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異世界に転移した日本で生きるオタクの話  作者: 山田太郎
第一章
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二日目・魔法実習②

 適性検査が終了し、一年三組の面々が校庭に出るとそこには幾つもの的が立っていた。


「次は射撃訓練だ!君たちの最適性属性で初級魔法を的に当ててもらう」


 ノワール先生が先ほどとは別の呪文を唱えるとノワール先生の右手から風の刃が飛び的がスパッと切り裂かれる。


「これは風の初級魔法、エアーブレード。攻撃魔法だ。属性にも得意にする魔法がある。火、風、雷は攻撃魔法。水と土、闇は防御魔法。そして光が唯一の回復魔法だ」


 そう説明すると俺の隣にいたジャンヌさんが手を挙げる。


「どうした?」

「じゃあボクはどうしたらいいんですか?」

「安心しろ。光だからと言って攻撃魔法魔法が使えない訳じゃ無い。それは他の属性も同じだ。火属性の魔法にも防御魔法と回復魔法は存在するし水魔法にも攻撃魔法や回復魔法は存在する」


 するとノワール先生がいきなり俺を見る。

 俺は少したじろぎながらジャンヌさんの後ろに隠れようとするがそれを察知したのか先生に首根っこを捕まえられ引き摺り出される。


「女子の後ろに隠れるな」

「天野、先ずは君が撃ってみてくれ。属性は火、呪文は・・・・・」


 呪文の説明が終わり俺は的から十メートルほど離れた場所に立つ。緊張した俺の身体に風が吹きつけてくる。

 風が止んだと同時に俺は右手を前に突き出して先程ノワール先生に教わった呪文を詠唱する。呪文を詠唱し終わると手に火球が現れておりそのままその火球を前に押し出す様に力を入れる。

 すると火球は俺の手から離れ的の下の方に直撃した。


「当たった・・・」

「初めてにしては中々の照準だな」


 ノワール先生が俺の頭を撫でてくる。初めて身内以外に撫でられたことに感慨深さを持ちながら俺は後ろへと下がる。


「・・・・・嬉しそうだね」

「?なんで機嫌悪そうなのお前?」

「分かんない・・・・」


 膨れっ面で迎えてくれるジャンヌさんを見ながら次々に魔法を放っていくクラスの皆んなを眺める。

 大体が初心者なので的に当たらなかったり見当違いな方向へ飛んだりする。

 結局は的に当てる事が出来たのは俺とジャンヌさんと先生含める数名だけだった。




 そんなこんなで放課後となり、俺は夕飯の為にスーパーでジャンヌと陽奈と一緒に買い物をしていた。


「零!あれはなんだ?」

「チョコレートって言う甘苦いお菓子だよ」

「お菓子!ボクの国ではお菓子と言えばクッキーくらいしか無かったからな!食べてみたい!」


 あまりの無邪気さと世間の知らなさに隣で一緒に食材を選んでいた陽奈が呆れた様にため息を吐く。


「いくら異世界やからってちょっと物知らなすぎへん?心配になって来たわ」

「そうだな。ジャンヌ、欲しいなら一個だけ買ってやる。気になるやつがあるなら取ってこい」

「了解した!」

「何か子供連れの家族みたいやな」


 陽奈の言葉に俺は直様陽奈を見ると陽奈は顔を赤くして下を向いている。何だか俺も恥ずかしくなり再び陽奈から目を逸らしていると再び陽奈が口を開いた。


「なぁ、零」

「な、なんだよ?」

「あのムカつくクソエルフ、助けちゃってくれへんか?」

「!?」


 陽奈から飛び出した言葉に俺は目を丸くして陽奈を見る。今陽奈が言っていることは自分はオークの慰み物になっても良いからジャンヌさんをエルフの王子に突き出すなと言っているのだ。


「陽奈、お前自分が何言ってんのか・・・」

「わかってる」


 俺の言葉を遮る様に陽奈が俺の服の袖を掴んで震えながら喋り出す。


「ウチは別に死ぬわけや無いし、もしオークとの子供が出来ても零ならその子ごとウチの事守ってくれるやろ?」

「まぁ、それが俺に課せられた使命みたいなもんだしな」

「使命とか関係なく零ならそうする」


 俺はため息を吐きながら楽しそうにお菓子を選んでいるジャンヌさんを見る。

 ジャンヌさんには俺は陽奈を選ぶから諦めてくれと宣言してしまった。でも陽奈は自分はいいからジャンヌさんを助けろと言う。

 俺はいったいどちらを選ぶべきなのだろうか。


「零!決めたぞ!」


 俺が悩んでいるとお菓子を決めたのかジャンヌさんが近づいて来る。


「これだ!」


 ジャンヌさんが見せて来たのは小さい子供がねるねるして楽しむお菓子だった。


「一度に二度楽しめる素晴らしいお菓子だぞ!」

「ガキか!」


 俺はそうは言ったが本人がこれでいいと言うのでジャンヌさんが持って来たお菓子を籠に入れる。




 暫しの買い物を終わらせて帰路に着く。今日は姉ちゃんが早めに帰ってくると言っていたのでそろそろ家にいることだろう。

 家の玄関に到着しドアを開く。そして開けた瞬間飛び込んできたのは我が家には居ないはずのバスタオルを肩にかけた濡れた金髪美女の裸だった。


「すいません。間違えました」


 そっとドアを閉めて後ろに立っていた二人に話しかけようとしたところでドアが頭上を飛んでいく。


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!げんかぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「よくも・・・よくも私の裸を!」

「お、落ち着きましょう!そして服を着ましょう!ノワール先生!」


 そう。その金髪美女とは今日俺に魔法を教えてくれたティターニア・ノワール先生だった。

 先生は今も裸で胸を左腕で隠している。正直言ってメッチャエロい。

 右手には授業で見せてもらった風の刃が漂っている。


「そもそも貴様らが何故鬼塚先生の家の前にいる!まさか夜襲か!?」

「いや、あの、ここ俺ん家なんですけど。ちなみにジャンヌはホームステイで陽奈は血縁関係者」


 俺の説明に二人も懸命に首を立てに振る。


「何?・・・・・それは、すまなかった」


 ノワール先生も魔法を解除して両腕で胸を隠すとそそくさと家に入っていく。

 これ玄関どうしよ、なんて思いながらこの騒ぎに集まって来たであろうご近所さんに会釈してとりあえず三人でドアを元の位置に立てかけて家に入った。

 その数分後、リビングでビールを飲んでいた姉ちゃんを床に正座させて俺は事情を聞いていた。


「要約すると日本に魔法教師として来たはいいものの住む場所もノワール先生は確保してなかったから家に住まわせてあげようと?」

「まぁ、そう言う事だな」


 姉ちゃんの肯定に深くため息を吐きながら次はノワール先生を見る。


「ノワール先生も大人ならちゃんとしてくださいよ!住むとこなしに他国に働きに来るなんて前代未聞ですよ!」

「おい、我が愛する弟よ。ノワール先生とお姉ちゃんの扱いの差に少し異議申し立てを行いたいのだが」

「いや、無理だよ。アンタ前科何犯?仏様だってこう何回もやられたら問答無用で殴るぞ?」


 世の中は世知辛いな、と嘆く姉ちゃんを他所に再びノワール先生を見る。


「まぁ、マジに住むとこ困ってんなら家まだ部屋に余りあるし居座ってくれて大丈夫なんで。あ、でも玄関は直しといて下さいね。後風呂上がりに裸で出歩かない事。それと・・・」

「ま、待ってくれ!」


 住むに当たっての注意事項をノワール先生に説明している最中にノワール先生が話を止める。


「何ですか?」

「その、本当にここに住んでもいいのか?」


 ノワール先生の質問に俺はポカンとしてその後に盛大に笑う。


「良いですよ別に。家はガキのお菓子欲しがる箱入りエルフも、関西じゃ敵なしの不良娘も、家の金横領して全スリするクズもいるんで今更露出狂の騎士が増えたところでどうとも」

「そ、それは忘れろ!」


 ノワール先生が後ろで早速お菓子を作っている二人を見ながら笑う俺を赤面し、涙目になりながら譲る。


「んじゃあご飯食べましょうか」


 こうして、我が家にまた一人新たな家族が加わった。

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