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異世界に転移した日本で生きるオタクの話  作者: 山田太郎
第一章
29/32

アニメで学ぶこともある

 アルヴン国立闘技場。

 世界樹の頂上に建てられたその建物は今では異世界に置いてもこっちの世界で言う重要文化財扱いで公的な決闘などが行われる時以外は王族でも入ることが禁じられている。

 そんな説明を陽奈と一緒にいたマリアンヌに聞いて零は今ここに立っている。


「逃げずに来たようだな」

「いや、まぁ、来ますけど・・・」


 零とオベロンが入った瞬間入り口は無くなり閉じ込められた。上の観戦席では貴族達が野次を飛ばしている。貴族と言うのはもっと高貴で紅茶でもおシバきになっているものと思っていたがアニメなどでよく見る腐った貴族のように嘲笑い自分より地位が低い者に罵声を浴びせるようだ、と零が呆れたように笑う。

 ついでに零が後ろの席を見てみれば最前列で自分を心配そうに見つめる皆の姿が見えた。皆と言ってもその場にルリは居ないらしく姿が見えない。

 対してジャンヌは明らかに位が高いであろう者が座る席に一人で座っている。


「褒美として君にハンデをあげよう。先に攻撃したまえ」

「あ、はい。わかりました」


 零はその提案にすぐさま水魔法をオベロンに向けて放つ。しかしオベロンはそれを軽々しく後ろに跳んで避ける。


「やはり、人間の魔法ではその程度か」


 ムカつく言い方ではあるが零の適性は低いので言われても仕方はない。

 続けて零は再び水魔法を放つ。しかしまた余裕で避けられてもはやヤケクソであちこちに水魔法を放つ。


「もう終わりか?なら、次は私の番だ」


 そう言うとオベロンはその場に雷を残して姿を消す。零は何処に行ったのかあちこち見渡すが見えない。


「遅いぞ!」


 後ろから声が聞こえて零が振り向くと既に王子は腰に携えていた剣を大きく振りかぶっていた。

 零は直様後ろに避けようとしたが間に合わずに頬を斬り裂かれた。


「イッテェェェェェェェ!!!」

「この剣は使用者の魔力によって属性が付与されるアブトレトング鉱石製でな。雷属性を付与させれば小刻みに刃が震え切れ味が増す」

「ご丁寧にどうも!」


 零は地面の砂を掴み王子の顔面に投げつける。オベロンが少し怯んだ隙に急いで零はオベロンから離れて水魔法を放つ。

 

「逃すか!・・・!?」


 オベロンが砂を払って零を追おうとすると周りの水浸しになった地面に脚を取られて動きが鈍る。


「えぇい!鬱陶しい!」


 オベロンが雷魔法で辺りに雷を降らす。すると地面の泥が一瞬で乾く。

 

「知っていたか?電気は水を蒸発させられる」


 零は再び走り出し雷を避けながら水魔法を放つ。その合間に土魔法や風魔法を放ってみるがオベロンの剣から放たれる超電磁砲とも言える雷魔法が零の魔法を消し炭にして零に襲いかかってくる。

 零はすぐさまその場を離れようとするが脚の腱を焼かれてしまった。

 地面に倒れ込みオベロンを睨む。


「終わりだ」


 オベロンがゆっくりと零に近付いて行く。それを見て零は自分の手を地面につけ初級土魔法のロックウォールを発動させる。

 ロックウォールがオベロンを包み込む。


「こんな物で私を閉じ込めたつもりか!」


 ロックウォールを破壊しようとオベロンが剣を振り上げた時だった。

 オベロンの頭から大量の水が流し込まれた。


「魔法の同時発動だと!?」


 オベロンは少しだけ驚いた顔を見せるがすぐにそれは笑みへと変わる。

 魔法の同時発動はその分魔力を多く消費する。魔力が乏しい人間が使えばすぐに魔力は無くなってしまう。


「溺死を狙うつもりか?学習しないヤツだな!」


 溜まっていく水をオベロンは次々に消して行く。しかしそれでもまだ水は流れてくる。


「無駄無駄無駄無駄ァ!魔力量は私の方が上なのだ!このまま続ければお前の魔力の方が先に尽きるぞ!」


 オベロンの宣言通りしばらくすると水が止みオベロンはそれを好機とロックウォールを破壊する。

 そして破壊すると同時にオベロンの目に飛び込んできたのはロックウォールに右手以外を包まれた零の姿だった。


「昔よぉ〜。俺ポ◯モンの映画見てたんだよな〜・・・。ル◯ア爆誕ってタイトルなんだけどよぉ・・・。『みずてっぽう』と『10万ボルト』、『かえんほうしゃ』の同時撃ちで大爆発したんだよ。そん時は小さかったし技が激突して爆発したと思ってたんだ」

「何を・・・」

「ついでに言うとさぁ。アンタさっき自慢げに電気は水を蒸発させるとかほざいてたけどさぁ、全然違ェ。アンタがやったのは蒸発じゃなくて電気分解。水を酸素と水素に分解したんだ」


 何を言っているのか分からないと言う顔を見せるオベロンに対して零は再び言葉を続ける。


「さらに言うなら水素にゃ火を付ければ爆発する性質がある」


 そして、オベロンに今の状況を理解させる最後の言葉を零は送る。


「アンタさっきから随分電気分解してたよなぁ?なら、そこかしこにあるはずだよなぁ、水素がよぉ!」


 零のやろうとしていることが理解できたのかオベロンの顔から血の気が失せ次第に青くなっていく。


「ま、待て!分かっているのか!?今それをすればお前の右手は・・・」

「別にどうでも良いよそんなこと」


 オベロンの言葉を零は一蹴する。零にとっては右手が無くなるなど些細な問題ではない。

 今の零には目の前の敵を倒すことだけが全てでありそれ以外はどうでも良い。

 ジャンヌが自分の意思でアンタに嫁ぐなら零も何の文句もない。寧ろ祝福するつもりだった。結婚にはそれが必要だから。

 しかし、そうではなかった。目の前のオベロンはジャンヌの意思を介さずに無理矢理結婚しようとしていたのだ。

 だから何を犠牲にしても、例えそれが自分の右手だろうと零は放つ。


「ファイヤーボール」


 零の手から火の球が出たと同時に辺り一面が爆発を起こし、オベロンが立っていたその場で火柱を上げる。


「ど、どうなってん!」


 闘技場内が爆風で砂が巻き上げられ陽奈が目を凝らして闘技場を見る。

 次第に煙が晴れて来て二つの人影が見えてくる。

 一つは手首から先を失くし大量の血を流す零。もう一つはプスプスと身体を焦がしながら倒れるオベロン。

 この瞬間、勝負は決まった。


「旦那の勝ちだ!」


 健太の声に零を応援していた全員が湧き上がる。しかし、ここではそれはマイノリティであり、大多数の王子を応援していた貴族にとっては面白い物ではなかった。


「ふざけるな!こんなことがあってなるものか!」

「ズルだ!ズルに決まっている!」

「その通りだこの卑怯者めが!」


 まるで良識のない野次が飛びしきるなか、一つの声が響き渡る。


「辞めんか馬鹿者どもが!」


 一瞬で静かになり全員が声の主に視線を向ける。

 そこに立っていたのはジョニーに背負われながら杖をブンブン振り回すエルフィン・タイタニアだった。


「旦那様!?」

「エロジジイ!?」

「貴様らは己が目に映る真実すら否定するのか!?現実を見ろ!王子は友を助けるために立ち上がった者達に敗れ地に伏した!」

「ふざ・・・けるな!」


 ざわざわとどよめき立つ中気を失っていたオベロンがゆらゆらと立ち上がる。


「父が、王が亡くなった今、この国を引っ張れるのは王子である私しか居ないのだ!その私が今ここで負けたらこの国はどうなる!?」


 零もすぐさま立ち上がろうとするが脚の腱が焼かれてしまっていて動くことができない。


「力が、技術が必要なのだ。魔導兵器の破壊力に、何処の国よりも発展した日本の技術力。この二つさえあればアルヴンはより安泰となる」

「その為に無関係な人間まで攫たのか!?」

「爺さん暴れんなバランスが崩れる!」


 オベロンはエルフィンとジョニーを見て薄ら笑いを浮かべる。


「今更もう止まることはできない!幸い光と闇の魔力も、不沈の指輪も全て揃った!」


 オベロンが飛び上がりジャンヌさんの隣に立つとジャンヌがゆっくりとオベロンの薬指に不沈の指輪を嵌める。

 次の瞬間地面が揺れて零は体勢を崩して地面へとへたり込む。

 そして闘技場の外から音が聞こえたと思うと外から大きな鉄のロボットが現れた。

 二足歩行ではあるのだが人形と言うには戦車のキャタピラ部分を足に変えたようなフォルムで右手のような部分には巨大な砲門、左手は人のような形をし頭の部分はまるでサメのような形をしており。それに零は見覚えがあった。


「おい、おいおいおいおい!誰だよこんなの作りやがったのは・・・!?コイツはメタ◯ギアじゃねぇか!しかもなんかオリジナリティ付け加えてやがる!」


 とある有名なゲーム。零から言えば「小島 is god」としか言いようのないほど好きなゲームに出てくる核搭載二足歩行型戦車。それが今零の目の前にあった。

 もはや零には疑問などは通り過ぎて興奮しか無かった。


「目覚めてしまった・・・。勇者の力・・・」

「勇者の力?ご老人、あれはいったい?」


 近くにいた総理がエルフィンに尋ねる。


「あれは勇者様が趣味で作られた魔導兵器。その名もメガロギア!」

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