筆頭魔導師の怒りの一撃の前に魔神ゼウスは消滅しました
反射魔術のミラーを魔剣で展開したオーウェンが魔神ゼウスの攻撃で黒焦げにされてボロ雑巾のように弾き飛ばされるのをクリスは見て目の前が真っ暗になった。
元々ゼウスが目の前に現れた時、その魔力の強大さにクリスは思わず身震いしたのだ。自分の心臓が凄まじい早さで脈打つのを感じた。その周りを威圧するオーラを前にして思わず逃げ出したくなったほどだった。
しかし、自分はボフミエ魔導国の筆頭魔導師としてここにいるのだ。皆の前で逃げることも出来ない。それに自分のま後ろにはオウがいてくれた。オウが後ろにいてくれることで安心感があった。
クリスは勇気を振り絞って前に踏み出したのだ。
もっとも考える間もなく、ゼウスが攻撃してきたので、それを防御せざるを得なかったのだが……
自分に向けて発するゼウスの威圧を前にしてにして、クリスは思わず体が固まってしまいそうになるのを必死に耐えて前に出た。
しかし、何度か攻撃したが、自分の力及ばず、魔神ゼウスに弾き飛ばされてしまったのだ。
もう終わりかもしれない。クリスは諦めの心境だった。
そんな時にオーウェンがクリスに駆け寄ってくれたのだ。
「オウ、逃げて!」
クリスは思わず悲鳴を上げた。オーウェンでは絶対にゼウスには敵わない。
でも、オーウェンは
「愛するクリスを見捨てられる訳なかろう」
そう叫んでゼウスからクリスを守ってくれようとした。
それを心の片隅では嬉しいと思う反面、悲しいことに絶対にオーウェンよりはゼウスの方が力は上だとクリスはやる前に判ってしまったのだ。
オーウェンは魔剣でミラーを展開したのにはクリスも驚いたが、案の定オーウェンでは防げなかった。
ゼウスの闇の一撃はオーウェンに殺到した。
次の瞬間、オーウェンは黒焦げになって吹き飛んでいたのだった。
オーウェンが黒焦げになって吹き飛ばされるのが、クリスにはスローモーションのように見えていた。
そして、クリスの脳裏にオーウェンとの楽しい思い出の数々が走馬灯のように思い浮かんだ。
学園のサマーパーティーで初めて踊ったとのこと、エドに婚約破棄された時に庇ってくれたこと、ドラフォードの王宮のパーティーで一緒に踊ったことは楽しい思い出だった。オーウェンにはいつも助けられていた。戦いの時も何回か庇ってもらえた。怪我した時は看病もしてくれた。
そのオーウェンが目の前でボロ雑巾のように吹っ飛ばされていたのだ。
クリスは自分が如何にオーウェンに頼っていたのか気付いた。そして、オーウェンが好きだということも。
「オウ!」
クリスは飛ばされたオーウェンに歩み寄った。
「クリス、ごめん」
オウは奇跡的にまだ生きていた。
そして、声を振り絞って謝ってきた。
クリスは首を振ったのだ。
「逃げろ!」
オーウェンは最後の力を振り絞って声を上げた。
それに対してクリスは首を振ったのだ。クリスは気付いたのだ。今まではオーウェンに頼ってばかりだった事を。そして、ゼウスを恐れるあまり力の全てを出していなかったことに。
「小娘よ。なんじゃ貴様はその男が好きなのか。ならば貴様の目の前でその男を引き裂いてやるわ」
後ろから面白がってゼウスが手を伸ばそうとした。
ピキッ
そのゼウスの言葉にクリスの頭で何かが壊れる音がした。
その瞬間だ。世界の時が止まった。
クリスの周りの空間があまりの力に少し歪んだ。
クリスは完全にぷっつん切れていた。真の力が覚醒したのだ。
パシーン
クリスが伸ばしてきたゼウスの手を振り払ったのだ。
しかし、それはゼウスの手だけでなく、突風となって巨大な魔神ゼウス吹き飛ばしたのだ。
ドシーーーーン
大音響を立ててゼウスが地面に叩きつけられた。
一瞬ゼウスは何が起こったか理解できていなかった。
既にクリスの小娘は死にかけで力もほとんど残っていなかったはずだ。
その目の前で小娘の男をなぶり殺しにして小娘をいたぶってやろうとしたのだ。
その手が小娘に弾かれた。魔神ゼウス様の手が。人間風情に弾かれるものではなかった。更には弾かれただけでなく、襲ってきた突風で地面に叩きつけられる事など普通は考えられなかった。
ゼウスは首を振って立上がった。
「ふんっ。小娘め。少し油断したわ」
ゼウスはまだ余裕だった。
「だがこれまでだ。超スーパー超闇の一撃!」
ゼウスは叫んでオーウェンに浴びせた闇の一撃をクリスに放ったのだ。
誰をも弾き飛ばす一撃だった。今までは。
クリスは何もせずにそれを受けたように見えた。
ゼウスにはクリスが防御する力も残っていないように見えた。
しかし、クリスに襲いかかろうとした闇の一撃はクリスの直前でいきなり止まった。
えっ!
ゼウスは信じられないようなものを見せつけられた。
そして、それは反射して、ゼウスに襲いかかったのだ。
ゼウスは必死に障壁を張るが、
パリンッ
障壁が割れて闇の一撃がゼウスを直撃していた。
「ギャーーーー」
ゼウスは悲鳴を上げて吹っ飛ばされていたのだ。
地面を転がる。
激痛がゼウスを襲い、元々真っ黒だった体が更に黒く焦げていた。
「おのれ、小娘、良くもやってくれたな」
ゼウスは怒り狂って立ち上った。
「もう許さん。スーパー超スーパー超闇の一撃」
魔王と同じで文字が増えれば強くなると思っているのか同じ文字を重ねたゼウスの最終必殺技が炸裂した。
ゼウスの周りに巨大な暗黒の塊が現れてゼウスに吸い込まれていく。
そして、ゼウスの周りから黒雲のモヤモヤが無くなった時だ。
凄まじい闇の黒い奔流がクリスに襲いかかったのだ。
先程クリスに向けたものの数倍は強力な闇の魔術がクリスに殺到した。
しかし、先程と全く同じだった。
その闇の魔術はクリスの前で瞬間止まるとゼウスに逆襲したのだ。
今度はゼウスは障壁を張る間もなく、自らの闇魔術に攻撃されたのだ。
「ギャーーーーーー」
ゼウスは悲鳴を上げて吹き飛ばされていたのだ。
何度も地面に叩きつけられて転がされる。
魔神ゼウスはもうボロボロだった。
ゼウスははじめ恐怖を感じた。
なんとか起き上がった時だ。
クリスがこちらに向けて手を上げるのをみた。
やばい!
ゼウスは逃げようとした。
しかし、次の瞬間だ。
「死ね!」
クリスが手を振り下ろしたのだ。
そのクリスの手の先から今までの何倍もの巨大な光の奔流がゼウスに襲いかかったのだ。
「ギャーーーーーー」
ゼウスは悲鳴を上げた。
凄まじい熱の中でゼウスは強大な光の渦に巻き込まれて消滅したのだった。
ぷっつん切れたクリスの前に魔神ゼウスは消滅しました。
恐るべしクリス。
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次は戦うことを期待しているシャラザールです。
お楽しみに








