魔神が復活して暴れ出したその時、待ちに待った戦神が来臨しました
魔神ゼウスは怒り狂ったクリスの圧倒的な光魔術の攻撃で消滅した。
その頃には多くの魔人や敵兵もジャンヌらの活躍で倒れていた。
残っている者もわずかだ。
後は他のものに任せても大丈夫だろう。
オーウェンは大丈夫だろうか?
その時になって置いてきたオーウェンのことが心配になってクリスは慌ててオーウェンに駆け寄った。
そして頭を抱える。
オーウェンは気絶していた。
息はあることを知ってクリスはほっとした。
すぐに癒やし魔術師に見せないと。
オーウェンの顔を愛おしそうに撫でて転移しようとした時だ。
空が翳った。
いきなり辺りが真っ暗になったのだ。
「えっ?」
クリスは驚いて周りを見渡した。
今までどんよりとした雲が出ていたのがいきなり黒い雲になったのだ。
雲はおどろおどろしい暗黒雲が渦巻き、所々不気味に黄みがかっていた。
昼間にもかかわらず、真っ暗になりほとんど視界が聞かなくなった。
そして、暗黒の平原には生暖かい風が吹いてきたのだ。
遠くで遠雷の音がして雨が降って来た。
ピカピカ、ドカーン!
雷が落ちてきた。
雨が大粒の雨になりそれがあっという間に大雨になった。
駄目だ。オウが濡れる。
クリスがそう思った時だ。
クリスの背筋に悪寒が走った。
ズドーーーーーン
凄まじい稲妻が近くに落ちたのだ。
何かと一緒に。
ドカーン
爆発音が起こり爆風がクリスらを襲っていた。
吹き飛ばされそうになる。
慌ててオーウェンを体で爆風から庇う。
それはその地に巨大なクレーターを作っていた。
そこには何か良くないものがいるのは判った。
それも凄まじい魔力の塊だ。
今までの魔神ゼウス以上の何かがそこにいたのだ。
クリスの首筋の辺りがピクピクした。頭の中に警報が鳴り響き、体が逃げた方が良いと叫んでいた。
「わっはっはっはっは」
大きな笑い声が辺り一面に響いた。
「小娘よ。それが貴様の精一杯か?」
「えっ!」
その声にクリスは戦慄が走った。
そのクレーターの底がもぞもぞ動き、何かが立ち上がったのだ。
そう、それは消滅させたと思った魔神ゼウスだった。
凄まじい威圧感にクリスは驚き固まった。
何故消滅させたゼウスがここにいるのよ!
クリスは心の中で悲鳴を上げた。
「はっはっはっは。小娘。儂はこんな攻撃ではびくともせんのだ。
それよりも礼を言うぞ。よくも儂を倒してくれた。それによって魔神ゼウス様は更に進化したのだ。
闇の全能神ゼウスとしてな」
そう叫ぶとゼウスは高らかに笑ったのだ。
クリスはとんでもないことをしたと青くなった。
魔神ゼウスを倒したら更にパワーアップするなんて聞いていない。
というか、倒したら更にパワーアップするって何なの……絶対に倒したら駄目な奴?
クリスは混乱した。
「小娘よ。儂の力の一端を見せてやろう」
ゼウスはそう叫ぶと手を振りかざしたのだ。
思わずクリスはオーウェンを抱きかかえて地に伏した。
ゼウスの手から真っ黒な奔流が飛び出したのだ。
それは一瞬でトリポリの街の城壁に達していた。
ズカーーーーン
大爆発が起こった。
衝撃波がクリスらにも跳ね返ってきた。
オーウェンが飛ばされそうになるのを必死に防ぐ。
その衝撃が収まった時だ。
黒煙が消え去るとそこにある者がきれいさっぱりなくなっていたのだ。
何重にも障壁で強化したトリポリの城壁が消えていた。
「はっはっはっは。
貴様らの力で作った障壁など何の防御力にもなりえんわ。
儂の新たな力の前には貴様の力など抵抗も出来ん。
素直に降伏せよ」
魔神ゼウスは言い放った。
そのゼウスの顔の前に転移してジャンヌが攻撃するのが見えた。
思いっきり顔を蹴り上げようとして手ではたかれていた。
「ギャッ」
ドシーーーーン
悲鳴を上げたジャンヌが平原に叩きつけられていた。
「愚か者め。儂にそのような小細工通用すると思ったのか?」
ゼウスが馬鹿にしたように言った。
「ふんっ、例え何と言われようと、俺達は抵抗するのを止めん」
アレクが遠距離で爆裂魔術を仕掛けた。
ゼウスが手で軽く弾いた。
「ふんっ、このような手が通用すると思っているのか?」
馬鹿にしたようにゼウスが鼻で笑った。
「なんと言われようとシャラザール様が来るまでは貴様を好きにさせる訳にはいかんのだ」
アレクは背筋に寒い物を感じながら言い放った。このゼウスも怖いが、シャラザールはもっと怖いのだ。ここは時間を稼ぐしかない。アレクは精一杯意気がった。こんなところでもし背を向けでもしたら後で何をされるか判ったものではなかった。
「ふんっ、愚かな」
ゼウスが闇の一撃を無詠唱で放った。
アレクは飛び退って逃れようとした。
「ギャッ」
ドシーーーーン
しかし、黒い奔流の衝撃に巻き込まれてそのまま地面に叩きつけられていた。
「愚かな奴じゃ。シャラザールとはいえ、もう闇の全能神ゼウス様の前には赤子同然、敵ではないわ」
そう言うと
「わっはっはっはっは」
と両手を腰に当てて高笑いしたのだ。
ゼウスは圧倒的でクリスも絶対にこのままでは勝てないと悟った時だ。
ズカーーーーン
高笑いしていたゼウスの顔に天から何かが落ちてきてぶつかったのだ。
「ギャーーーーーーーーー」
ぶつかった物が大きな悲鳴を上げて弾き飛ばされていた。
「何じゃ?」
ゼウスが天を見上げたその顔にシャラザールの蹴りがまともに決まっていた。
ドカーーーーン
大音響を立ててゼウスは地面に叩きつけられていたのだ。
「わっはっはっはっは。待たせたな!」
そこには両手を腰に当てて高笑いする戦神シャラザールの雄姿があった。
ついに真打ちの登場です。
暴れたくて仕方のなかったシャラザール対新生自称闇の全能神ゼウスの戦いです。
果たしてシャラザールは新生ゼウスに勝てるのか?
続きは今夜です。








