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Epilogue:神金級冒険者

 迷宮内で試練の間を突破した私達は、その後奥へは進まずに、地上へと引き返していった。


 試練の間の入り口で扉が開くのを待っていたアメラが、私を見るなりぐちぐちと文句を言ってきたが、聞こえなかったフリをしてそのまま逃げるように帰った。


 ……いや、本当に忘れていたわけではないのだよ?

 アメラ君は転移陣を作れるから、てっきり転移の魔術も使えると思っていたのだ。


 まさか行ったことのある二点間を繋ぐ、転移陣のみしか作ることができないなんて知らなかったのだよ。



糞虫(ごしゅじんさま)が私を置いて何処かへ転移するものだから、七十四階層まで走ってきたのですよ。あの子を守れと命令するものだから、逆えずに。何ですか? 新手の嫌がらせですか?」



 そんなことを言いながら、冒険者組合に着いた後も私の隣で呪詛のように文句を垂れ流すアメラ君は怖かった。


 目が完全に据わっている。


 あれほどの殺意をぶつけられたことは、悪魔界にいた頃でもあまりなかったのだよ……。



「急いで助けに来てくれたことは嬉しいけど、これは完全にあなたが悪いわね。……まぁ、七十四階層まで走ってこれるアメラさんもおかしいのだけれど……」



 応接室で隣に座っているサキも、呆れた顔で私の方を見ている。

 どうやら私の周りには敵しかいないようだ。

 

 その凍てつくような冷たい目で私を覗く様は、まさに氷の魔剣を扱うに相応しい冷徹さだと言えるだろう。



「……何か失礼なことを言われた気がしたのだけれど」



 サキが私の顔をジッと見ながら訝しむように言う。

 恐ろしく勘のいい女である。


 私は烏面に滲む汗をハンカチで拭いながら、首を振って平静を装いながら言う。



「そんなことよりも、今は組合からの報酬だ。迷宮の新階層到達に、試練の間のクリア。深層へと繋がる転移門のある第二十階層の封鎖。……報告した成果としてはこんなところか。サキ君から見て、どの程度の報酬を受け取れると思う?」



 私の言葉を受け、サキが口元に手を当て考えるような仕草をした後に答える。



「うーん、そうね……。金額とかは正直わからないけど、神金級(オレイカルコス)冒険者が到達できなかった層に行ったのだから、もしかしたら────」


「────そこからは、私が話せてもらうよ」



 サキが言い切る前に応接室の扉が開き、組合長のジェファソンが入室して言う。


 ジェファソンは私達の向かいにあるソファーへと腰を下ろすと、私の膝で疲れたように眠っているイズへと顔を向ける。

 


「お嬢ちゃんはお疲れの様子みたいだね。本当は彼女にも一緒に聞いてもらいたかったのだが……仕方ないか」



 ジェファソンは私達の方へと順番に顔を向け、見定めるように目を細めて見てくると、やがてゆっくりと首を縦に振って話を続ける。



「君達が王都地下迷宮で成した偉業については、報告を受けている。……信じ難いものばかりで、私も頭がついていっていないが、秘匿の石板を確認したところ、事実であると判断した」



 秘匿の石板とは、試練の間を突破した者の名前が自動で書き込まれる魔道具のことらしい。


 冒険者組合が管理している希少な魔道具であり、大国でも首都にある組合のみが保持しているようだ。


 ここ王都冒険者組合にも保管されており、それを確認したとのことだった。



「秘匿の石板には、試練の突破者に『マモン』と書かれていた。……君のことで、間違いないだろうか?」

 

「ふむ。知っての通り、それは私の名だ」



 受付嬢のマリアが紅茶を淹れ、テーブルに並べていく。


 ジェファソンは前に置いてある紅茶を手に取り、一口だけ飲んでから置くと、私に真剣な表情を向けてくる。



「マモン殿。迷宮の新階層突破、組合長としてお祝い致します。今回の件での報酬として、神金貨1枚と、白金貨20枚をお支払い致します。そして────」



 組合長が金額を言うと、隣に座っていたサキが飲んでいた紅茶を吹き出しそうになってむせる。


 ジェファソンはそんなサキの様子を気にも止めず、豪華な箱をテーブルに置いて、私に見せるように開けていく。



「────我々冒険者組合は、あなたを新たな神金級(オレイカルコス)冒険者としてお認め致します」



 そう言って開けた箱の中には、神聖な光を放つ金色の冒険者プレートが入っていた。



「そしてそれは、マモン殿と同パーティーである他の方々にも適用されます。ですので、パーティメンバーである他の方々のランクも同時に引き上げさせて頂きます。────サキ殿が白金級(プラチナ)、アメラ殿が金級、イズ殿が銀級への昇格となります」



 神金級(オレイカルコス)冒険者パーティとなったことで、サキ達の冒険者ランクも査定の見直しが入ったようだ。


 私が神金級(オレイカルコス)

 サキが白金級(プラチナ)

 アメラが金級

 イズが銀級


 この四人で神金級パーティとなった。


 最高位冒険者である神金級(オレイカルコス)冒険者のパーティメンバーのランクが鉄級ばかりでは、組合としてもメンツが保てないから引き上げたといったところか。



「ですが、今回の引き上げはあくまでも神金級(オレイカルコス)冒険者パーティとして相応しいランクにするための処置となります。そのため、各個人単独で依頼を受けることは出来るだけ遠慮して頂きたい」



 ジェファソンが頭を下げ、懇願するように言う。

 

 まぁいきなりランクを上げて貰ったところで、強くなったわけではないからね。


 あくまでもパーティとして行動して欲しいということなのだろう。



「わかりました。ですが、私から一つだけ、彼に聞きたいことがあります」



 そう言ってサキが答えると、その美しい黒髪を揺らしながら私の方を向き、真剣な表情で口を開く。



「……マモンさん。私達は元々臨時のパーティだった。……これからも、私はあなたのパーティとして、入ってもいいの?」



 真面目な顔で聞いてくるサキを見て、私はくつくつと怪しげな笑みを浮かべて答える。



「何を言ってるのだね、サキ君。私達には君が必要だ。むしろ、私からお願いしたいくらいだよ。……それに、私は既に君のことを、大切な友人だと思っている」



 私の言葉を受け、サキが驚いた様子で目を見開くと、目に光るものを溜め、すぐに横を向く。



 彼女はイズを守ってくれた。

 私が着いた頃には片腕が欠け、ボロボロの状態になるまで必死に戦っていた。


 その姿は、その魂は。

 私が欲するに値する、尊いものだ。

 


 彼女の魂が、常に劣等感と孤独で苛まされているのは知っている。


 ならば、せめて彼女の孤独だけでも、できることなら埋めてあげたい。


 

「……そう。なら、いいわ」



 私達の前で聞いていたジェファソンが、そっぽを向きながら言うサキへ温かい目を向けた後、私の方を見て言う。



「ふっ、話はまとまったかな? それでは、今回の通達と報酬は以上となります。マモン殿……いや違いますね」



 ジェファソンが箱にある冒険者プレート見ると、そこに記載されてある文言を読んでいく。



「────神金級(オレイカルコス)冒険者『黒屍(くろばね)』のマモン殿。冒険者組合を代表して、これからもよろしくお願い致します」

 



 

 ジェファソンが深々と頭を下げて箱を渡してくると、金色に輝く冒険者プレートには、黒屍(くろばね)の二つ名で登録されている私の名前があった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 冒険者組合を出た頃には、すっかり真夜中になっていた。


 昼間は人通りも多く喧騒に溢れていた賑やかな街並みも、今は静寂に包まれ、銀色に輝く美しい満月が宿舎への道を照らしている。


 そんな夜道を、私とサキの二人が並んで歩いていた。



「イズも迷宮内では元気そうに振る舞っていたが、魔力を相当に消費して疲れていた。アメラ君に送って貰い、先に宿舎で休ませているよ」



 私がそう言うと、隣で後ろ手に組みながら歩いているサキが「そう……」と、心此処に在らずといった様子で答える。


 私はそんなサキを横目で眺めながら、彼女が話そうとしていることの確信をつく。



「……気づいているようだが、私は異世界から召喚された者だ。君と同様に、ね」



 私の言葉を受け、サキがピクリ、と肩を震わせる。

 

 そしてゆっくりと私の方を向き、真剣な表情で見つめて言う。



「……私も異世界人だって、気づいてたのね」


「コロッセオ。君があの迷宮でそう口にしていたときに、確信したよ。……あとは、魂がこの世界の者とは少しだけ違った」



 私が魂と口にすると、彼女は私の背中へと目を向け、真面目な口調で答える。



「……魂。そして、背中に生えていた翼。……あなたは、人間ではないのね」


「……そうとも。私は、君達人間から悪魔と呼ばれている存在だ」



 その言葉に、サキは何故か少しだけ表情を柔らかくする。


 ……元の世界では、人間は相手が悪魔だと知ると、恐怖を抱くことがほとんどだったのだが……現代の人間は違うのだろうか。


 不思議そうに見ている私に気づいたサキが、目を逸らしながら言い辛そうに口を開く。



「……いえ、その。あなたが能力(スキル)なしにあんまりにも強かったから、その理由がわかって納得したのよ。……本物の悪魔だから、だったのね」



 サキは複雑そうな顔をしたが、すぐに首を振って私の方を見る。



「でも、異世界人であることは他言しない方がいいわ」


「……どうしてだね?」



 私が尋ねると、彼女は私の顔を真っ直ぐ見据えて答える。



「神聖国の教会は異世界人を探して、保護している。もし、目をつけられれば厄介なことになるわ」



 神聖国、か。


 それが本当なら、私が知りたいことの手がかりもそこにあるかもしれないな。


 私は彼女の前を歩き、肩をすくめながら言う。



「気をつけるとしよう。だが、私も目的があってね。サキ君は、スマートフォンというものを見たことはないかね?」



 私の言葉を聞き、サキは不思議そうな顔をしながら答える。



「あるけど……。こっちの世界には持ってきてないわ。……でも、あそこならあるかもしれないわね」



 その言葉を受けた私は、烏面の魔眼をギラリと輝かせながら聞く。



「……それはどこだね?」



 夜風に煽られ、美しい黒髪を揺らしながらサキが答える。






「私が召喚されたところ、さっき話した神聖国────ファルシオンよ」



 



※次章更新日についてのお知らせ


お読みいただきありがとうございます。

これで第二部終了となります。


一か月ほど毎日更新をさせていただき、無事10万文字に達することができました。


皆様の応援のおかげであり、これまで当作品を読んでくださった全ての方々に深く感謝致します。


第3部はまだプロットの段階なので、やや時間を置いてからの再開となります。(11月から再開をする予定です)


私事でございますが、この度二週間ほど検査入院することも重なり、次章に少し間が空いてしまうことについてご了承頂ければ幸いです。



また、一章、二章を通して

当作品について少しでも興味を持ち、面白いと感じていただけた方の中で、

「ブックマーク・評価をしても良いよ」 という方は応援をして頂けると嬉しいです。m(__)m


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすることで付けることができます。


まだまだ物語は始まったばかりではありますが、温かい目で応援をいただければ幸いです。


今後とも、当作品をよろしくお願い致します。


Twitter:@tematema_way

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