16 王
気配も無く現れたのは、
最強の武人にして現エルサニア国王、
ライクァ王、その人。
「多大な迷惑を掛けたこと、直接詫びたかった」
……お気遣い無く。
ご存知かと思いますが平民の召喚者ですので、
無礼な言葉使い等、ご容赦の程。
「構わん、素直な胸の内を聞かせてもらえれば、それで良い」
恐れ入ります。
「最近の王子たちの振る舞い、目に余るものがある」
「だが、所詮一介の武人上がりの王、至らぬことばかり、なのだ」
その辺りは、それこそ俺なんかがどうこう言えることでは無いです。
今、知りたいのは、俺たち家族の今後についてのみ、ですから。
「すまん、つまらぬ愚痴を聞かせてしまった」
「今回の件で、ノアル殿にもご家族にも、エルサニアとして責を負わせることは、一切無い」
「これは、我が誇りにかけて、約束する」
いわゆる旧女王派を、完全に抑え込めるのですか。
「確かに王宮内で孤立した王ではあるが、誇りを持って共に歩んでくれる者も少なからずおる」
「それに、武によって成り上がった王なればこそ、出来ることもある」
「今は、信じて欲しい……」
……分かりました。
この件は無かったことに、で、よろしいのですね。
「心遣い、感謝する」
「しかし、ノアル殿のような方を"低職"させるとは、召喚者に関する全てを見直さねばならぬ、な」
出来ればこれ以上、召喚者関係の厄介事を増やさない方向でお願いします。
そもそも今の俺たちの世直し旅も、エルサニアがいたずらに召喚し続けたことが原因なのですよ。
「エルサニアが今のままであろうとするなら、避けられぬことと、分かって欲しい」
「ノアル殿なら、この国を変えられるやもしれんが……」
ご勘弁の程……
家族を守るので精一杯ですから。
「私は……守れなかった」
「この想い、ノアル殿なら分かってもらえようか……」
……歪みを正す旅、それしか出来ませんよ。
「……長々と済まなかった」
「王として、出来ることは全てやる」
「もし手のひらからこぼれ落ちたら、遠慮無く踏み潰して欲しい」
「では、ご家族の皆様も、達者で」
---
行っちゃった。
チビらなかっただけでも、褒めてほしいよ。
何せ身長2.5m越えの最強武人の王様と、
真っ向から向かい合ったんだよ、俺。
「ご立派でしたよ」
『惚れ直したっ』
『……』
……みんな、ありがとね。
正直、ナニ話したのかすら、よく覚えてないんだけど、
エルサニアからは指名手配されなかったってことで、合ってるよね?




