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異世界に転移した日本で生きるオタクの話  作者: 山田太郎
第一章
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三日目・ドラ◯エ

 エルフの王子が来訪してから二日経過した三日目の朝、それは唐突に起こった。

 今日は陽奈が朝から当番で先に行ってしまったこともあり、ジャンヌさんと共に登校しようと俺は玄関で座りながら待っていた。


「おい、ジャンヌ!早くしねぇと遅刻しちまうぞ!」

「待ってくれ!寝癖がなかなか治らないんだ!ボクのことは構わずに先に行ってくれ!」

「お前それ死亡フラグだろうが!」


 何気ないやりとりを交わしながらとりあえずポストの郵便を取ろうと昨日一晩でノワール先生が治してくれた玄関のドアを開けるとそこには一匹のドラゴンが居たのだ。

 死亡フラグは死亡フラグでも立っていたのは俺だった。

 いや、落ち着け。素数を数えて落ち着くんだ。起きたら家の前にドラゴンなんている訳がない。そりゃ、空には鳥だけじゃなくてたまにドラゴンが飛んでたりするけど流石にこれはないだろ。きっとご近所さんが何かの祭りのために置いたのだ。


「す、すげぇなこれ。こんなデカいのどうやって作ったんだ?まるで本物みたいに・・・」


 俺が興味本位にドラゴンの置物に触ってみる。凄いごわごわとしていて、鱗も結構硬い。しばらく触っていると置物が動き出し、目が合ってしまう。


「あ、あぁ!これ触ると起動する感じなのね!最近の技術は凄いなぁ!まるで生きてるみたいに・・・」


 置物の顔に近づけると置物が物凄い咆哮を行う。その咆哮の中にいた俺はしっかりと感じ取った。息の生温かさ、唾の臭さ。そしてようやく全くしたくなかった理解をする。


「つか、生きてる?」


 それを理解した瞬間俺は急いで家の中に入ってドアに鍵を掛ける。安堵のため息が出たのも束の間、ドアに強い衝撃が加わる。

 きっとドラゴンがドアをやぶろうとしているのだろう。俺は僅かな抵抗としてドアを押さえ付ける。


「な、何なんだ!何でこんな所にドラゴンが居るんだよ!」


 ヤケクソになりながら叫ぶと洗面台からジャンヌさんが飛び出してくる。


「零!どうしたんだ!?」

「ジャンヌ!警察!いや、自衛隊?とにかく助けを!外にドラゴンが居て家に入ろうと!」

「何だって!?」


 ジャンヌさんは俺の指示を聞くや否や直様リビングに走り込み二日前に教えた電話を何処かにかけ始める。

 何とか耐えなければと思っていると不意にテレビのニュースが聞こえて来た。


『臨時ニュースです!現在大江山市で凶悪なドラゴンが暴れています。既にギルドからの討伐隊が派遣され、交戦準備を進めているもようです。近隣住民の方は直ぐに避難してください。繰り返します。・・・・・』


 ギルド、と言う言葉に俺は昨日の晩にノワール先生が言っていたことを思い出した。

 何でもついこの間、ノワール王国から日本に冒険者ギルドの支部が設立されたらしい。

 理由としてはドラゴンが海を超えて日本に上陸したり、空気中に存在する魔力の素、マナによる日本にいた生物のモンスター化に伴ってとの事だった。


「にしてもご都合展開過ぎるだろ!話した翌日だぞ!つかそれでももっと雑魚そうなモンスターが来いや!ドラゴンなんぞ相手にできる訳ねーだろ!」


 元々モンスターに出会ったのなら逃げるしか一介の学生には選択肢がない。

 しかし、俺は曲がりなりにも蘆屋の血を引く陰陽師であり、その役割は国民を人の及ばぬ所にいる怪異を調伏し、安寧を守ること。

 だから逃げることは許されない。

 で?許されないから何だと言うのか。俺だって曲がりなりにも一人の人間なのだから死にたくないのは当たり前の感情だ。


「きゃあ!」


 ドアの衝撃が無くなったと思ったら今度は外から幼女の悲鳴が聞こえてくる。


「すまない!見知らぬ少女よ!お兄さんのために犠牲に・・・」


 いや、待て。本当に良いのだろうか?ここで外にいる一般人を見捨て俺が蔑まれるだけなら良い。クズだろうがカスだろうが甘んじて受け入れてやろう。実際その通りだ。

 だが、姉ちゃんや陽奈は違う。二人とも困っている人がいれば自分の命を顧みずに戦うだろう。俺が外にいる幼女を見捨てることによって二人が蔑まれるのはダメだ。


「あー!畜生!やってやるよ!打算があろうが何だろうが命かけて守ってやるよ!」


 雄叫びを上げながら玄関のドアを開ける。常に制服の胸ポケットに入れていた呪符を取り出してドラゴンへと投げつける。

 呪符が爆発してドラゴンがこちらを見る。


「こ、こっちだこの野郎!」


 チラッと悲鳴を上げていた幼女の居場所を確認する。家の左側の道でへたり込んでいる。

 ドラゴンが俺に注目しているのはならやることは一つだ。幼女とは反対方向に走って幼女からなるべくドラゴンを離す。

 少し俺が離れるとドラゴンの口から熱線が放出され俺を追いかけてくる。


「火ィ吹きやがったこのドラゴン!」


 まぁ、よくゲームとかでも火を吹くし別段驚くことでも無いがそれでも生で見てしまうと少し怖い。手前の曲がり角を左に飛び込んでギリギリ避け壁越しにドラゴンを見る。

 しかし俺はそこである違和感を感じてしまった。


「ドラゴンの奴、追ってこねぇな・・・」


 一向に家の前から動く気配がない。


「あそこに何かあるのか?」

 

 少し気になり壁から身体を出してドラゴンに近づいていくとドラゴンが再び熱線を吐き出した。

 何とか熱線を紙一重で交わしてドラゴンを見る。


「落ち着け!さっきは攻撃して悪かった!もう攻撃の意思はない!」


 手を上げて自分が無害であることを示す。ドラゴンに通じるかは分からないしそもそもこのドラゴンの性格も分からない。

 だが、一つ分かることは何らかの理由であのドラゴンが動けないと言うことだ。

 しばらくドラゴンがジッと俺を見つめると攻撃する気が無くなった様で警戒を解き路上に頭を付ける。それを見て俺はドラゴンがこの場に居座る理由を探そうとドラゴンに近付く。

 しばらくして原因はすぐに分かった。このドラゴンは今現在脚に酷い怪我をしている。

 最初は上の方ばかり見ていて気付かなかったが下に血の溜まり場がある。


「脚を怪我してたのか」


 ドラゴンを撫でて宥めながらどう怪我を治そうか考える。陰陽術に治療術はあるものの俺はそれができない。


「零!大丈夫かい!今翠達に連絡したからもうじき」

「そうだ!ジャンヌだ!」

 

 家から飛び出して来たジャンヌさんの肩を掴む。


「れ、零?どうしたんだい?」

「ジャンヌ、回復魔法は?」

「一応できるよ。昨日ノワール先生に教わったから」

「ならこのドラゴンの脚、治せねぇかな!?」


 俺の言葉にジャンヌさんがドラゴンの傷を覗き見る。


「この程度なら・・・うん。大丈夫」


 そう言ってジャンヌさんはドラゴンに近づいていき光魔法のヒールを掛ける。するとみるみるうちに傷が塞がっていきドラゴンの怪我は完治してしまった。

 

「うん。もう大丈夫なはずだよ」

「すげぇ」


 俺がジャンヌさんの魔法に感嘆して近づこうとしたその時だった。

 ドラゴンの身体が爆発してドラゴンが悲鳴を上げる。


「ドラゴン!」

「零!あれ!」


 ジャンヌさんの言葉にジャンヌさんの指さす方向に視線を向けるとそこには空飛ぶ箒に立った男とその後ろには何人もの武器を持った身なりが汚い男達だった。


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