ジャルカは王立学園理事長から就任をお願いされました
クリスは電話を終えると図書館に戻ってオーウェンを探すが、もうどこにもいなかった。ドラフォードの王宮でわかれて以来、オーウェンとまともに話せたことがない。
きちんと話さないと。
ハンカチさりげなく貸してくれたし、そのお礼も言わないと。
明日はオーウェンから話しかけてくれたら、必ず話そうとクリスは思った。
新学期1日目なので暗くなるとその日の調べ物はやめて寮に帰った。
少し時間があったので、お菓子を作る。
そうだ、明日、オーウェンにお礼がてらお菓子と洗濯したハンカチを持って行こうとクリスは決心した。
一方のオーウェンは寮の食堂でぽうーっと食事をしていた。
今日こそはちゃんと話そうとしたのに、周りに邪魔されてほとんど話せなかった。
訓練場から早めに帰って来てクリスを見れたのは幸いだった。
実際に目にするのは2回目だがクリスが男の子と話しているところなんて本当に絵になった。
涙流していたが、そのクリスを思いっきり抱きしめたかった。
そんなことしたら今度こそ殺されるかもしれないと危惧したからハンカチをサラッと渡しただけにしたが。
「はーーー」
オーウェンは大きなため息をついた。
「何その元気の無さは」
帰ってきたアレクが聞く。
「はん。せっかく留学伸ばして学園に帰ってきて、クリスと話そうとしたのにお前らに邪魔されて最悪だよ」
「俺は今回は邪魔していないぞ。」
アレクが言う。
「貴様の妹が付きまとってくるんだけど、どのみちお前の差し金だろ」
疑い深そうにオーウェンが言う。
「何言っている。妹が俺のいう事を聞くわけないだろ」
アレクが両手でお手上げのサインをする。
「そもそも、あれ以降はお前の邪魔はしようとはしていないぞ。
邪魔したいけどな。
皇帝は何考えているか判らんけどな。
今回も俺に無断でマーマレードに侵攻しようとしやがったし。
あの二人で組んでお前を落とそうとしているんじゃないか」
アレクは言う。
確かに妹に頑張れとは言ったが、積極的に賛成はしていない。
あのシャラザールを怒らせると何が起こるか判らないからだ。
アレクとしてはオーウェンにちょっかいを出してシャラザールの怒りを買い消滅させられても知らないぞとしか言えない。
こちらに責任転嫁されて自分まで消されるのは許してほしいとは思っていた。
「それとボフミエの王子はクリス嬢狙いだぞ。
クリス嬢を見る目が異常だった。
十分に注意しろよ」
アレクはオーウェンの為に注意する。
(俺らしくもない事してるよな)
と心の片隅では思っていた。
「ジャルカ様。何卒、お願いいたします」
その頃、ジャルカは理事長から電話で泣きつかれていた。
「しかし、理事長。私ももう年ですぞ」
ジャルカは反論する。
「しかし、異常事態なのです。
新学期が始まってたった2時間で、既に2人の教授から辞表が出てきたのですぞ。
辞表率100%なんです。
他の教授も戦々恐々としております。
ここは王女殿下とノルディン皇太子殿下ともお親しいジャルカ殿に御引き受けいただくしかもう道は無いのです」
必死に頼み込む。
「そもそも、ボフミエのボケなすは力も無いのに、クリス様に触れるというとんでも無い事をしたから当然の報いを受けただけですぞ。クリス様に魔術を実践で使用させるなど、間違うと王都が消滅しますぞ。
極秘事項だが、理事長にはお話ししましたじゃろ。
クリス様が一瞬でシャラザール山を消滅させられたと」
「私も注意したのですが、まさか、それに違反するとは!
ボフミエもおつきも入れると10人以上の人をこの学園に送り込んでおります。
目的はクリス嬢と言う噂もありますし、ここは是非ともジャルカ様のお力が必要なのです。
何とかお願いいたします」
ブラウンは泣き落としに入る。
「うーん、しかし、物理は私も得意ではないのですが」
「何をおっしゃいます。物理の基礎など賢臣と世界から慕われるジャルカ様にとってはお茶の子さいさいでしょう」
「しかし、学園で教えるとなるといろいろクレームが」
「クレームは全て私が引き受けます。
私で納得いただけないのならば、次は国王陛下から連絡してもらいますが」
ブラウンは今度は脅し出した。
「少しだけ考えさせてもらえますかのう」
ジャルカは更に抵抗するが、
「ありがとうございます。明日お返事がいただけない場合は国王陛下よりお電話していただきます」
嬉々として理事長は電話を切った。
「さて面倒なことになったの。
まあ女子高生にキャピキャピ囲まるのも良いかもしれんが。
そうかと言ってブラウンの餓鬼のいう事をそのまま聞いてやるのも面白くはない。
1週間くらい条件闘争でもしてみるかの…」
嫌らしい笑みを浮かべるジャルカだった。








