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家を生き物にしましょう!


翌朝、早起きしてすぐ近所にある小高い丘に向かった。


 そこには見てるだけでぽかぽかする素敵なお花畑と、親友の魔法使い、メヌエラさんのお宅がある。


「……なんて?」

「家を、生き物にしたいんです!」と言ったら、目を丸くして聞き返される。

「家と意志疎通を取れるようになるには、どんな魔法があれば良いか、2500年以上先輩の知恵を借りたくって……」

「いや、えっとね……なぜ家を意志疎通出来るようにしたいの?」

くるんくるんの銀の巻き髪を弄りながらメヌエラさんは真顔で質問した。


「実は……嘘の政略結婚を申請されたのですけど、私にそのような機能はまだ未発達なので……逆にボロが出ると思うんです」


 部屋の雰囲気に揃えたアンティークのカウチに凭れたまま、天井を見上げる。

メヌエラさんは、なるほどねぇ、と曖昧な相づちを打った。

大きなとんがり帽子をなぜか家でもかぶっているので、表情はあまり見渡せない。


「なんとなく解るよ、言いたいことは……確かにねぇ。人間の仕来りは、私たちと違う。

遊びに行った最中に蛙捕まえて食べたらフラれたりするからねぇ」

「蛙を食べてはならないのですか」

「みたいみたい。あと、帽子とかマントとかも目立たないやつにしろって五月蠅い」

「……」

確かに、大きなとんがり帽子と、刺繍の施された同じ色のマントは、遠くからでも目を引いた。

「何処に居ても、メヌエラさんが見付けられて便利で、私は好きです」


「ふふ。ありがとう。私らは気にしないけど、社会は人間に合わせだしてるから、ドレスコードがね」


 それを聞くと一気に萎縮してしまう。

他にも、蛙をいきなり捕まえてはならない、とか、物をいきなり浮かせてはならない、とか、守れるかわからないことが沢山ある。

「うーん……やっぱり、私では」

変な物を食べてるように映るかも、変な物を着てるように映るかも。

変な言葉遣いかも、全部が、爪の先まで、不安しかない。


「家なら、家のことも解りますし、粗相も無いでしょう。

実際、どんなお茶を入れればいいのかも、どのような歩き方が良いのかも、何も知りませんもの」

「あなたが、嘘を吐くのを我慢するのは、どうしても、出来ないの?」

「無理無理無理無理!!」

私は頭を横に振る。

 お皿を洗うときの洗剤の付け方さえ、どう見られるか考えるだけで発狂しそうなのが、正直なところだ。

「向こうは、ただの手慣れた恋愛をこなす作業ですけど、私はハードルが激高いです……まだ、メイドの方がずいぶんマシ。仕様書を読み込んでどうにかなるでしょうし。ネジとか、ボルトを食べたら、それでボロが出そうですね」

「そう」


私の耳元のイヤリングに触れながら、メヌエラさんはにっこり笑う。



「でも、家だって、『彼』のことを知っているだけで、恋愛向きかはわからないわよ」


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