関係性の変化と怪しい影
「ありがとうございました〜!」
「どうする?これから。」
「どうしよっかな〜ってうわっ!」
蒼野は考え事をしていたせいか、何も無いところでつまづいて転けそうになった。
「よっと。……店出て一歩目で転けるなよ……」
「面目ない……」
「あれ?遥?」
「ん?なんだ椿さんか。………椿さん!?」
さぁ椿さんが来たところで現在の俺と蒼野の状況を把握しようか。
椿さんから見て、俺たちはカップル限定のカフェから出てきて手を繋いでる(転けそうなのを助けたため)訳で。……………詰んだな?
「椿さん、落ち着け。話せば分かる。」
「え〜〜?話すも何もそういうことでしょ〜?」
あからさまにニヤニヤしながらからかってくる。やはりこうなったか。こうなるとこの人はウザい。多分これから1ヶ月位はいじられる。
「そういうんじゃないんだってば!」
「じゃお邪魔虫は退散しますかね。ごゆっくり〜♪」
「ちょ待っ……足速!」
ちくしょう元陸上部は違うなぁ!
「一ノ瀬、今の人は?」
ああ、そうか。そういや蒼野は知らないのか。
「なんて言うか保護者枠というか昔からの知り合いかなぁ。」
「へぇ〜」
「まぁいいか。この後どうする?」
「それも決めなきゃなんだけど……あの…手………」
「あっごめん」
「じゃ、じゃあとりあえずぶらぶらしようよ。」
「あ、あぁそうだなそうしよう。」
ふと、黒い服を着た人が見えた。サングラスをかけて、黒いマスクをして、見るからに不審者だ。関わらんとこ。
「蒼野、右の方の喫茶店の近く見てみ。」
「え?…………なんかいるね。」
蒼野も認識したらしく、向こうにバレないようにしながら、見ている。黒い服を着た不審者は、蒼野の視線に気づいたのかそそくさとどっか行った。
「なんなんだろうな、あの人」
「フッフッフ」
何故そこで笑うのか。
「おい待て蒼野なんか変なことしようとしてないか?」
「いや?別に一ノ瀬の噂をめちゃくちゃ面白くしてやろうなんて思ってませんよ?」
「はぁ!?」
待て待て待て!本っ当に待て!なぜ今の流れでそうなる!?これ以上ややこしくされたら困るんだよ!というかそれするメリットって何!?
「落ち着け、な?そんなことしたところでお前にメリット無いだろ?変なことしてお前の評判まで悪くなるぞ?ね、蒼野さん?」
「やれやれ…分かってないなぁ一ノ瀬さんよ。私の評判がそんな簡単に悪くなるとでも?」
ドヤ顔でそんなことを言ってくる。
「うっわすげぇムカつく。」
「噂ややこしくなっても責任取らないからね。」
そして無責任なことも言ってくる。
「そこは取れよ!?」
「よし、行こ!一ノ瀬…いや、遥!」
「へ?」
手!手!さっき恥ずかしがってた蒼野はどこ行ったんだよ!
「ちょ、蒼野!」
「渚。」
「は?」
急に蒼野の名前を言われた。
「渚。」
2回目で蒼野の要求を理解した。
「えぇ…」
「渚。」
3回目で諦めた。
「はぁ……渚。」
「よろしい。」
蒼野に引っ張られて走ってる時にクラスのやつらが見えた。なんか不思議そうな顔をしていた。なんでそんな顔してんだ……?
「遥、これどう?」
「どう、ねぇ……いいとは思うけど、渚はこっちの方が似合うんじゃない?」
「……センスあるね」
「仕事上ね。」
「ならこっちは?これも合うと思うんだけど。」
「あー確かにいいね。それ着るならこれもいいと思うなぁ。」
「説得力が違うわ」
「仕事上」
「じゃ、これ買ってくるから外で待ってて」
「りょーかい」
渚に言われた通り、店の外に出て待つことにした。そこでもまた、黒い服の不審者を見た。さっきどこかに消えたはず…………これストーカーってやつでは?
その不審者は俺の視線に気づいたようで、近くに停まっていた白い車に乗り込んで、エンジンをかけた。どうやら逃げるらしい。俺は逃げる前に、スマホにその車のナンバーをメモした。何かあった時に便利だからだ。気のせいなら後で消せばいいし。
「おまたせー」
「んで、次は?」
「次はあそこ!」
渚には伝えずに、その後も楽しんだ。




