14 運命
胸から下はぐちゃぐちゃにブッ飛んだけど、
まだ生きてるね、若造。
この"G"並みのしぶとさは、たぶん首のチョーカーみたいな魔導具のおかげ。
マーリエラさんとアンチさんは、拘束魔法から解放されたようです。
ふたりとも、身体は大丈夫ですか?
『私は平気』
『『重力』とやらで潰されそうになったけど、見っともない格好見せらんないし』
乙女の心意気、だね。
「もしや、エルサニアの第二王子キヤノム様、でしょうか」
なるほど、モロに王家の者、ですな。
お噂通りのわがまま王子さまだったわけだ。
「新しく支給された新型複合魔導具には『状況記録』機能がありますので、私たちに非が無かったことは証明出来ますが……」
とりあえず、司法省本部に連絡して、生きてるうちに若造の残骸を回収してもらいましょ。
こんなんでも王子さまなんだろうし。
俺たちは早いとこスーちゃんと合流して、エルサニア王家との厄介ごとに備えなきゃ。
マーリエラさんは連絡関係、
アンチさんは見張りをお願い。
俺はスーちゃんを迎えに行ってきます。
くれぐれも、そこのばっちいのには近付かないでね。
『……』
スーちゃん!
……そっか、さっきの騒ぎで驚かせちゃったんだね。
旅に出るから迎えにきたのに、余計なのがくっついてきちゃってさ。
ごめんね、出発が遅れそうだから、もうちょっとだけ待っててね。
『……』
アイツを眠らせてくれたんだ。
優しいね、スーちゃん。
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それにしても、何だかちょっと運命ってヤツを感じるかも。
ラジカリモさんからいただいた短槍、
まさに対馬鹿王子用兵装だったのですよ。
とある頑固な鍛治師さんが、鍛治職人の誇りを賭けて精魂込めて打った逸品。
魔導やら付与やらが大嫌いな親方は、
鍛治のチカラのみでの最強を目指したそうです。
魔法大嫌いな親方から生み出された短槍は、
あの通りあらゆる魔法をハジく業物となり、
馬鹿正直な指差し魔法攻撃しか出来ない馬鹿王子だからこそ、
俺でも射線を読んで防ぐことが出来たわけで。
……出来れば、二度とゴメンですけどね、こんな運命。




