【つぎラノノミネート記念】紅葉した銀杏並木を大国王子は筆頭魔導士と二人で歩こうとしましたが、戦神との大宴会になってしまいました
なんとなんと、私の処女作『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』がつぎラノ大賞2023 https://tsugirano.jp/にノミネートされたのでその記念話作りました。上から五番目です。投票してもらえたら嬉しいです!
オーウェンは東洋のジパングでは紅葉狩りなるものがカップルに流行っていると聞いて、ボフミエでも出来るようにしようと考えたのだ。
でも、楓や紅葉を育てるのに10年くらいかかると聞いて、諦めたのだが、
「それなら、イチョウはいかがですか。紅葉にはなりませんが、黄色くなますし、確か王都の側でもたくさん生えているところはあったかと」
コレキヨが教えてくれたのだ。
調べてみると王都から馬車で1時間の少し標高の高くなった所に街道沿いに100メートルくらい続いているところがあった。
聞く所によるとその実は銀杏と言って食べられるのだとか。これは食糧不足の時の食料にもなると聞いて農務省の依然からも少し予算を分捕っていずれは1キロ位のイチョウ並木を作ろうと計画していた。
そして、少し涼しくなってきた今イチョウが見頃だと情報を得たのだ。
アレクとジャンヌはマーマレードに外遊していないし、ヘルマンとアメリアはテレーゼ訪問中だ。ジャスティンやウィルやアルバート達は軍事演習中でこれで邪魔する奴らはいないとオーウェンはふんでいたのだが。
午前中でその日一日分の執務を驚異的なスピードで終わらせて、オーウェンはクリスを迎えに行ったのだ。
クリスは青いワンピースと軽装で外歩きできる格好をして待っていてくれた。
護衛はいなくて良いと言ったのに、現在ボフミエ駐在中のミューラー、ドラフォード東方第一師団長が一個騎兵中隊を率いてくれると言ってきた。コイツラは演習中ではないのかとオーウェンが聞くと、一個中隊くらい抜けても問題ないとのことだった。
まあ、アルバートらでなければ問題ないかとオーウェンは許した。
出来たら侍女らも要らないとしたのに、ミアとアデリナがついてくることになって、それは強引に馬車をもう一台付けたのだ。
別に1時間の道中護衛なしでも問題はないのに……
侍女は邪魔だし……
まあ、仕方がない。
オーウェンはクリスとの馬車デートを楽しもうとしたのだ。
でも、何かクリスは目がㇳロンとしている。
「どうしたんだ。クリス。眠そうだけど」
「ごめんなさい。オウ、昨日ちょっと夜更かししてしまって」
聞く所によるとイザベラの貸してくれた恋愛小説を夜遅くまで読んでいて、あまり寝ていないらしい。
「じゃあ、寝ててもいいよ」
オーウェンはそういうとクリスに肩を寄せさせたのだ。
「でも、せっかくオウとお出かけするのに」
「良いから。1時間位ですぐに付くし」
クリスにオーウェンが笑顔で言った。
コクリコクリ船を漕ぎ出すクリスの頭を自分の肩に付ける。
自分の肩に頭を付けて居眠りするクリスはとても可愛かった。思わずキスしてしまいそうになってそれは必死に自制心を出して止める。
クリスの寝顔を見ながら、いつしかオーウェンも眠りについたのだった。
オーウェンはなんか外が煩いと思った時にガタンと大きく揺れて馬車が止まった。
「着いたか」
隣のクリスがすっかり寝ているのを見てホッとすると外を見てオーウェンは固まってしまった。
外には金色に輝くきれいなイチョウ並木が見えたのだ。
想定通りにきれいだった。それは良い。
その足元だ。
あたり一面に敷物が敷かれて、その上で大勢のものが騒いでいるのだ。
それも、どうやら、騎士たちのようで……
「あれ、オウ、着いたの?」
「いや、クリス、これはなんか間違ったような」
なんか赤い髪とブロンドの髪がはねているような気がしたのは気のせいか?
オーウェンはそのまま馬車を返したくなった。
「えっ」
クリスが驚くと同時に馬車の扉が開いた。
「クリス、遅いぞ」
そこにはジャンヌとアレクが他の面々と立っていたのだ。
やむを得ず二人は降りた。
もう皆酒を飲んで出来上がっているみたいだった。
というか、紅葉見物がなんで花見の宴会になっているんだ!
オーウェンには良く判らなかった。
「というか、なんでお前らがいるんだ。お前らはマーマレードにいるはずではないのか」
オーウェンはジャンヌとアレクに言った。
「ふん、私達をのけものにして楽しいことを企画したと聞いたから1日早く帰ってきたのだ」
「ジャスティン、お前は北方で訓練は」
「クリス様がいらっしゃると聞いて急遽演習をこちらに変更したまでです」
ジャスティンは平然と言ってくれたんだけど。
「姉様。なにオーウェンとくっついているんだよ」
そこに酒に酔ったウィルが来て、クリスを引っ張ってオーウェンと離した。
「ちょっとウィル、あなたまだ未成年じゃない。なに酒を飲んでいるのよ」
「良いじゃないか。姉様。俺も飲まないとやってられないことがあるんだよ、ゲップ」
そこで盛大にウィルはゲップしたのだ。
その酒臭い息がクリスにかかったのだ。
「えっ」
「ヤバい」
オーウェンとアレクが叫んで、アレクは逃げようとしたが、その暇もなかった。
ダンッ
という大きな音と共に、そこにはいつもの戦神が来臨していたのだ。
「良い心がけじゃの。紅葉狩りの酒宴に余を招くとは」
珍しくシャラザールはご機嫌だった。
「アレク!」
「はいっ」
逃げようとしたアレクは慌てて戻ってきた。
「余に大盃を持て」
「はっ」
慌ててアレクは巨大な盃を取りに戻る。
「何じゃ、オーウェン、その泣きそうな顔は」
「いえ、なんでもありません」
ムッとしてオーウェンが言った。
「その様な湿気た面をしているとクリスに振られるぞ」
「だ、誰のせいでこんな顔をしていると思っているんですか」
そのままオーウェンはシャラザールに文句を言っていた。せっかくクリスと二人きりで過ごせると思っていたのに……。まあ、アレクやジャンヌがいる段階でそれは無くなったが。
「何か……」
「まあまあ、シャラザール様。ここは一献」
怒り出しそうなシャラザールの前に慌ててアレクが大盃を差し出した。
「ん、そうか」
それを受け取ったシャラザールの前に酒をなみなみと注ぐ。
それをシャラザールはごくごくと飲んだ。
一気に。
この大盃はシャラザール用に作られた特注なのだ。下手したら一升は入る大盃だ。それを一気飲みしたのだから皆が呆れるのも当然だった。
「では、アレク、返杯じゃ」
「えっ、私ですか?」
「当たり前じゃ」
盃を受け取った。アレクになみなみと酒をシャラザールが注いでくれた。
「さっ、一気に飲むのじゃ」
「判りました」
アレクはシャラザール用に特注した巨大な盃でゆっくりと飲み干した。
「おお、やるではないか」
「さっ、シャラザール様ももう一杯」
シャラザールを酔い潰させようとアレクはしたのだが、シャラザールはウワバミだった。
流石のアレクも2杯でダウン。次のジャンヌも2杯で、ジャスティンとオーウェンは1杯でダウンして……
珍しく戦闘訓練にはならなかったが、翌日皆が二日酔いでダウンしていたのは言うまでもなかった。
「ごめんなさい。オウ。昨日は寝てしまって」
翌朝、オウを見てクリスはすまなさそうに言った。
「オウをはじめ皆様疲れた顔をしていらっしゃいますが、どうかされましたか?」
頭を抑える皆を心配そうにクリスは見た。
「いや、何でも無いよ」
オーウェンは軽く頭を振った。
そう、全ての元凶はクリスに憑依しているシャラザールのせいだったが、それを言うわけにもいかなかった。
そして、クリスだけは全く元気だったのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
この話の続きはまた書く予定です。
もう少しお待ちください。








