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異世界に転移した日本で生きるオタクの話  作者: 山田太郎
第一章
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結婚式を、ぶっ壊す!

 式場に到着してしばらく俺たちは周りに置かれた料理を口にしていた。

 この結婚式は街一番であろう教会で行われているのだが、何故か様式がパーティのような感じでバイキング形式の物となっていた。


「ルリ、遠慮はいらねぇ。ここにあるの以外は好きに食べていい」

「マジなのだ!?」

「マジだ。周りのいけスカねぇ金持ちども泣かせてこい」

「アイアイサーなのだ!」


 ルリが食べ散らかすのを見守りながらナイフとフォークで肉を食べながら周りの貴族に挨拶回りをしている総理を見る。

 人間という事で見下され門前払いはされているが諦めずにまた別の貴族に頭を下げる。


「大人ってなんであんなヘコヘコするんだろうな?」

「そりゃご機嫌取りでしょ。旦那だって学校の不良に絡まれたら全力で土下座するでしょ?」

「学校のヒエラルキー最底辺のやる事だな」

「その最低辺のムーブをかましているのが旦那でしょ」


 図星を突かれて少し手を振るわせながら肉を口に運ぶ。


「で、それを拡大したのが今の総理の状況ですね。強い人には目を気に入られるようにご機嫌取り。逆に弱い相手からは上から搾取する」

「俺も総理もんなことやってねぇよ」

「あくまで一部の奴ですよ。旦那や総理がそうだって言ってるわけじゃありません」


 つまらなそうに料理を突きながら健太が話す。

 妖怪にも縦社会が存在する。尻目や鳴釜などあまり知られていない低級妖怪、河童や天狗などそこそこ知られて有名な中級妖怪、鵺や鬼など昔の巻物などに出る上級妖怪。

 上の級になるほど位が高く下の級は決して逆らえない。


「で、結婚式はいつ始まるんです?」

「もうじきだろ。姉ちゃんとノワール先生も定位置に付いてるし・・・」

 

 式場の入り口でワインを飲んでデロンデロンになっている姉ちゃんと薄ら笑いを浮かべながら剣を磨いているノワール先生。

 作戦前と言うのに目立ちまくる二人に疑いの目を向けるのは間違っているのだろうか?いや、間違ってないだろう。

 ちょっと注意してやろうと席を立ち上がろうとした時、式場が暗くなる。


『皆様!お待たせ致しました!只今より我がアルヴンの王子、オベロンさまとその妃、ジャンヌ様の結婚式をはじめさせていただきます!』


 司会のその声と共に入り口に光が灯りそこにはジャンヌさんと王子が立っていた。


「新郎新婦の入場です。皆様、大きな拍手でお迎えください」


 周りから拍手が聞こえて仕方なく合わせて手を叩く。ジャンヌさんと王子が部屋の真ん中の赤絨毯歩いて牧師が立っているの前に立つ。

 その直前に俺は見てしまった。生気も何もないまるで人形のようなジャンヌさんの目を。

 

「えー、それでは汝オベロン・ビスマルク3世は、この女ジャンヌ・タイタニアを妻とし、 良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、 病める時も健やかなる時も、 共に歩み、他の者に依らず、 死が二人を分かつまで、愛を誓い、 妻を想い、のみに添うことを、 神聖なる婚姻の契約のもとに、 誓いますか?」

「誓います 」

「汝ジャンヌ・タイタニアは、この男オベロン・ビスマルクを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

「誓います」


 頭が真っ白になった。全くの澱みなく、機械的に発せられたその言葉はもう俺たちがどうにもできないようなところにジャンヌさんが行ってしまったことを意味していた。


「それでは、誓いのキスを」


 こうなってしまえばもう俺たちには結婚を祝うことしかできない。

 二人の唇が重なるのを黙って見守るしかない。そう思っていたのは俺だけだった。

 二人の唇が重なる直前で二人の間を通り抜け酒瓶が神父の額へと直撃する。

 周りから悲鳴や困惑の声が湧き上がる。

 酒瓶が飛んできた方を見れば酔った姉ちゃんがフラフラしながら立ちすくんでいた。


「うぃ〜ヒク。教育者として〜、未成年の生徒の結婚は〜、認められましぇん!ヒク」


 言われてみれば確かに、と納得しかけて入り口から入ってくる衛兵隊が視界に入ってくる。


「下等種族風情が!ひっ捕えろ!」


 衛兵が姉ちゃんに襲おうと飛びかかる。しかし、間に割り込んだノワール先生の一閃により衛兵隊が入り口へと押し戻された。


「剣を振る広さがあるならこちらの物だ!」

「旦那、アンタは本当にこれでいいんですかい?」


 スーツのジャケットをを脱ぎ捨てならが健太が俺にそう言う。


「確かに今のジャンヌさんは何の躊躇いもなく愛を誓いました。でもそれ以上にオイラでも分かるほど言葉に心がありませんでした」

「い、良いわけねぇよ。でも・・・」


 俺に何が出来る?姉ちゃんみたいな頭もノワール先生みたいな剣の腕も、健太みたいな力も、陽奈みたいな才能もない。

 そんな俺が今のジャンヌさんをどうにかできるとは思えない。昨日の晩にやったことを活かそうにも活かせそうにない。


「洒落臭いなぁ!」


 聞き覚えのある声と喋り方に俺は顔を上げる。入り口から二人のメイドが入ってきた。

 一人は先ほど水晶を見せてきたメイドでもう一人は分からない。


「おぉ!マリアンヌだ!」

「エルフ最強と謳われるマリアンヌだ!」

「これでもう一安心ね!」


 周りの貴族の安堵の声を浴びながらマリアンヌと呼ばれたメイドとは違う方のメイドが俺に近付いてくる。

 ノワール先生や健太がメイドの足を止めようと襲いかかるがメイドの手から出た黒い物体に身体を拘束される。


「おぉ!」

「衛兵隊が敵わなかった敵を一人で二人も!」

「しかも滅多に居ない闇属性の適性者だ!」

「流石王族お抱えのメイド達!」


 メイドが目の前まで来ると左手で俺の肩を掴み右手で俺の鳩尾を殴る。あまりの衝撃に俺は口から胃液を吐き出した。


「覚悟、足りんのとちゃう?」

「覚悟覚悟うるせぇな。お前そんな覚悟好きなヤツだった?」


 皮肉混じりに俺はメイドに笑いながら言い返す。メイドは俺を離すと疑問に思ったのか王子がメイドに声をかけた。


「どうした?早く摘み出せ」

「悪いですけどそれは無理です」


 メイドの返答に王子は眉を顰めて周りの貴族も騒めく。当たり前だ。一メイドが王子の命令に逆らったのだ。


「ウチは今マリアンヌメイド長直属やからメイド長の言うことしか聞けません」

「・・・・・マリアンヌ、そこの人間を摘み出せ」

「残念ですが、それは致しかねます」


 面倒くさそうにマリアンヌに命令した王子だったが、またしても拒否されたことにイラついたのかマリアンヌを睨みつける。


「私はジャンヌ様専属のメイドとなるよう旦那様に仰せつかりました。今まではオベロン様をジャンヌ様の夫とみなし、ジャンヌ様代理として命令を聞いていたに過ぎません。しかし、ジャンヌ様がこの場にいる以上、私はジャンヌ様の命令しか聞くつもりはありません」

「ジャンヌ!」

「マリアンヌ、摘み出して」


 王子がジャンヌさんの名前を呼ぶとジャンヌさんがマリアンヌと呼ばれるメイドに命令を出す。

 だが、マリアンヌが動く事はなかった。


「申し訳ありませんが王子。今のジャンヌ様は貴方の魔法で操られたジャンヌ様の命令は聞くことが出来ません」

「!」


 マリアンヌの言葉に焦ったような顔を見せる王子に俺は拳を握って自分の頬に叩き込む。


「・・・・・何してんねん?」

「あ?反省したんだよ。お前の言うように今一番重要なのは俺の気持ちだった。俺が納得できてないのに諦めるのはただの逃げだ」

「分かってんならどうする?」

「決まってんだろ陽奈。アイツぶん殴って魔法を解いて、ジャンヌに本当の気持ちを聞く」


 深く息を吸って吐き出し腹を括る。


「面白い。なら私が相手をしてやろう!来ると良い!相応しい場所で決着を付けてやる!」




 結婚式の騒動が起こっている最中、城の地下牢で二人の男が座っていた。


「終わった・・・。俺の人生」


 一人は陽奈の脱走を許してしまった元衛兵のジョニー。


「・・・・・」


 もう一人は陽奈の武器として共に脱獄した老人、エルフィン・タイタニア。


「俺には妻も子供もいるんだぞ!チクショ〜、あのクソガキ〜!」

「のぉ、そこの御仁」

「何だよ爺さん!」


 エルフィンに呼ばれてイラつきながらジョニーが振り返る。


「お主、尻と胸、どちらが好みじゃ?」

「何だよいきなり?」

「早よ答えんかい」

「尻だよ尻!」


 ジョニーのその言葉にエルフィンは目を丸くして飛び上がる。


「行くぞ同士よ!」


 ジョニーの扉に飛び乗りエルフィンが風魔法で牢を切り刻む。


「目指すはアルヴン国立闘技場!勇者の力が眠る神域じゃ!」

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