バカみたいに騒ぐ奴は全員まとめてただのバカ
「兄貴大丈夫なのだ?」
朝一でホテルをチェックアウトしかけられた俺への言葉はこれだった。
チェックアウトをした俺たちは事前に手配していた馬車に乗り結婚式場を目指していた。
「あー、大丈夫。ちょっと緊張で寝不足なだけ」
「本当ですかい?実は鬼塚先生と一緒の部屋だから寝れなかったんじゃ」
「焼くよ?」
「すいません」
「ハハハ、君たちは本当に面白いね」
俺と健太のやり取りに笑う総理を見て俺は逆にこの人何が面白いんだろうと思ってしまう。
「いや、最近は執務ばかりでね。こう言う若者のやり取りと言うのが新鮮で・・・」
「いや、こんなの若者の間でされてたら怖いですよ」
「そうかい?」
この総理も何処か抜けているなと思いながら外の風景を見る。既に街全体が王子の結婚のお祝いムードなのか店先に豪華な花が飾り付けられていたり屋台が出ていたりとお祭り状態だ。
「じゃあ改めて作戦を説明するが、まずは結婚式の最中に騒ぎを起こし混乱に乗じてジャンヌを奪還。そのまま警備が薄いであろう城に向かい陽奈を奪還。帰りは私と陽奈の式神を使う」
「オイラの出番ですね」
「違う」
健太の名乗りをバッサリと切り捨てて姉ちゃんは話を続ける。
「おいおい、あのジブリオヤジどもここに呼ぶの?来る?」
「来なくても無理矢理来させれば良い」
「わーお、怖い。世の中で一番怖いのはやっぱパワハラ上司だな」
皮肉混じりにそう言いながら姉ちゃんと陽奈の式神を思い浮かべる。
二人の式神は海坊主にだいだらぼっちと言うまぁ有名な妖怪で姉ちゃんは口八丁で、陽奈は拳で従わせたらしい。二人とも仲は悪いし酒癖も悪い。
何度俺と健太が仲裁したか分からない。
「あ、後ですね。鳥達の話を昨日聞いたんですけどどうやらお嬢城から出そうしたらしいです」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
健太がそう言うと俺たちは深くため息を吐く。
「「「「「そう言うことは先に言えよ!」」」」」
総理含め全員の考えが一致した瞬間だった。
「なぁ、ホンマに大丈夫なんやろな?」
一方その頃陽奈の方は既にマリアンヌと共に式場へと辿り着きマリアンヌの部下として入り口で警備を行っていた。
そんな中、陽奈はマリアンヌを見てそう一言言ったのだ。
「大丈夫よ。メイクはバッチリだし耳もその髪で隠れて見えないわ」
「それやったらええけど・・・」
陽奈が式場である城の中の教会に入って行くエルフたちの顔と身なりを見ながらため息を吐く。
エルフと言うだけあって誰も彼も美男美女な上に金持ち風な身なりのいい者ばかりだ。
「ホンマどいつもこいつもええ身なりしよってからに」
「貴族なんだし当然でしょ?」
「何処の国でもやることは同じか」
金持ちはそれを自慢するためにいい服を着ると言うのは何処の国でも同じなのか、と陽奈は項垂れる。
「金持ちどもはGUCCIだのVUITTONだの見せびらかしてマウント合戦。賄賂に不正。汚いことばっかや」
「・・・・・日本もアルヴンと一緒なのね」
「だから言っとるやん。あ!そこの人ら!ちょっと身分証明してや!」
「メイド風情が喧しいぞ!」
「あ!?ブッ飛ばすぞボケ!」
招待客と喧嘩をしている陽奈を見ながらマリアンヌは別の招待客の馬車へと向かう。
「止まってください。申し訳ありませんが安全確認のため身分を確認しております」
「あぁ、すまないね。えっと免許証で構わないかな?」
馬車の窓から首を出した男がマリアンヌを見てからカバンを漁る。
「あ、いえ。皆様の手をこちらの水晶にかざしていただければ確認できますので」
「おや、そうかい?皆聞こえたかい?」
男が馬車に顔を戻すとさまざまな声が聞こえてくる。
「面白そうなのだ!ルリが一番乗りなのだ!」
「あ、ルリ!こう言うのはまず生贄をだな。おい、焼き鳥」
「あれ?今オイラのこと生贄って言いました?」
「騒ぐな。仕方ない。ここはリーダー兼大黒柱として私が・・・」
「いや、騎士である私が先陣を切ろう」
「まったく、君達は仲がいいね。私がやるよ」
「いや、総理はダメでしょ」
そんな馬車の中の声を遠巻きから聞いていた陽奈が振り返る。
「おい!貴様聞いているのか!?」
「喧しい!もうええから早よいけボケ!」
文句を垂れながら式場に入る貴族を見送りながら陽奈が声の聞こえた馬車を振り返ると既に中の人物達は中に入ったのか馬車は帰って行く。
すぐさま戻ってきたマリアンヌに近寄るとマリアンヌが呆れたような顔で陽奈を見る。
「貴女のお友達、ずいぶん個性的な人ばかりなのね」
「よく言われるわ」
「ドラゴンに、かの有名なノワール王国の第二師団長。人脈が
師匠並」
マリアンヌからすればそもそも会うこともないだろう者達がこの場に集まっているある意味現実離れした状況だ。
「でも、貴女の友達は貴族みたいな腐った奴らじゃないみたいで良かったわね」
「・・・・・そらな」
恥ずかしいのか嬉しいのか頬を赤く染めて目に涙を溜める陽奈だった。




