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異世界に転移した日本で生きるオタクの話  作者: 山田太郎
第一章
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入学初日に留学生②

「姉ちゃん聞いてねぇぞ!どうなってんだ!?」


 美少女エルフタイタニアさんから話を聞いて俺はすぐさま家の廊下に設置された固定電話から姉である鬼塚翠に電話をかけていた。今時固定電話を使っている家庭など珍しいというか絶滅危惧種だが姉が同僚に誰からか聞かれた時に家族からと言えるようにらしいが正直俺には意味があるように思えない。後ろから覗いていたタイタニアさんが物珍しそうに電話を眺めている。


『言っていなかったか?』

「言ってない言ってない!」

『最近家計が火の車でな。異世界人のホストファミリーは初めての試みらしく通常の五倍謝礼金が貰えたよ』


 上機嫌な笑い声が受話器の向こうから聞こえてくる。


「んな理由かよ・・・」


 結構浅い理由に俺は呆れ気味にため息を付きながら先ほどの姉の発言のある部分わ頭で反復させながら嫌な汗を流す。


「つか、え?火の車だったの?家計簿っ付けてんの俺だったよね?」

『お前は私を舐めすぎだ。改竄くらい容易にできる』

「いやいやいや!姉ちゃん家計簿改竄してたの!?」


 しばらく間が開く。どんな言い訳が飛び出してくるのか待っていると再び姉の声が受話器から聞こえてくる。 


『今のは忘れろ』

「いや、無理だから。つか、改竄して手に入れた金何に使った?」

『世の中には金を玉にして金を増やす摩訶不思議な錬金術があってだな』

「何!?魔法がない日本にもそんな術があったのか!?」


 先ほどまで後ろで話を聞いていたタイタニアさんが受話器を俺から奪い取り受話器を耳に当てる。しかし次の瞬間に訝しんだ顔で俺の顔をタイタニアさんが見る。


「?おい、声が聞こえなくなってしまったぞ?」

「指見ろ指」


 俺がタイタニアさんの指を指すとその指先を目で追うとそこには電話を切ったタイタニアさんの親指があった。


「このボタンを押すと通信が切れるのか!また一つボクは賢くなったぞ!」

「うん!アンタがバカだってことは分かったからちょっとあっちで放課後ティータイムしといて貰えます!?」


 仕方ないな、とまるで子供のわがままに付き合う母親のような顔に若干イラッとしながらも受話器を電話に置いてため息をつく。

 とりあえずリビングに戻ってタイタニアさんの前に座る。こう黙って紅茶を飲んでいる分には綺麗で優雅で俺のタイプなのだがいかんせん発言が・・・・・


「そう言えば学校では簡易的な自己紹介だけだったな。改めてボクはジャンヌ・タイタニア。好きな物は娯楽だ。ボク達の国には娯楽が少ないから日本に留学しにきた。日本の娯楽は素晴らしい。アニメに漫画、ゲーム。特に気に入ったのはエロアニメやエロゲーだな!あれらの発想は何処の国でも見た事がない!」


 こうなのだから幻滅ものだ。アニメや漫画、ゲームは俺も好きだし褒められたのなら嬉しい。だが美少女の口からエロアニメだのエロゲーだのの言葉が出てくるのは少しビビる。

 ぶっちゃけそっちの方が高嶺の花感はないし俺としては仲良くする分にはいいのだがやっぱり美少女は純粋であって欲しい。


「あ、あの・・・。ゲーム好きならやります?俺いっぱい持ってますし」

「本当か!?」


 目を輝かせた美少女が顔を近づけてくる。いきなりのこと心臓がバクバクと高鳴ったうえに顔が熱くなる。


「お、おう」

「ならボクはあれをやってみたい!ほら、確かぬ◯たしとか言う奴だ!」

「あるわけねぇだろ!エロゲじゃねぇか!」


 先ほどの熱が引いていくのが分かる。普通はマ◯オとかポケ◯ンとか有名作品を言ってくると思ったらまさかのぬき◯し。

 確かにあの作品は面白い。言い回しとかキャラ、パロディが俺の好みだ。とある大人の動画サイトでプレイ動画を見ることはあるがまだ買える歳じゃないのでプレイは出来ていない。


「何!?このくらいの歳の男子は持っていないのか!?」

「日本が初めてで何もかも新鮮なのは分かりますけどちょっと驚きすぎじゃないですか?」


 机に置かれたリモコンを手に取りテレビの電源を入れる。ちょうど日本の総理大臣とこの世界の人間の王様が手を繋いで協力関係を示すニュースが流されている。


「そもそもこの世界は人間の立場なんてエルフから見て奴隷以下のはずなのになんでタイタニアさんは人間の中でも下、下、下下下の下な俺と話してくれるんですか?」

「ジャンヌでいいよ。ボクは人間とかエルフとかに興味がないんだ」


 持っていたティーカップを皿に戻して俺の隣に座り自分の手を俺の膝に置いてくる。


「君はボクをどう見てるんだい?」


 妖艶なその声と笑顔に俺は唾をのむ。それにも関わらずジャンヌさんが俺をソファーに押し倒して顎を持ち顔を無理矢理固定する。


「立場が上の種族?身体がエロい雌?」


 甘い息が耳に掛かってくる。背筋が震えて俺の息も荒くなっていく。このままではヤバい。R 18指定まっしぐらでリビングが白いネバネバ塗れになる。


「じゃ、ジャンヌさん?俺は君の事をただのクラスメイトとしか見ていません!ほ、本当です!」


 必死の俺の叫びにジャンヌさんがしばらく考えた後俺の上から降りる。どうやらR 18指定は免れたようだ。


「・・・・・まぁ、今はそれでいいかな。それとやっぱり君に敬語は似合わないと思うな」


 笑顔でそう言われてまた少しドキッとしてしまう。今ここには俺と性格に若干の難はあるものの誰がどう見ても美少女と言うボクっ娘エルフしかしない。

 妙な高揚感を抱きながらもとりあえずダラシなく横暴で妙にクズっぽさを漂わせる我が最愛の姉の帰還を待ちながら俺は夕飯の準備に取り掛かるのだった。

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