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異世界に転移した日本で生きるオタクの話  作者: 山田太郎
第一章
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二人の姫①

 零達がプライベートジェットで一悶着にあっている時、アールヴの中心にある巨大樹の根元に建てられた城の一室にジャンヌ・タイタニアは居た。

 居たと言えば聞こえはいいが実際のところは部屋に監禁されているだけだ。

 逃げようにもドアは施錠魔法がかけられていて容易には開けられず、唯一部屋から出られる窓も高すぎて飛び降りられない。


「零、今頃何してるのかな・・・」

「未来の夫を前に別の男の名を呟くとは随分浮気性だな」


 窓から青空を眺めていると不意に後ろから声がかけられる。


「王子、この際ボクはどうなっても構いません。でも陽奈ちゃんは助けてあげて下さい」


 振り向いたジャンヌが声の主であるオベロンを見て話しかける。


「ジャンヌ、この数時間でそれを言うのは通算十一回目だ。そして、私がそれを断るのもな」


 ジャンヌは諦めた顔をオベロンに見せ再び空を眺める。しかし、そんなことは気にせずにオベロンは話を続ける。


「人間の女一人にどうしてそうも君は固執するんだ?我々からしたら人間なんてゴミ同然だろ?」

「王子が零だったら人間というのは、我が運命という路上にころがる犬のクソのようにジャマなもんだったが・・・最後の最後はこの零に利用されるのが人間の宿命だったようだ・・・フハハハハハハ、くらい言ってのけますよ」

「・・・・・どうやら君はその零と言う人間をよっぽど気に入っているらしい」


 オベロンはそう言うと指をパチンと鳴らす。するとオベロンの手に雷が現れその中から一つの紙を取った。


「その零とやらは君を私に突き出した男のことだろう?君が幾ら思いを寄せた所でその男に通じる事はない」

「そんなことはないです!きっと零は来てくれます!」

「結婚式を祝いに?」


 皮肉混じりに言われたその言葉にジャンヌは黙り込む。


「残念ながらそれもあり得ない。何故なら・・・」


 オベロンはジャンヌを窓から引き離し壁に寄せるとジャンヌの耳の横で自分の手のひらを壁に叩きつける。


「今、君の昔の仲間が結婚式に参列するために鉄の鳥でこちらに向かってくる日本の指導者暗殺しに向かっているからな。一緒にいるなら死んでいるさ」


 ジャンヌが目を丸くして力無くその場に膝から崩れ落ちる。


「そんな・・・」

「どうした?悲しいか?絶望したか?だが、まだまだ話は終わらない。君の祖父、エルフィン・タイタニアの話が終わっていないからだ」

「祖父にも何かしたのか!?」


 もう敬語で話す余裕などなかった。自分を拾って育ててくれた祖父の名前が出た時点でジャンヌの冷静さは失っていた。


「死んではいないさ。ただ、今後一生を城の地下牢で過ごすことになるがな。まったく聡明な男もマイノリティならばこうも落ちぶれるんだな・・・。っと、もういないか」


 オベロンはいつの間にかいなくなっていたジャンヌに気付き開けっぱなしの扉を見る。


「まぁ、今だけはそう反抗していればいい。すぐに君も私に嫁ぎたいと思うようになる」


 そう言うとオベロンは部屋からゆっくりと出ていった。





「クソハゲコラハゲ!とっとと出さんかい!」


 その頃地下牢では未だ陽は看守に噛みつきながら牢をガチャガチャと鳴らしていた。


「禿げてねぇよ!見ろ!ちゃんと髪あるだろうが!」


 看守は自分の兜を外し髪を見せる。だが、それがどうしたと言わんばかりに陽奈が叫ぶ。


「デコツルテルの時点でハゲも同然やろ!」

「はいー、今の言葉で看守さん完全に心折れました!いいのかなー?」

「知るか!早よ出さんかい!大体なんでジジイと同じ牢屋やねん!普通別々やろ!しかもさっきから寝言で抱け抱け煩いし」

 

 陽奈が後ろで寝ている清潔感のかけらもない老人に指をさす。

 陽奈の言葉に看守が呆れたように自分の腹を摩る。


「いい加減にしてくれよ・・・。俺ら衛兵はろくに飯すら食えねーんだよ。余計な体力を使わせないでくれ・・・」


 看守の様子を見ていた陽奈が牢に置かれた皿の上のマグロの缶詰を取る。

 

「なんか可哀想になってきたしこれでも食うか?」

「いいのか?」

「えぇねん。えぇねん。困った時はお互い様や」


 そう言って陽奈が三つ目のマグロの缶詰を看守に渡し、看守がそれを食べた時だった。

 ギュルルルルル、と看守の腹から不吉な音が鳴り出した。


「おま!これ!腐ってるじゃねーか!は、腹が・・・」


 看守は腹を抑えてうずくまると次は急に立ち上がって尻を抑えて走り出す。


「もう我慢できん!」


 看守が何処かに駆け込んでいくとそこはトイレと書かれたドアがある場所だった。


「前に零がやってたゲームの真似しただけやけどマジで通じるもんなんやな・・・」


 そう感心して、さてと、と心を切り替える。現在呪符を含む服以外の物は取り上げられているため使える呪術は精々身体を強化するほどであるが陽奈にはそれで十分だった。

 精一杯の力を込めて呪力を纏わせた拳を牢の鍵穴部分に放つ。ガコン、と言う音と共に歪んでいるのを確認して牢を出ようとして老人を見る。


「あぁ、もう!」


 陽奈は老人の元に駆け寄るとしっかりと背負い立ち上がる。


「爺さん揺れるで、ガマンしぃ」


 そう言うと陽奈は全速力で走り出す。




「ハァハァ・・・、お祖父ちゃん」


 後から来たジャンヌにすれ違って。

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