1.純白のゲレンデ
純白のゲレンデをスノボで下る。冷たい風が肌に突き刺さる。けれどそれが心地いい。
俺の名前は一ノ瀬遥。今は高1の春に校外学習でスキー場に来ている。
何故かは知らないが異常気象とかで4月半ばの今でも雪が降ってる。深く聞くな。そっちのが都合がいいんだ。あと本当ならここで俺の容姿についての描写があるはずだったんだが、どっかのバカがスキーにしたせいで無い。
春野菜が全滅して農家の人は死にかけたとかニュースでやってたりしていた。そしてそれに乗っかってうちの学校はスキーに来てるというわけだ。
スノボは初めてじゃない、というか年1でここに滑りに来るから、お陰様で施設の人とは顔見知りだ。
「あっちょっと待ってこれコントロール出来ない!」
「ちょ、前前!」
「えっ?わああああああああぶつかるううううう!」
気持ちよく滑っていると、少し先から悲鳴が聞こえた。
悲鳴が聞こえたほうを見ると、誰かがお手本のように木にぶつかりそうになっている……というかあれクラスメイトだ。
コントロールを失って止まれなくなっているらしい。このままでは大怪我をしかねない。
さすがにそれは気分が悪いので、スピードを上げてクラスメイトと木の間に体をねじ込む。
「きゃっ!」
ガキャ!っと大きな音を立ててスノーボードとスキー板が勢いよくぶつかる。何とか間に合った。木が揺れて上に積もってた雪がクラスメイトの頭に落ちる。
「あいてっ」
「大丈夫?」
思わず抱きしめるような形になってしまった。彼女がバランスをとれるようにゆっくりと体から離す。
「あ、ありがとうございます」
パッと見て、目視できる範囲に怪我がないことを確認する。
「怪我は……なさそうだな。もしどこか痛むようなら早めに病院に」
「は、はい」
「それじゃ、気をつけて」
そう言って俺は再び滑り出す。
後ろの方で「誰だろう?」とか「かっこよかったね」とか聞こえてきた。ゴーグルも着けて顔のほとんどが隠れているから、誰が誰だかわからないだろうし仕方ない。
彼女の中では『助けてくれたスノボ上手な人』として記憶されるのだろう。うん、俺もそっちのほうがいい。
しばらく滑っていると背中に痛みを感じた。どうやらさっき助けたときに打ったらしい。一応宿泊施設には保健室みたいなところがあるから、もし痛みがひどくなるなら行くことも考えておこう。
下まで滑り降りて、もう1回滑ろうとリフトのほうに向かうと、まあまあな列ができていた。
どうやらさっきまでリフトが止まっていたらしい。ついさっき運転を再開したから、少し時間はかかるが集合時間までにもう1回は滑れるだろう。
リフト乗り場の時計を見ると、15時半を指していた。
今から並んでリフトに乗れるまでおよそ40分。
そしてリフトで上まで行くのに10分。
そして滑るのに10分ちょっと。
集合時間は17時。多少の遅れを加味しても間に合うだろう。
そう思い、俺はリフト乗り場の列に並んだ。
めちゃくちゃ不定期ですので暖かく見守ってくだされ。