「繋ぐ想い」
騒然とする戦場。隼人は呼吸を落ち着かせながら、地面に倒れる光を見つめていた。
「こんな事になるだなんて。数年前まで夢にも思いませんでしたよ」
冷気を纏った光が虚ろな目で歪んだ笑みを浮かべた。
「松阪隼人。貴方なら知っているはずです。失う怖さを。それがこれからも続いていくのですよ? 貴方にそれを耐えることが出来ますか?」
光が口の端から血を流しながら、言葉を吐き出していく。血とともに吐き出す彼の想いは隼人の心に響くものがあった。
「怖い。時々、思っちまうよ。前みたいに無くなってしまうんじゃないかって。でも今はその恐怖に立ち向かう勇気を持つことは出来た。それはあんたの妹や学園や対策本部のみんなのおかげだ」
隼人は口元に笑みを浮かべた。光にかけた言葉に嘘はない。鷹と会えなくなったように失ってしまうのではないかと、考えてしまう時がある。
それでもゆっくりと人と距離を縮めていく事で人と繋がる喜びを徐々に思い出していったのだ。
「確かに悲しいです。親しくしていただいた戦闘員。お父様が亡くなった時、そのどれもかも胸が張り裂けそうになった」
結巳も隼人に続いて口を開いた。心の闇に囚われた兄を救い出したい。彼女の目を見ているとそんな強い意志がありありと伝わってくる。
「でも亡くなった戦闘員の皆さんも意志や願い、想いは私達の中で生き続ける。記憶が覚えている。偽善に聞こえるかもしれません。でも兄さん。私はあなたを失いたくない」
結巳のまっすぐな瞳が光に向けられた。激闘の後とは思えないほど落ち着いた空気が周囲に流れている。
「亡くなっても想い続けるか。私もそう思えればよかったかもしれませんね」
光が重そうな体を起こして、懐から一枚の写真を取り出した。
「それは」
隼人はその写真の女性に見覚えがあった。
綾川春華。文化祭の前日。卒業生の写真の中で見た女性だった。
「彼女への想いから全ては始まった。そして、彼女への想いを抱いて終わる」
「兄さん」
結巳が悲しげな表情を浮かべていると周囲から殺気を感じた。辺りの床から忌獣が這い出てきた。
「くそ。忌獣が」
隼人と結巳は光に背を向けて、戦闘不能な彼を守る態勢に入った。忌獣が唸り声をあげながら、ゆっくりと進んでくる。
疲労を感じているがここで光を見捨てる理由にはならない。
「邪魔ですよ」
耳元から光の声が聞こえた瞬間、隼人は襟元から持ち上げられて、結巳と共に別の方向に投げ飛ばされた。
「なっ! 聖堂寺さん!」
「兄さん!」
「結巳。さようなら」
光が穏やかな笑みを浮かべていた。その笑顔からは普段、見ていた嘘っぽさは感じられなかった。
その直後、血飛沫と忌獣が彼の姿を隠した。
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