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異世界に転移した日本で生きるオタクの話  作者: 山田太郎
第一章
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勇者の血統①

 リズに説明された通りに人目に付かない路地を使いながら南へ向かうと丁度街外れにその森は存在した。

 ダークエルフと言うだけあって結構暗くて薄暗い森だった。こう言う場所には昔から妖がたむろしていると相場が決まっている。

 今は陰陽札がない為そこまで高等な術は使えないがそこら辺の雑魚なら拳で祓える自負はある。


「来るなら出て来い・・・ッ!」


 常に気を張りながら森を進む。ゆっくりと歩を進めていくたびに地面で枝が折れるパキパキと言う音が聞こえる。

 しばらく歩いていると不意に木々の間から灯りが差し込んで来た。


「なんや?」


 ゆっくりと近づいていき木の影から光を覗いてみる。するとそこには小さくはあるが賑やかな町があった。

 正直に言ってここまで栄えているとは思っていなかった。


「お客人ですかなじゃ?」


 町に見入っていると不意に後ろから声をかけられる。慌てて振り向くとそこには長い髭が生えた杖をついた老人が立っていた。


「あ、アンタ誰やねん?」

「ワシはこの村の村長ですじゃ。ささ、着いてきてくだされじゃ」


 村長が村に入っていくのを見てウチもその後を着いていく。途中で町のエルフ達からもの珍しいそうな目で見られるが王都のような蔑む視線は感じない。


「ホホ、不思議ですかなじゃ?」


 そんなウチの疑問に気付いたのか村長が笑いながら話しかけてくる。


「エルフ、と言っても幾つかの派閥がありますじゃ。我々ダークエルフは勇者様のこともあり、人間とは友好的にしたいと考えていますじゃ」


 また勇者と言う単語が出てきた。


「大体その勇者ってなんやねん。なんか凄いことにやってのけたんか?」

「勇者様はかつてこの世界に突如として現れ、世界を支配しようとしていた魔王の討伐を成し遂げましたじゃ」

「魔王?」

「魔王と言っても七十二人居てその一人に過ぎないのですがじゃ」


 村長が足を止め目の前にある建物を見る。そこは何やら集会所のようなもので中から色んな声が聞こえてくる。


「さ、中でゆっくりとお話を聞きますじゃ」




 集会所には広々とした会話スペースがありその奥の椅子に座ってウチは村長を待った。

 正直こんなことをしている暇はこれっぽっちもないがあのメイドの魔法の秘密を知らなければ対応も出来ない。


「お待たせしましたじゃ」


 村長がウチの座っている席の前に座り湯気が出る液体を差し出してくる。


「ダークエルフ族特産の紅茶ですじゃ。身体が温まりますじゃ」


 普段ウチは零が入れてくれる緑茶や麦茶しか飲まない為初めての紅茶をゆっくりと口に入れる。

 その紅茶にホッと息を息を吐いてカップを机に置く。


「気に入って貰えたようでよかったですじゃ。では、お話を聞きますじゃ」


 まるで最初からウチの目的が分かっているかのように村長はウチの目を見ながら訊ねてくる。


「マリアンヌって奴の使う魔法を教えて欲しい」


 村長はハァ、とため息を吐き再びウチを見る。


「そもそもあの娘、ワシの娘のマリアンヌは魔法を使えませんじゃ」

「はぁ!?じゃああの魔法はどない説明すんねん!」


 バン!と机をたたき村長を問い詰める。あのメイドがこの村長の孫娘だと言うのも驚くことだが今はそんなことに構っている暇もない。この騒ぎに他に集会所で会話していたエルフ達がこっちを見る。


「あれは勇者様が初めから持っていた力ですじゃ」

「どう言うことやねん?」

「勇者様は元々特別な力を持っておられましたじゃ。その力をマリアンヌは勇者様に教わりましたじゃ」

「その、力って?」

「よくは分かりませんが勇者様はその力を陰陽術と仰っておりましたじゃ」


 理解できなかった。いや、言っていることは分かるのだが頭が追い付かない。

 今までウチは異世界の者は魔法を使うと言う先入観に囚われていたのだ。

 でも、本来陰陽師はそれを生業とするような家柄でしかなれないものだ。だから昔はもう少しいたものの今は二つの家しか残っていない。

 

「なら村長さん。あのマリアンヌは勇者の血、流れてんの?」

「昔マリアンヌが大量に血を流して勇者様の血を分けていただいたことはありましたじゃ」

「そ。教えてくれておおきに」


 ウチは席から立ち上がり外へと向かう。すると外へ出た瞬間急に身体が重くなると同時に金縛りにあう。

 この感覚をウチは知っている。忘れるはずもない。さっき戦ったばっかなのだから。この術は・・・。


「やっぱり、ここに居たのね」


 褐色メガネのメイドエルフ、マリアンヌがゆっくりと、それでも確実に真っ直ぐとウチに近づいて来た。


「まぁ、私の力の秘密を知っただけでどうにかなるとは思わないけど」

「動け」


 ウチがそう言うと共に身体の自由が戻る。


「!?」


 何が起こっているのか理解できていないマリアンヌにウチは近づきながら問いかける。


「なぁ、ウチがなんて呼ばれてるか知ってるか?」


 ニヤリと笑みを溢してウチは言った。


「西の蘆屋。ケンカの天才や」

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