11 馬車
てな感じで、俺の修行もひと段落。
それではいつものように、各自、旅支度開始。
マーリエラさんは、秘宝館に行ってラジカリモさんにご挨拶。
次に会うときは"つくも神"同伴、かな。
アンチさんは、長旅用の物資買い出し。
それと、幌馬車の見立てもお願いしました。
お馬さんモードのアンチさんが扱いやすい幌馬車は、本人に選んでもらうのが一番ですから。
俺は、巡回司法省エルサニア王都本部へ。
今回みたいに書類仕事でお呼ばれされて旅を中断させられるのは困るってゴネに。
何か、凄い上の方の人が対応してくれて、少しびびった。
これからは旅に集中出来るよう、専属の使い魔に配達仕事させます、ですって。
流石はマーリエラさん、凄腕司法官は本部からも期待されているのですね。
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待ち合わせ場所は北門前広場。
集合したらすぐに出立して、スーちゃんを迎えに行きましょ。
『こっち!』
おっと、アンチさんから『念話』ですよ。
って、何アレ!
お馬さんモードのアンチさんの後ろには、
二輪で立ち乗りの戦馬車。
えーと、アレは確か、チャリオット。
綺麗な銀色の金属製だから、
シルバーチャリ……
『カッコいいでしょ!』
うん、確かにカッコいいけど、
出来れば普通の幌馬車の方が……
『こっちの方が強そう!』
うん、確かに強そうだけど、
乗り心地やら居住性やら……
「司法省の最新型魔導馬車ですよ」
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マーリエラさんによれば、俺たちのこれまでの任務達成への功労的ご褒美 兼 今回寄り道させたことへのお詫びの品、だそうです。
『試作型 魔導補助転輪 無牽引兼用 略式車両』
通称:『シマムリャ』
あー、何となく召喚者が関与してるっぽい……
まあ、それはともかく。
現在、巡回司法官の緊急出動の際は『転送』魔法が使われているそうですが、
何せレア魔法ですので、使える人数が限られているのです。
で、さほど緊急性の求められない事案に対応する高速移動手段が欲しいと現場からの要望が。
開発部署の解答が、コレ。
一頭立て馬車としても、これ単体で魔導車としても使える高速車両。
新開発の試作型魔導サスペンションシステムで、荒れた道でも快適に高速走行。
これ自体は非武装ですが、大容量『収納』トランクで必要な装備を迅速に現場投入可能。
立ち乗り馬車に見えますが、格納された座席でゆったりドライブも出来ちゃう。
なんかスゴいのを貰えたんだけど、ちょっと後が怖いかも。
現場急行任務が増えちゃったり。
「大丈夫ですよ、在庫品の有効活用だそうですので」
在庫?
開発部署が採算度外視でやれるだけのことを試みたコレは、
試乗した現場の方々には大好評だったそうですが、
予算の壁には勝てなかったそうで。
つまりは、量産計画頓挫。
で、倉庫で眠らせておくくらいならと、俺たちに支給されたのですね。
「開発担当の方々は、維持費は気にせず楽しんでください、と」
おっと、維持費ですか。
魔導具としての各部分は、作動のためのエネルギー源として定期的な魔石の補充が必要だそうで。
量産計画の妨げになったほど大量の……
「維持費の方は、全て司法省にお任せ、だそうですよ」
むう、新車は嬉しいのですが、
なんだか、首輪をつけられたような気分……




