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「黒炎の隼」  作者: 蛙鮫
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『プロローグ』

カクヨムでも連載していたローファンタジーです。是非ともよろしくお願いします!


『速報です。A地区の森で『忌獣いじゅう』が出現しました。周辺住民の皆さんは速やかに避難してください』


 カラスの鳴き声が響く夕方。松阪隼人まつさかはやとの携帯端末に緊急速報が入った。


「ここから近いな」

 隼人は近くにあった竹刀袋から中身を取り出して、A地区の森へと向かった。




 静寂な空気が漂う夜の森。静けさを振り切るように装甲車がかけていた。重装備をした男性達とその中に白髪の少女がいた。


 車内には言葉にできないくらい張り詰めた空気が漂っている。


「隊長。間も無く現場に到着します」


「分かった。総員! 戦闘準備! 『忌獣対策本部いじゅうたいさくほんぶ』の力を思い知らせるぞ!」


「はっ!」

 隊長の掛け声と共に周囲の男性達が一気に取り掛かる。現場につくと結巳に続いて、武装した男達が次々と降りて行く。


 虫の音が一つも聞こえない暗黒の森。戦闘員達の息遣いのみが聞こえる。


 すると突然、何かが飛び出てきた。野生のイノシシだった

「なんだ、イノシシかよ。ビビらせんなよ」


 一同の深く嘆息をついた。張り詰めた空気が僅かに和んだ。しかし、隼人は先ほどから一切、警戒を緩めていない。


「いや、変だ。このイノシシ」


「何が」


「瞬きを一切、していない」

 よく見るとイノシシが微動だにしない。瞬きすらせず、その場で静止している。


「死体か? いや死体だというなら何故、さっき飛び出て」


 隊長の言葉が決め手となったのかイノシシの頭部がゆっくりと上に上がっていく。視線を上げていくと同時に戦慄した。


「ギャオオオオ!」

 忌獣だ。イノシシの下半身を加えた忌獣がそこにいた。体長は五メートルほどの大きさ。


 黒い肢体。サバイバルナイフのような鋭利な爪と牙と鞭のようにしなる尾。四つん這いで焦点が定まらない目でこちらを観察している。


 ターゲットがイノシシを一口で飲み込むと、結巳に血みどろの歯を見せながら、

耳を塞ぎたくような咆哮をかけた。口から生臭い血の匂いと獣臭が漂って来る。


「総員! 聖滅具ヴァジュラを展開せよ!」

 隊長の怒号に似た叫びをあげた瞬間、一同が一斉に武器を取り出した。ある戦闘員は剣のような武器。その隣は拳銃のような武器を構えている。


 対忌獣用の武器『聖滅具ヴァジュラ』この組織なら誰もが使っているものだ。


「戦闘開始!」


「おおおおおおおお!」

 隊長の叫びとともに戦闘員達が一斉に声を張り上げた。一人の戦闘員が聖滅具を振り上げた。


「喰らえ!」

 刀身から燃え盛る炎が吹き出て、赤い刃で忌獣を斬りつけた。


「ギャオオオオオオオ!」


「まだだ! 手を緩めるな!」

 戦闘員達が悲鳴をあげる忌獣を容赦無く攻撃して行く。彼らは刀身から炎や電気を纏わせながら、徐々に相手を弱らせる。


「追撃だ!」

 隊長の命令とともに拳銃型の聖滅具から次々と発砲音が聞こえた。続けて攻撃を繰り返して、希望が見えた矢先絶望に叩き落とされた。


「グオオオオオオ!」

 忌獣が突然、鼓膜が破れそうな叫び声をあげて、なりふり構わず戦闘員の方に突っ込んできたのだ。


「総員! 周囲に広がれ! 撹乱させるんだ1」


「うわああああ!」

 隊長の必死な指令も虚しく、戦闘員の一人が忌獣に頭から食われた。骨が砕ける音と歯の隙間から吹き出る血が戦闘員の死を意味させるには十分な判断材料だった。



「総員! 撃てー!」

 隊長の命令で周囲の戦闘員達が一斉に発砲し始めた。薬莢の匂いと鳴り響く銃声。静けさ漂う森は戦場と化していた。


「グオオオオオ!」

 忌獣が銃弾を受けながらも、叫びながら隊長達の元へと走ってきた。


「ぎゃあああああ!」


「ぐああああ!」

 戦闘員達が次々圧倒的な怪力で吹き飛ばされて行く。先ほどまで銃弾で空いていた穴も塞がっている。


 強力な再生能力を誇っている忌獣ならすぐさま元に戻ってしまうのだ。

「グルルル」


「ゲルルル」

 別の方向から聞き慣れた鳴き声が聞こえた。声のする方に目を向けると別の方向の茂みから忌獣二体が出てきたのだ。


「二体! さっき叫び声で呼び寄せたのか!」


 隊長は完全に囲まれてしまった。周囲では蹲って立ち上がれずにいる戦闘員やもはや行きすらしていない仲間。


「グアア!」

 一体の忌獣が唾液を垂らしながら、隊長に襲いかかってきた。



 すると忌獣の頭上から刀を持った人影が姿を現した。


「えっ?」

 するとその人影の持つ刀から突然、赤黒い炎が出てきて、目にも止まらない速度で忌獣の首を切りつけた。


 忌獣が白目をむいて首と胴がゆっくりと離れていく。


 隊長は驚きのあまりに空いた口が塞がらなかった。その存在はフードを深く被っており、素顔は見えない。

「ギャオオオオオ!」


「グロロロ!」

 同族がやられたことに反応したのか、忌獣達がフードの元に走って行く。彼は目を疑った。フードを被った者がたった一人で忌獣と戦っているのだ。


「はああ!」

 フードが声を張り上げて、忌獣の攻撃をかわしながら斬りつけて行く。あまりにも壮絶な光景に隊長はただ、目を見開いていた。


 瞬く間に忌獣達は殺され尽くされて、ピクリとも動かなくなった。


「君は」

 隊長は彼の正体を訪ねようとした時、突然、森の中から装甲車が三台飛び出してきた。増援だ。


 装甲車が停車すると一斉に中から武器を構えた戦闘員達が飛び出してきた。


「動くな!」


 駆けつけた増援の戦闘員達が一斉にフードを取り囲んだ。


ありがとうございました!

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