なんか凄く仲良くなれるかもしれない
「一ノ瀬君、今日暇かい?」
「別に暇だけどどうした?」
あれから喜野とは友達になった。友達になる前から分かってたけど普通に良い奴。
「今日昼までだろう?ファミレス行かないかい?」
「あー、最近ファミレスばっか行ってるから他のとこならいいぞ。」
「そんなにファミレス行ってるのか……」
「この数日で2回は行ってる。」
「それだけ行ってれば飽きるか。」
「そういうこと。なんかない?」
内心は絶対誰か居てまた噂聞かされる気がするからなんだけど。
「ならファストフードにしよう。」
「ファストフード?この辺りにないと思うんだが。」
「確かにこのあたりにはないよ。でも1駅進んだ先にはあるのさ。」
そう誇らしげに言ってみせる喜野。どうやらお見通しらしい。イケメンだなぁ……
「なるほどな。助かる。」
「こういう時はお互い様さ。」
「それじゃ、さっさと行くか。」
「へぇ、こんなところにあったんだな。」
「最近できたところだからね。結構穴場さ。」
「お前何食べんの?」
「そうだね………これと、これと…」
おいおいこいつ、2セット頼みやがった。しかもポテトとか全部Lサイズ。めっちゃ食うじゃん。いや食いすぎだろ。
「ん?どうしたんだい?」
「いや、なんでもない。」
□
「そういや、喜野って彼女とか居ないの?」
「彼女か、そういうのはいないしいたこともないね。」
「…マジで言ってる?」
「マジで言ってる。」
「その顔ならいたことくらいはあると思ってたんだが。」
「一ノ瀬君には分からないかもしれないんだけどさ、言い寄ってくる人みんな僕の顔とかしか見てないんだよ。こんなにかっこいいんだから内面もこんな感じなんだろうって決めつけてさ。だから作れないって言うよりは作る気がないって言った方がいいのかな。そんな感じ。」
分かる。めちゃくちゃわかる。本当に似たもの同士なんだな俺ら。
「わかる。んで、周りはかっこいい自分を求めてるからそれを演じざる得ないのよな。素とかもだせなくてさ。」
「ああ。おかげでここ数年は「かっこいい自分」を演じ続けてるよ。というかなんでそんなに詳しく言語化出来るんだ?」
「色々あったんだよ……色々とな。」
俺は一体どんなに顔をしていたのだろうか。酷い顔だったことだけは確かだ。そんな俺を見てかは知らないが喜野はそれ以上聞いてこなかった。その気遣いがただただ有難かった。
「ここまで話したんだし、俺の前くらい素出してみなよ。俺気にしないし。」
「…………いいのかい?」
「ああ。」
「分かった。」
さて、運動神経抜群頭脳明晰イケメンの喜野隆人さんの素はどんななのか。
「あー疲れた。やっぱ他人のために演じるのってクソ疲れるな。やっと息抜きできるわ。」
少し言葉遣いが荒くなったか?いや結構荒いな?クソとか言ってるし。
「ありがとな、一ノ瀬。家以外で素を出せるとは思ってなかったわ。」
そう言いながら満面の笑みをしてみせる喜野。いつもと違ってこっちの方が年相応で可愛らしい。
「どういたしまして。俺もそっちの喜野の方がいいわ。絡みやすい。」
「そうか?そう言ってもらえるとありがたいな。」
「そういやこれからどうする?この後どっか寄るか?」
「ゲーセン行かね?近くにあるんだよ。」
「OK、行こう。」
「よし決まり!ならさっさと食って行くか。」
…食い切ったよこいつ。いやそりゃ食える量頼んでんだから当たり前なんだけどあの量がこの身体にぃ?はー羨まし。




