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異世界に転移した日本で生きるオタクの話  作者: 山田太郎
第一章
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七日目・俺とお前を繋ぐ物

 日曜日のおそらく殆どの人間が休日であるだろうこの日の夜の事だった。

 姉ちゃんとノワール先生は何故か学校に呼び出されて徹夜で仕事(デスマーチ)を強いられている最中でルリは今日のギルドの依頼で大手柄を上げたとかでギルドの面々にご飯を奢って貰っていて帰りは健太に送ってもらうらしい。

 そして俺とジャンヌさんは昨日晩御飯の時に陽奈に教えてもらった星が綺麗に見れると言われる学校の裏山の山頂にある廃神社に寝袋とテントを持ち込んで天体観測をしていた。


「星ってあんな綺麗に見えるもんなんだな」

「アルヴンだと夜に灯りが無いからこんな感じだったかな」

「へ〜、好きだったんだな。故郷が」

「そりゃあ故郷だからね。大変だったし寂しいことばっかだったけど」


 寝袋に包まりながら話す。まともに会話できるの何てもう今日で終わりだ。

 それならば俺は何気ない会話をしたい。


「ジャンヌの祖父さん、無事だといいな」

「無事だよきっと。何されたって巫山戯る人だったし。捕まってても太々しい態度でご飯でも要求してるかも」

「何かその祖父さん俺の親父に似てるな」

「お義父さん?」

「そうそう、ウチの親父も破天荒っつうか唯我独尊っつうか・・・待て、今何つった?」


 寝袋から這い出てジャンヌさんを見る。ジャンヌさんは依然として星を眺めているがそれでも先ほどの発言に違和感があった。

 文字的にはいいはずなのに音がなんか微妙に違った様な気がする。


「そんなすごい人だったの?」

「もうそりゃバケモンよ」


 ジャンヌさんの問いに先ほどまでの質問を頭の隅に置いて俺の親父についてについて思い出しながら言葉にする。


「ウチの一族に剣教えててよ、基本的に一日に一人か二人はぶっ倒れて医務室行きだった。後は喧嘩も強くって東の天野って言われてたんだってよ。随分昔だから今は違うかもだけど」


 本当に親父の伝説はお婆ちゃんとお母さんからよく聞かされていた。

 九尾の狐を退治したとか異世界を救ったとか絶対嘘な話もされたがそれでもすごい人なのは変わりがないのだろう。


「じゃあお義母さんは?」

「何か千年に一人の天才陰陽師だったんだってよ。でも陽奈もそのレベルの天才とかで一族まとめて喜んでたらしい」

「千年に一人とは?」

「マジでそれな」


 廃神社の境内に笑い声が響き渡る。


「さて、今日で最後なんだけど零、何かボクに言い残すことはあるかい?」

「言いたいこと?あー・・・・・」


 その夜、一つの流れ星が宇宙を流れた。




 一方その頃ギルドで手柄を挙げて元ホームレスのギルドメンバー達に晩御飯を奢って貰いながら腹が満たされるまで食べていた。


「ルリちゃんいい食いっぷりだなぁ!」

「まったくだ!俺らも奢り甲斐があるってもんよ!」


 ガハハ!とビールをジョッキで飲みながらメンバー達は本当の娘を見ている様な顔をする。


「ルリちゃんはウチの稼ぎ頭だぜぇ。あんなでっかいハダカデバネズミを仕留めちまうんだからよ!」


 そう、今回の依頼は大江山市の地下にある巨大な地下水道に住み着いたハダカデバネズミの討伐⭐︎3だった。

 しかしその討伐は困難を極めたのだ。

 ハダカデバネズミはデバネズミと言う街に捨てられた服を見に纏いバネで跳ねながら生活する裸のネズミの女王だ。

 バネで飛び跳ねるので中々攻撃が当たらない。それなのに数は異常に多いため中々ハダカデバネズミにまで辿り着くのも至難の業だったがルリの吐く熱線により周りのデバネズミごとハダカデバネズミと貫き仕留めたのだ。


「見た目が可愛い女の子だがさすがドラゴンだな!」


 再びガハハ!と笑い声が上がる。


「な、なぁ、ルリちゃん。そろそろいいんじゃないか?もう帰らないと旦那らが心配するぜ?」

「まだなのだ!ルリの腹はまだ一分目なのだ!もっと腹いっぱい食べるのだ!」

「あれだけ食べて!?」


 ルリの席に積まれた百皿ほどの皿を見ながら健太は絶句する。

 幾ら奢りとは言えどこれでは払い切れる額では無くなってしまう。


「あのネズミは美味そうだったのだ!」

「絶対病原菌大量に持ってるから食うな!」


 涎を垂らしながらそう言うルリを健太は諌める。ルリにはハダカデバネズミがどう見えているのだろうか。


「ったく・・・。そう言や、ルリちゃんは旦那に助けて貰ったんだよな?」

「そうなのだ!兄貴は命の恩人なのだ!」


 料理を大量に口に含みながら喋るルリに「汚ねぇな。旦那ちゃんと教育してるのか?」などと思いつつ健太はそれを顔に出さずに次の質問に移る。


「兄貴のこと、どう思う?」

「質問の意味がよく分からないのだ。どうも何も兄貴はルリの頼れる兄貴で家族なのだ」


 つい最近まで赤の他人だったはずなのにさらっとルリさん口から家族という言葉が出たことに健太は目を丸くする。

 そして口に含んだ料理をモキュモキュと咀嚼し全て飲み込むとルリは言葉を続けた。


「ルリは兄貴達に出会う前はずっと狙われていたのだ。やっとの思いで逃げられたけど足を怪我したのだ。でも、兄貴は違ったのだ!助けてくれた上にルリに名前をくれたのだ!だからルリは兄貴が大好きなのだ!」


 笑ってそう言うルリを健太は黙ってみる。嘘を言っている様には見えないのでおそらく本心なのだろう。

 だからこそ恐ろしかった。出会ってそこまで経っていない子にそこまで言わせる零が。そしてこのままでは、起きてしまう恐ろしい未来を。


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