暴風王女は赤い死神に慣れぬ看病をして大変でした。
ジャンヌはアレクに付き添ってそのまま、直ちにトリポリの野戦病院に入った。そして、ボフミエから連れてきた医師にアレクを診せる。
「どうだ、大丈夫か?」
「腕はおれているのか?」
「火傷の具合は?」
「この亀裂は何だ?」
矢継ぎ早に医師に次々に質問していく。医師は閉口した。
診た医師は、アレクの症状を見ることよりもジャンヌの対応をするほうが大変だった。
あまりにもうるさいので、
「殿下、チャンと見ますから少し黙っていてい下さい」
そう言うと、さすがのジャンヌも黙ったのだが、今度はじいーーーーっと医師の手元を見てくるのだ。
それも剣を片手に・・・・。医師はおちおちとゆっくり診察も出来なかった。
なんとか医師が診察を終えて、部屋を出た時はへたり込みそうになっていた。
一方のジャンヌは自分がまさか看病する側に回るとは思ってもいなかった。
いつもはだいたい自分も怪我をしており、じっくりと誰かを看病するということがなかったのだ。
今回はアレクが怪我をしており、自分は殆ど損傷をおっていなかった。
そして、看病をすることになったのだが慣れていないジャンヌは、手ぬぐいを絞らずにアレクの頭においてアレクをずぶ濡れにしたり、包帯を変えようとして、失敗したり、散々だった。
そして、今回の戦いでは部下達もほとんど傷ついていなかったのだが、その部下達が邪魔だった。
「姫様、そんな事も出来ないのですか」
「姫様に看病ほど向いていない仕事はありませんね」
と言われる始末だ。
あまりにうるさいので部屋から放り出したのだが、アイツラは絶対にどこかで見ているのだ。本当に鬱陶しい。
座る位置も最初はすぐ傍に座っていたのだが、
「さすが姫様。愛する方の直ぐ側で看病していらっしゃるんですな」
ザンに誂われて、慌てて部屋の隅に椅子を持っていった経緯がある。
ザンはその後ライラに怒られていたが・・・・。
そして、今はアレクが高熱にうなされていた。
やむを得ず、椅子を傍におっかなびっくりで持っていく。
「ううううう」
アレクが首を振ってうなされている。
手を差し出して来たので慌ててその手を握ってやった。
「イネッサ」
アレクの言葉にジャンヌはショックを受けていた。
イネッサとは誰なのだ?
そういえば昔、自殺した彼女がいるとかいう話だったからそいつか。と思い付きはしたが、いい気はしなかった。
手を離そうとしたが、アレクの力は強い。
「良かった」
ブツブツ言うとアレクは眠りについたみたいだ。そのまま手を離せないままジャンヌもいつの間にか寝てしまった。
翌朝、アレクは目を覚ました。
そして、ブラウンの髪が目についた。
そのジャンヌが手を握っていてくれたことも。
「ジャンヌ」
ゆっくりとつぶやくと
「うっ、アレク」
ジャンヌはゆっくりと目を覚ました。
「体は大丈夫か?」
「ああ、なんとかな。結構化け物にやられたが」
ジャンヌの問にアレクは苦笑いをした。
「他の奴らは」
「問題ないみたいだ。化け物は地獄に送り返したぞ」
「すまん。今回は足手まといだったな」
「まあ、そう言う時もあるさ」
「ずっと看病してくれていたのか」
「やむを得まい。これは貸しだからな」
ブスッとしてジャンヌが言う。
「ああ、借りておくよ。お前がやられたときはチャンと返すさ」
「ああその時は頼む。最もそんなドジはしないが」
二人は見つめ合った。
「あああ、お二人共アツアツですね」
そこへ入ってきたクリスの侍女のアデリナが、両手胸の前で握りしめて言った。
「えっ」
「いや、単に戦友を看病していただけで」
「だって、お二人手を取り合っていらっしゃるじゃないですか」
アデリナに指摘されてジャンヌは手を握ったままだったことに気づいた。
「いや、これは違うぞ」
ジャンヌは慌てて手を離して否定する。
「あああ、アデリナちゃんも静かにしていたら良かったのに」
後ろからライラらが残念そうに顔を出す。
「お前らな」
ジャンヌが怒って言うが、顔は真っ赤だ。
「姫様が照れている」
「初めてみた」
「殿下、凄いです」
「ええい、うるさい。関係ない奴らは出て行け」
「えっ、そんな」
文句を言う部下達を強引に外に追い出してジャンヌはゼイゼイ言っていた。
「殿下。これおかゆです。腕はまだ使えないですよね。ジャンヌ様に食べさせてもらって下さい」
「えっ、何で私が」
「だって、アレク様は手が使えませんから。じゃあ私、次に行くので」
慌てるジャンヌに粥の容器を渡すとアデリナはさっさと出ていった。
後には固まったジャンヌが残った。それを面白そうにアレクが見ている。
「別に無理しなくていいぞ」
「何言っている。一応私も女だ。お前に食べさせることくらい出来る」
そう言うとジャンヌはアレクの前に座って、粥をスプーンに救うとアレクの前に強引にもっていった。
アレクが口を開けると中に入れるが
「アチッ」
アレクが叫ぶ。
「えっ、すまん、熱かったか」
慌てた拍子に粥をひっくり返しそうになり、それを受け止めようとして盛大に転けてしまった。
粥はなんとか無事だったのだが・・・・
結局ふうふう冷ましたりして食べさせるのに30分以上かかってしまった。
それを腹を抱えて部下達に見られていたのをジャンヌは知らなかった・・・・
すいません。おそらく、ゼウスの逆襲第一部は取り敢えずまもなく完結です。
3日以内に終わります。
今回ほとんど戦闘シーンで甘い場面無かったので、後2話甘い話してそのあと最終話みたいな感じです。
一応予告しておきます。
また、新作考案中です。次回は恋愛物、おそらくそうなるはずです。悪役令嬢物、で私自身初めての異世界転生物になる予定です。








