大国王太子は筆頭魔導師について戦場に出ることにしました
「はい? メイ、今なんて言ったの?」
翌日、目を覚ましたクリスは起しに来たメイの言葉が理解できなかった。
「いえ、だから、戦神シャラザール様がクリス様から分離されました」
「あのう、シャラザール様って、初代シャラザール帝国の皇帝陛下よね。遙か昔にいらっしゃった?」
「はい。魔王退治の功で天界に神に召され戦神になられたシャラザール様です」
クリスの問いにメイが頷いた。
「その伝説の方と私とどう関係するの?」
クリスは戦神が憑依していた事実を全く知らなかったのだ。
それからメイが今までの経緯をかいつまんで説明してくれた。
「ええええ! と言うことはノルディン帝国との戦いの時からシャラザール様は私に憑依していらっしゃったの?」
クリスは驚いていた。
「はい。だから、アレク様はクリス様を恐れていらっしゃったのです」
「そうなのね。それで納得いったわ。傍若無人で有名なアレク様が何故私なんか小娘に敬語で話されるのか理解できなかったのよ」
クリスは納得した顔で頷いた。
「まあ、クリス様は世界最強魔術師でいらっしゃいますからアレク様でもぞんざいな態度は出来ないと思いますが」
そう二人で話しながら食堂に入った時だ。
食堂で顔に紅葉マークをつけているアレクがいた。
「まあ、アレク様。そのお顔はどうされたのですか?」
クリスが聞くとアレクはぎょっとした顔をした。
「いや、ちょっと」
アレクは視線を外す
「戦神に引っ叩かれたんだよ」
横からジャンヌが教えてくれた。
「えっ、シャラザール様にですか?」
「クリス様は聞かれたんですね。シャラザール様のことを」
アレクはほっとして口に出していた。
「はい。今までいろいろご迷惑をおかけしました」
「いや、別にクリス様にやられたわけではありませんし」
「そうそう、クリスが気にすることはないよ。戦神の前で余計な事を口走ったアレクが悪いんだから」
クリスを見て嬉しそうにやってきたオーウェンが横から口を出してきた。
「そんなことよりオーウェン、解放計画は出来たのかよ」
都合の悪くなったアレクが話題を変えた。
「オーウェン様、解放計画とは、ノルディン帝国に対して攻勢をかけるのですか?」
「ゼウスが魔神になったんだ。戦神が帰ってくるまでそのゼウスをなんとか抑えていろというのが戦神の意向だからな」
「どのような計画なのですか?」
オーウェンの立てた計画はノルディン帝国の三方から各国の解放軍をノルディン帝国に差し向けるというもので、マーマレード方面からアレクとジャンヌが中心にマーマレード軍を北上させる。中央はジャスティンの部隊を中心にトリポリから北上。陳王国の軍も北上させるとあった。
「ドラフォード軍はどうするんだ?」
「マエッセン方面から北上させる予定だが、まだ、詰めているところだ。総勢20万くらいにはなるな」
アレクの問いにオーウェンが答えた。
「私はどこにつけば良いのですか?」
「クリスとジャルカは中央軍のジャスティンと一緒に北上してもらう」
ジャンヌが言ってくれた。
「姫様も人使いが荒いですな」
「何を言っている。元々案を立てたのは戦神シャラザールだろう。文句はシャラザールに言ってくれ」
ジャンヌがジャルカに言い返していた。
「まあ、これだけの軍勢だ。オーウェン、ここから調整を頼むぞ」
ジャンヌは当然のように言ったのだが、
「今回は俺もクリスと一緒に北上する」
「「「えっ」」」
皆驚いた顔でオーウェンを見た。
いつもは軍の調整や補給等を全てここにいながらオーウェンが指図していたのだ。
「いや、お前がここにいないとまずいだろう。誰がここの面倒を見るんだよ」
「アメリアがいるだろう。アメリアも未来のテレーゼ女王だ。ヘルマンとシュテファン、スティーブを付けるから問題はない」
オーウェンは言い切った。
「大丈夫なのか? アメリア」
「まあ、オーウェンに比べたら私も不安だけれど、オーウェンが絶対にクリスの傍にいたいって言うから仕方が無いじゃない」
アメリアは少し不満そうに言った。
「えっ、そうなんですか?」
その言葉に少しクリスが赤くなった。
「オーウェン! 戦いに私情は厳禁だぞ」
ジャンヌがジャンヌらしからぬ正論を吐いた。
「はああああ! クリスが倒れたら今回の作戦は失敗するからな。ジャンヌもアレクもいないんだから俺がクリスは守る」
「はああああ! 何を言っている。護衛は俺達がいる。オーウェンは足手まといじゃないか」
「そうだ。クリス様は俺達が守る」
クリスの弟のウィルとアルバートが白い目でオーウェンを見た。
「ふんっ、いつもやられている貴様らが何を言う」
「何言っているんだよ。俺達は最弱のビアンカでさえ貴様よりも強いぞ」
ウィルが馬鹿にしたように言った。
「うーん、オーウェンは事務処理能力はピカイチだからここにいるのが良いと思うが」
ジャンヌが言う。
「いや、今回は総力戦だ。魔神になったゼウスは更に強力なはずだ。俺も多少は戦力になる。絶対にクリスは俺が守る」
「逆に足手まといになると思うが」
「そうだ。お前はここにいた方が、戦力になるぞ」
「俺は先進に約束したんだ。どんなことがあってもクリスを守ると」
オーウェンはクリスを熱い視線で見ながら言い切ったのだ。.
もうクリスは真っ赤になっていた。
「絶対に足手まといになると思うが」
「まあ、弾よけくらいにはなるのではないか」
ジャンヌとアレクが呆れてみていたが、オーウェンは主張を止めなかった。
「クリス、軍の補給から雑務は全て引き受けるから頼むから連れて行ってくれ」
最後はクリスに頼み込んで
「そこまでおっしゃるのでしたら」
クリスは最後はオーウェンの熱意に負けて認めたのだった。
『婚約破棄されたので下剋上することにしました』https://ncode.syosetu.com/n0747ju/
完結しました
こちらも面白いので是非とも読んで頂けたら嬉しいです








