ノルディン帝国王子の困惑
「はいお疲れ様です」
ノルディン帝国からの留学生ボリスはパーティでは踊らずに席について食事を食べていた。
そこへ魔導電話の非常呼び出しがかかってくる。とりあえず色気より食い気を優先している15歳。ボリスはノルディン帝国の第14王子だった。
アレクとは異母弟だ。もっとも母親は平民出だったが。
「緊急事態って僕今パーティの最中ですよ」
係官からの電話にウィルは少し反発する。
「俺だ」
そこにアレクが割り込んできた。
「皇太子殿下」
慌ててボリスは直立不動になる。
異母弟とはいえ赤い死神に逆らうとどうなるか判らない。
「そちらにドラフォードの皇太子がいるな」
「いますけど暗殺なんてできないですよ。」
「馬鹿もの。そんなところで大きな声を出すな。」
「申し訳ありません。」
直立不動で謝る
「暗殺なんてしなくていい。クリスティーナ嬢との接触を何としても止めろ。」
「えっ。そんなの無理ですよ」
「無理だと。お前は北極送りになりたいのか」
アレクはいきり立つ。
「えっそれだけは許してください。」
ボリスは慌てた。アレクなら本気でやりかねない。
でも北極って基地もないはずだ…・
という事は北極海の氷の中にいきなり飛ばされかねない。
「でも、既に今二人で踊っていますよ。」
「えっ、エドワードは何をしているの」
横からジャンヌが顔を出す。
「えっこれはジャンヌ王女殿下。お初にお目にかかります」
「挨拶はどうでもいいわ。エドは何をしているの」
画面の中のアレクを押しのける。
「皇太子殿下ですか。ピンクの髪の女の子と二人で仲良くしていらっしゃいますが。」
「あのバカ。許さん」
王女はいきなり画面から消えた。
「おい待て、ジャンヌ・・・」
アレクは慌てた。
「いいな!ボリス。私もすぐに行く。
それまでに何としてでもクリス嬢にとりいれ、いや無理ならドラフォードのドラ息子を邪魔しろ。
ワインを服にかけるなり何しても構わん。絶対に二人に仲良くさせるな。
失敗したら北極送りだと思え。」
画面がブチ切れた。
「えええ。そんなアレク兄さま、無茶言いすぎ。」
とりあえずボリスは赤ワインのグラスを持って立ち上がった。
「でもこんなのぶっかけたら下手したら国際問題なんですけど…・」