19 サプライズ
ただ今、『シマムリャ』にてのんびり旅の道中。
のんびりなのは、快速でスッ飛ばせない理由があるからですよ。
「パパ、もっとはやくっ」
駄目駄目、あまり急ぐと危ないでしょ。
「お父さん、おなかすいた……」
ゴメン、もう少ししたら野営の準備するから、ちょっとだけ我慢してね。
てな感じの、のんびり子連れ道中なのです……
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ぶらり旅の準備も整えて、いよいよ今日は出立っていう日の朝。
ヴェルクリの宿、ベッドで目覚めた俺とマーリエラさんの間に、
可愛らしい女の子ちゃんたちがすやすやと。
歳の頃なら3歳くらい、
真っ白な髪と真っ白な肌の、
それはそれは可愛らしい双子ちゃん。
マーリエラさんはすぐに気付いたようです。
例のナイフの"つくも神"、爆誕!
神さまっていうか、女の子ちゃんでしたか……
その後、目覚めたふたりにいろいろ聞いてみました。
言葉使いは、この歳頃の子供とは思えないほどしっかりしたもの。
記憶の方は、ナイフだった頃の思い出は少々あやふや。
マーリエラさんがママで、俺がパパなのは、確定事項のようです。
めっちゃ懐かれてますし。
そしてどうやら、今はナイフの姿には戻れないのです。
つまりは俺、いきなりお父さん家長。
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というわけで、急遽予定変更。
ぶらり旅なんてやってる場合じゃ無いのですよ。
この子たちのためにも、落ち着いて子育て出来る環境を探さねば。
で、緊急家族会議の結果、
目指すはアルセリア王国。
正直、俺たちとエルサニアとの揉め事に、あの平和な国を巻き込みたくはなかったけど、
今イチバン優先すべきは、この子たちの平穏な暮らし。
そんなわけで、快速チャリオットの『シマムリャ』は、
のんびりとアルセリア王国に向かっている次第。




