08 進捗
秘宝館からの帰り道、
ちょっとしんみり気分で宿に向かう俺たちふたり。
「もしかしたら……私も"つくも神"なのでしょうか」
「それなら、司法省のデータベースに、私に関する情報が何も無かった理由も……」
"つくも神"でも"勝利の女神"でも、マーリエラさんはマーリエラさんです。
もし"つくも神"の国のお姫さまだったとしても、勝手に帰ったりしたらダメですよ。
地の果てまでだって追っかけちゃいますからね。
「……ノアルさんは、あちらの世界に帰りたいのですか?」
聞くだけヤボってもんですよ。
こんな楽しい毎日を放り出して、どっか行ったりするわけないでしょ。
……おっともしかして、ヤボなのは俺の方でしたか。
『また公衆の面前でイチャイチャしてる……』
いや、イチャイチャじゃなくて真面目な話しを、
って、おかえり、アンチさん。
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で、どうだったの、アシュトさんたち。
少しは進展してた?
『進展っていうか、アレ以上進みようがないっていうか』
その心は?
『もうとっくに夫婦してるってこと』
『「一人前も何も、足りない部分を補い合うのが夫婦なのですよ」って、マルミさん笑ってたし』
『「俺が心底納得出来るまでは、このまま修行の旅は続くってことだよね」って、アシュトさんも笑ってたし』
『とにかくっ、心配して損したっ』
えーとつまり、アシュトさんたちが今やってるのは、
旅商人修行っていうより、そのものズバリ新婚旅行ってこと?
『どっちかって言うと婚前旅行、かな』
『プロポーズ、まだみたいだし』
なるほど、さっぱり分からん。
とりあえず、あのふたりは生暖かく見守る方向でOK?
『全然OK!』
はい、お疲れさまでした。
アンチさんは、ゆっくり休んでくださいな。
それじゃ後は、俺とスーちゃんの修行ですね。
一度老師と相談して、今の俺の素の実力を測ってもらおうかな。
一人前なんてまだまだ先だけど、修行の区切りはつけないと、いつまで経ってもぶらり旅出来ないよね。
じゃあ、先に俺の方を片付けるってことで。
スーちゃんは、後で俺が連れてくるから、
今は修行に集中出来るよう、そっとしておこうね。
あれ?
そういえば、なんでアンチさんひとりなの?
アシュトさんたち、エルサニア王都の近くまで来てたはずだよね。
『なんか、業界最大手のキャラバンがジオーネの街で新型魔導車両の発表会するっていう噂を聞いた途端、大急ぎでそっちに行っちゃった』
『マルミさん、呆れてたよ……』
ほほう、新型魔導車両ですか。
確か、魔導のチカラでビュンビュン走るお馬さん入らずの馬車だよね。
俺もちょっと見たいかも……
『おや、私のお馬さんモードではご不満ですかっ』
とんでもございませんっ。
えーと、魔導車両うんぬんはともかく、
俺たちもそろそろ幌馬車旅かな、なんて……
「今度、みんなでじっくり話し合いましょうね」
「でも、まずは修行のケジメ、ですよ」
はい……