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第十三話:試練の間③

「イズちゃん。私があいつの注意を引きつけるから、後方から支援をお願い」


「わかりました!」



 短杖を握りしめながら元気のいい声で返事をする少女を横目に、私は風魔術を発動させてアリーナへとおりる。


 そしてこちらへ迫ってくる巨人に向かい、水魔術を発動させていく。



「<霧雨(ドリズル)>」



 霧のように細かな雨が闘技場に降り注ぎ、巨人を濡らしていく。

 私はフローレンシアを右手で構え、そのまま周囲の温度を一気に下げていく。

 


「<水柱(アクアピラー)>」



 私の前に大きな水柱が立ち昇る。

 私は水柱にフローレンシアを刺し込んで一瞬で凍りつかせると、そのまま横に跳びのいて観客席にいるイズちゃんに声をかける。



「イズちゃん!」


「<爆発(ブラスト)>!」



 氷柱に激突する寸前だった巨人の足元が爆発し、奴の体勢が崩れる。


 巨人は霧雨で濡れた石床を滑り、そのまま倒れ込むように転倒すると、奴の胸部に設置していた氷柱が貫いていく。



「グゥゥゥゥゥアアァァァァァ!!!」



 私は苦痛の呻き声をあげる巨人の足元へと近づき、霧雨で濡れた足をフローレンシアで凍らせていく。



「足元は注意しないと危ないわよ」



 そう呟きながら、私は氷柱に刺さって動けなくなっている巨人の足を素早い動きで斬り刻み、次々に凍らせていく。


 そして三本目の足を完全に凍らせたあたりで、巨人が立ち上がろうと腕に力を込め出す。



「グゥゥゥゥゥゥゥ」


「<爆発(ブラスト)>!」



 すかさずイズちゃんが爆発魔術で巨人の腕を攻撃し、奴が再び体勢を崩して倒れ込む。


 私は好機だと言わんばかりに四本目の足へと移り、最後の足をフローレンシアで凍らせていく。



「動きを止めたわ! 私の後に続いて詠唱して、魔力を貸して!」


「はっ、はい!」



 私は観客席の方へと飛び上がり、イズちゃんの手を掴んで隣に立つと、詠唱を始める。



「────其は天燐。銀の(そら)より君臨せし塵界の覇者」


「────っ、其は天燐。銀の(そら)より君臨せし、塵界の覇者」



 イズちゃんが目を瞑りながら、魔力を練り上げていくのを感じる。

 その小さな身から溢れ出る膨大な魔力を受け取りながら、私は詠唱を続ける。



「────起源は青。原初の海。枯れた死海に揺蕩う泡沫の夢」



 私が詠唱すると、周囲を青暗い光が覆う。

 黒い泡がブクブクと弾け、闘技場全体が深海のように暗くなっていく。


 

「────いと昏き深淵を泳ぐ終焉よ。その渇きを満たせ! 忌まわしき秩序を、今こそ滅ぼせ!」



 黒き濁流が巨人を襲い、蛇のように渦巻いていく。

 やがて巨人が見えなくなるほどの濁流が、巨大な竜巻のように高速で回転しながら全身を覆っていく。



「「────<黒渦(メイルシュトローム)>!!」」



 アリーナ全体を覆うほどの黒き濁流が巨人を襲い、渦の中へと呑み込んでいく。

 

 大規模魔術、<黒渦(メイルシュトローム)>。


 触れるだけで生命力を奪っていく、黒き濁流の渦を呼び出す魔術だ。

 

 大規模魔術は魔力消費が大きいが、その分圧倒的な破壊力を誇る。

 魔術師でも最高位の存在しか使えない切り札だ。


 魔力消費が私のキャパシティを超えているため実戦で使ったことは今までなかったのだが、イズちゃんから魔力を受け取っている今だからこそ使える大技だ。


 個人で使えるのはそれこそ、白金級(プラチナ)以上の英雄と呼ばれる存在だけだろう。



「グガァァァァァァァァァァ!!!」



 巨人が呻き声をあげながら立ち上がり、濁流の中で暴れ始める。

 しかし、高速で流れる濁流に触れるたびに巨人の身体に傷がつき、その生命力を失っていく。



「フゥゥ……グゥゥゥゥゥ……!!!」



 胸に氷柱が刺さり、足が凍てついた巨人が、やがて疲労した様子で地に手をつける。


 生命力をかなり奪っている証拠だ。


 巨人は跪くように頭を垂れながら私達の方を向き、その盲目の瞳で睨みつけてくる。


 そして腕を大きく振りかぶり、凍りついた足元へとその拳を振るおうとする────



「させないわ」



 私が言うと同時に巨人の動きがピタリと止まり、足を砕こうとした腕が寸前で硬直する。

 

 足元から、そして体内から侵食した氷が巨人の両腕までを蝕み、その動きを止める。



「あなたの再生力任せの自傷は一度見たわ。同じ手が通用するほど、私は優しくない」



 私の言葉を受け巨人が必死に暴れようと抵抗するが、その凍りついた身体は言うことを聞かない。



「私のフローレンシアはね、魔力と水を媒介にして凍らせるの。……あなたほどの大きさのものを凍らせたことはなかったから、どのくらいの魔力を注げばいいかわからなかったけど────」



 私はフローレンシアを構え、動けなくなった巨人へと歩いていく。



「黒霧、霧雨……黒渦。この闘技場は既に、私の魔力で満たされている。その氷が溶けることはない。あと、私の水もたくさん飲んでくれてたわね」



 首から下まで凍って動けなくなった巨人がこちらを睨み、苦しそうに呻き声をあげる。


 私はそんな巨人を見上げながら、片手でフローレンシアを持ち上げる。



「体内から、空間ごとその全てを凍らせてあげる」

 


 銀色に輝く美しい直剣から冷気が溢れ、そのまま巨人へと吸い寄せられていく。






「異能解放────【凍土の侵食(エンクローチ・フローレンシア)】」



 私がそう呟くと、目の前に巨大な氷の彫像が完成した。






お読みいただきありがとうございます。


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