やはり感覚は麻痺するものらしい
「母さーん、ちょっと出かけてくるー」
「りょーかい。ちなみにどこ?」
「ショッピングモール行ってくるわ。なんか欲しい服とかある?」
「うーん、ならなんか私に似合う服を!」
「あんたなんでも似合うだろ……」
そう、なんと母さんもモデルなのである。ちなみに結構有名。俺がこの仕事に就いたのもこの人が理由だったりする。
「任せた」
「はいはい、まぁ適当に見繕って服買ってくるわ」
嘘である。絶望的に似合わない服買ってやろう。古着屋とかに行ったらなんか面白そうなのあるだろ。
「買ってくるもの次第で今日の晩御飯が消えるけど?」
ナチュラルに心読むのやめてくれます?
「はーい……」
▢
「やっぱり休日だと人多いな……」
意気揚々とショッピングモールまで来て、色々服買ったはいいものの、張り切りすぎて疲れてきた。
どっかでお茶でもしてぇな……
「あれ?一ノ瀬?」
「喜野?なんでここに」
って駅近なんだからそりゃ知り合いに合うこともあるだろ。でもなんか違和感があるというか……レディースの服持ってないかこいつ。
「あー、俺は荷物持ちというか……」
「荷物持ち?誰の?」
「おまたせータカ!」
「……………………」
「……………………」
「「どちら様?」」
「あーこいつは一ノ瀬遥。俺の友達。で、こっちが八神陽菜。俺の知り合い」
「幼馴染みですー!」
「幼馴染みらしいです」
「は、はぁ……。一ノ瀬遥です。よろしくお願いします」
「はじめまして!八神陽菜です。大学1回生です!よろしくね」
わぁ元気。大学1回生ってことは……3つ上?
「荷物持ちってそういうことか」
「せっかくの休みが消えたんだよ……。家でゴロゴロしたかったのに」
「こんな可愛い幼馴染みと買い物デート出来るんだから幸せでしょー?!」
「自分で可愛い言うな」
八神さんは自分で可愛いって言うだけあってすんごい美人。アイツらと一緒にいたから感覚麻痺ってるなこれ。人当たりも良さそうだし大学でも人気あるんだろうな。
「仲良いんですね2人とも」
「でしょー?」
「おい一ノ瀬あんまり調子乗らせんな。陽菜姉そういうところあるから」
「陽菜姉?へぇーーー?」
「な、なんだよ」
「あー分かるよ遥くん。タカの陽菜姉呼び可愛いよね〜」
「は?」
「はい。なんというか、最早あざとさまでありますよね」
「分かるー!この顔でそれは罪だよね」
多分学校の女子が聞いたらもうそれはすごいことになる。学校での王子様スタイルで「陽菜姉」なんて言ってみろ。死ぬぞ大半の女子。
「……2人とも?」
「「すみません」」
そんな怒んなくても……
「はぁ……。で、陽菜姉。このあとどこ行くの」
「あぁ、ちょっと疲れちゃったからお茶しない?遥くんも」
「俺もご一緒していいんですか?」
「いいよ〜。タカが素で話せる友達とか初めてだし、タカの学校での話聞きたいし。対価はタカの小さい頃の話で」
えっ何それめちゃくちゃ気になる。このイケメンの小さい頃とか気になりすぎる。
「そのタカが了承してないんだけど?」
「ならお言葉に甘えさせていただきます」
「一ノ瀬…?」
「悪いな。俺もお前の話聞きたい。そしてあわよくばその内容でいじり倒す」
「それを聞いて俺が許すと思うか?」
「八神さんが許可出してるんだからいいでしょ」
「そーだそーだ!愛しの陽菜お姉さんがいいって言ってるんだから!拒否権ないぞー!」
「自分で愛しのとか言うな」
「よしレッツゴー!」
「はぁ……」




