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「黒炎の隼」  作者: 蛙鮫
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「立つ鳥跡を濁す」

 隼人は床を強く蹴り、忌獣に向かっていく。


 相手はただの忌獣。今まで刈り取ってきた連中と同じなら彼の実力を持ってすれば即座に片付ける事が出来る。


「ゲルルル!」


「殺す! 殺す! 殺す!」

 忌獣の攻撃を交わして、一瞬で首を刈り取った。その勢いで近くから襲いかかろうとしていたもう一体の四肢を落としていく。


 何度も刀身を振っていく毎に刃が赤く染まり、滑りけを帯びた。



「ギャオオオ!」


「うるせえよ」

 隼人は普段より遥かに低い声で呟いて、首を落とした。残り二体。近くでは結巳が忌獣二体と交戦している。


氷結斬撃アイススラッシュ!」

 冷気を纏った斬撃が忌獣の体を切り裂いた。切られた部位から凍結して、忌獣の動きが鈍くなった。


 隼人は生きているもう一体に目を向けた瞬間、その忌獣が触手を伸ばした。隼人ではない。


 隼人が討伐した忌獣に向かって伸ばしたのだ。そのまま、搦め捕りなんとそのまま取り込んだ。


 そして、ついで言わんばかりに結巳が攻撃していた忌獣にも触手を伸ばして、取り込んでしまった。


 忌獣が混ざり合い、一つの姿になった。


「オオオオオオオオオオオオ!」

 巨大化した忌獣。その姿はなんとも醜悪な姿だった。四本を首と所々から出ている触手。


 その悍ましい姿は隼人に不快感を抱かせるには十分だった。


「体も声もでかくなりやがった」


「早く討伐しましょ!」

 聖滅具を構えた瞬間、凄まじい速度で迫ってきた。その驚異的な速度に目を疑った。


「四体合体したからその分、身体能力も上がるってか」


「ギャオオオオオオオオ!」

 忌獣が叫び声を上げてこちらに向かってきた。隼人が剣を構えると突然、目の前に誰かが割って入り、忌獣の攻撃を防いだ。


「お困りのようだね。松阪君」


「早見先輩」

 そこにいたのはメイド服姿の早見だった。どうやらそのまま来たようだ。


「松阪君。聖堂寺さん。都市部に忌獣が多数出ているらしい。二人はそっちに回って。ここは私がやる」


「本気ですか?」


「私は元学園最強だよ? それに私一人じゃないからね」

 早見が屋上の扉の方を指差した。そこには炎使いの赤間や他の戦闘員達が臨戦態勢で立っている。


 心配は無用。隼人は確信した。


「ご武運を」


「早見先輩! お願いします!」

 隼人は結巳と早見に一礼をして、屋上を出た。


「さて。学生生活最後の文化祭。めちゃくちゃにしてくれたツケ。払ってもらうぞ!」

 早見が怒気を孕んだような声をあげた。その姿からは普段の冷静沈着さはか程も感じられなかった。


 階段を降りた瞬間、後方が凄まじい騒音に包まれたのを感じた。




 階段を降りる最中、校舎内で大勢の人々でひしめき合っているのが見えた。


 恐怖のあまり肩を震わせる者。涙を流す者。先の一件に対する反応は皆、似たような反応だった。


 例外なく恐怖を味わっている。怪我をしている人も何人もいて、心身ともに酷いダメージを負っているのが理解できた。


「酷い光景ね」


「ああ。許せない」

 腹の底から怒りが再び、音を立てて煮えたぎり始めた。隼人と結巳は大急ぎで街に向かった。





「こっ、これは」

 たどり着いた時、そこはまさに戦場だった。あちらこちらから聞こえる怒号に似た叫び声と爆発音。 


 無数の忌獣が戦闘員達と激しい戦闘を行なっていたのだ。そこら中に戦闘員や忌獣の遺体が転がっている。


 すると隼人の視界に唾液を垂らした忌獣の姿が映った。忌獣の視線の先には幼い男の子と女性。おそらく母親だ。


 肩を震わせて、忌獣の攻撃に怯えている。


「させるか!」

 隼人は韋駄天のような速さで忌獣の元に飛び込んでいった。


「げりゃあああ!」


「グオオオオオオオオオ!」

 聖滅具で斬りつけていく毎に忌獣が悲鳴をあげて、倒れていく。


「ここは危険だ! 早く逃げろ!」 

 隼人は親子に逃げるように声をかけると二人が頭を下げて、その場所を去った。


「さて。残りのやつも一斉掃除だ」

 隼人の目に殺意によって火力が増した復讐の炎が揺れた。血と錆びた鉄のような臭い。


 それらに身を包みながら、敵を殲滅しようと刀身を振っていく。彼のそばでは結巳が端正な顔を崩して、必死の形相で忌獣を裁いている。



「ゲルルル!」

 物陰からカエルのような忌獣が舌を伸ばして、結巳を捕らえてしまった。


「聖堂寺!」

 隼人は結巳を助けようとした時、突然彼女を捕らえていた長い舌が血飛沫を上げながら落ちた。


 その近くには刀を持ったフードを被った人物が立っていた。


「ふん!」

 フードがその手に持っていた刀で忌獣の体を瞬く間に切断してしまった。


「あ、ありがとうございます!」


「気をつけて、忌獣はまだまだいる」

 フードを被った人物がそう言い、暴れている忌獣を討伐しに行った。顔はわからないが、なかなかの実力者だ。


「よく分からないけど敵じゃなさそうだ」

 隼人はフードの人物に考えつつも、忌獣討伐に臨んだ。逃げ惑う人々を忌獣から守り、首を切り落とした。


 隼人達の近くではフードの人物が見事な剣捌きで忌獣を圧倒している。


 そうしている内に都市部で猛威を振るっていた忌獣達を掃討する事に成功した。


「終わった。あんたもありがとう」

 フードの人物に礼を言おうとしたが、気付くといなくなっていた。



「どこかに行ってしまったわね」


「いないか」

 隼人は地面に座り込んだ。忌獣を殺し慣れているとはいえ、あまりにも数が多かった。


「なんとか倒せたけどよ。これだけの襲撃を許したんじゃ国民の対策本部への信頼する可能性があるな」


「ええ。最悪よ。こんなの」

 結巳もショックだったのか、隼人の横で腰を下ろした。文化祭を荒らされて、都市部にも甚大な被害を与えられた。

「くそっ!」

 戦いに勝ったが、なんとも口にしがたい悔しさが心に染み渡る。




 都市部から少し離れたビルの屋上。中性的な顔をした白髪の青年が悲鳴と混乱に包み込まれた都市部を見つめていた。


「これで対策本部は終わりを迎える。次は私の番だ」

 青年は一人、これから起こるであろう惨劇を思い、静かに笑みを浮かべた。


ありがとうございました!

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