クリスの一閃2 山が消し飛びました。
次の瞬間にクリスの手が光る
強烈な光が皆の目を襲い何も見えなくなった。
そして数秒後にすさまじい破壊音と爆風が襲って兵士たちは地に伏していた。
シャーロットが再度覆った防御壁でクリス達だけは大丈夫だったが。
噴煙が消えた後には何もなかった。
クリスから山に向かって木々が倒され、そして、山があったところには・・・
何もなかった。
皆唖然とした。
「クリス、あなたこんなに魔力強かったの?」
呆れてシャーロットが言った。
「ごめんなさい。だからジャルカ様が使うなって」
クリスは必死に言い訳する。
「うそ、姉様こんなにすごかったんだ」
ウィルは呆然としていた。
魔術一閃で山が一個消えるなんて聞いた事も無い。
これってひょっとして姉様は、マーマレード、いや、世界最強じゃないかと…
「クリス様。このアルバート改めてあなた様のお力に感服いたしました。」
アルバートがクリスの前に跪いた。
それを見ていた兵士たちは剣や弓を放り出してクリスに対して拝跪していた。
「申し訳ありません。クリス様」
「お許しください」
「命だけはどうかお許しを」
ライオネルは腰を抜かして呆然としている中、残りの兵士たちは全員降伏した。
兵士たちに聞いたところによると王宮は既に制圧されたらしい。
実行部隊はこの中央師団と近衛師団の一部と魔導第一師団第二中隊、第二中隊がジャンヌを襲う計画になっていたそうだが、ウィル曰く。
「姫様は全然問題ないと」
全く心配せずにウィルは言い切った。
第二中隊ごとき暴風王女には一瞬で殲滅させられるだろう。
アルバートは国王が敵に捕らえられた今は、王位継承最上位の王女の事をもう少し心配した方が良いのではと思ったが、クリスも含めてみんな全く心配していない。
まあ、クリスが心配しないなら問題ないのだろう。
何しろ暴風王女だし。
「それよりもこの兵士たちをどうするの?
反逆罪は死刑だけど」
戸惑ってウィルが言う。
その言葉に兵士たちが不安そうにする。
「ウィル、何言っているの。彼らには家族がいるのよ」
クリスがきっとして言う。
-そう、姉様は殺されそうになった自分よりも兵士たちの事を考えるんだよな・・・
とウィルは思った。
「このまま王都へ向かいます。」
少し考えてクリスは言った。
「その途中にある王弟の領地の城ホーエンガウを攻略してその功で皆さんの命をあがなってもらいます。
それで良いですね!」
クリスは中隊長を集めて言った。
「まあ、結果はどうなるか判りませんが、私が命にかけてあなた方の命は守ります」
クリスは言い切った。
「そんなクリス様、そこまでしなくても」
アルバートが口を出す。
「アルバート、彼らもマーマレードの大切な国民なのです」
クリスが言う。
「あっでも、もう私は皇太子妃では無くなったから、こんなこと言ってはいけないのでしょうか?」
慌ててクリスが聞く。
「いえ、そのような事は。お許しください。クリス様の聖女のようなお心、傷つけてしまいました」
アルバートは頭を下げる。
「アルバート、私におべっかは必要ないわ」
少し笑ってクリスが言う。
「おべっかなどと。本心です。私は口が悪いので本心で思ってもいないことは申せません」
あくまでもまじめにアルバートは言う。
「まあいいわ。」
クリスは首を振って周りの中隊長たちを見る。
「ヨーク、良かったわね。グリットの元にちゃんと帰れるわよ」
クリスはその中の一人の中隊長に話しかけた。
その一人が目を見開いた。
「クリス様、なんで私の名前を知っていらっしゃるんですか。
それも子供の名前まで」
驚いて呼ばれた中隊長が聞いた。
「一般の兵士までは覚えていないけど、小隊長の方までは名前は知っているわよ」
さも当然のようにクリスは言う。
「コールナ―も、お母さんの元に胸を張って帰れるわよ」
別の中隊長にも声をかける。
「申し訳ありません。クリス様のような方に剣を向けてしまって」
「本当に申し訳ありません。このような貴族の方がいらっしゃったなんて
このコールナー思いも致しませんでした。」
隊長たちはクリスに拝跪した。
「えっ?皆さん?やめて」
クリスは慌てふためいた。
何だろう。このギャップは…
姫のように毅然とするところもあればこんなに慌てるなんて。
ウィルは呆れてクリスを見ていた。
「クリス様。そろそろ」
アルバートが声をかける。
クリスはその声を聴いてこれからやらなければいけないことに気づいた。
「さあ、皆さん、頭を下げるよりも帰りましょう。
皆さんの家族のところに」
隊長たちを見回して言う。
「はい!」
隊長たちは顔をあげて返事した。
クリスはシャラザールにならなくても世界最強でした…
今日もう一度更新します








