えっ何それめちゃくちゃ気になる。このイケメンの小さい頃とか気になりすぎる。

「そのタカが了承してないんだけど?」

「ならお言葉に甘えさせていただきます」

「一ノ瀬…?」

「悪いな。俺もお前の話聞きたい。そしてあわよくばその内容でいじり倒す」

「それを聞いて俺が許すと思うか?」

「八神さんが許可出してるんだからいいでしょ」

「そーだそーだ!愛しの陽菜お姉さんがいいって言ってるんだから!拒否権ないぞー!」

「自分で愛しのとか言うな」

「よしレッツゴー!」

「はぁ……」



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